中国語能力の先にあるもの
--2009年・春--
私が杭州で働いていた時のある出来事。
提携先企業に常駐するようになって間もなくは、久々の中国滞在と緊張もあいまって、中国語がなかなか出てこず会議の度に冷や汗をかいていた。
一応、上海留学の経験はあったので、ギリギリの聞き取りと、読み書きやチャット、ジェスチャーを駆使してコミュニケーションを取る。
わからなくても引き下がったらダメ。
前向きに、良い関係を築きたいと全身で伝えないといけない。
相手も辛抱強くやり取りしてくれたが、それでも上手く行かない場面は多々あった。
困ったなぁ…‥。
でも周りは中国人社員ばかり。
そんなことで悩むのも束の間、数日後、通訳係として日本語の流暢な社員がプロジェクトに加わったのだ。
他部署からか、新たに雇用したのかはわからない。
ただ、足りない所に人員を配置するスピードが、ものすごく早かったのが印象的だった。
なんせ、この通訳の件以外にも、何度か同じことが起こったのだ。新しいことを始めます、速攻で人員補充。空いた穴をどうする、適材配置。
早い早い、とにかく早い。
彼らが見ているのは私の中国語能力ではなく、「どれだけの熱量で、スピードで、ビジネスを創り上げていく力があるのか」。
ただそれだけだった。
上記を満たすのがまず第1で、その上で足りない部分は補完する。
中国語ができるに越したことはない。
自分の言葉で全力でやりあえたら最高だ。
しかしながら、そこはゴールではないこと。
語学力に多少難ありでも、重視されている点をしっかり抑えて、自分に求められていることを認識する。
そうすると、足りない部分は意外と何とかなるかもしれない。
ちなみにその後私も、通訳できる仲間を見つけてチームに引っ張り入れたのだけど、その話はまた別の時に。
語学力の先にあるものは何だろう?
今も、中国語のテキストを開きながら、そんなことをふと考える。
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