「助ける人」と「助けが必要な人」は時に入れ替わる。デジタル技術が相互の助け合いを促進する基盤となる
経済思想を専門とされる大阪大学の堂目卓生教授は、不安定感が増す現代において、自由意思に基づいた相互の助け合いが重要になっていることを説かれています。
長引くコロナ禍や、ロシアのウクライナ侵攻の受難を、日々、目にしていると、明日困窮するのは自分かもしれないと不安を感じてしまいます。さらに、日本の人口動態や財政状況を考慮すると、これからの未来、国が全員を守ってくれるという安心感も薄れてしまっています。
公助、自助だけではどうしても不安になる現在、共助の仕組みを社会に織り込み、複層的に支えあえるようにしていくべきということでしょう。
そして、記事の指摘にある通り、共助には共感が欠かせません。この共感に関して、世界は強い逆風を受けています。
弱まる共感の基盤
世界全体の都市化のメガトレンドは、いまも抗えない動きとして加速しています。
世界人口に占める都市人口の割合は、1950年代では30%を切っていたのが、現在は50%に上昇しています。国連経済社会局人口部は、2050年までにおよそ72%にまで増加すると予想しています。
都市化の進展によって、助け合いの根幹となる地域に根差したコミュニティは徐々に失われています。
ウクライナ戦争にみる助け合いの起動
そんな中でも、ツイッターやフェイスブックを見ていると、日本でもロシアのウクライナ侵攻で苦しむ方々を少しでも支援をしたいと考えて、実際に行動に移している人が沢山いることがわかります。
他者の苦難や悲しみを、自分のことのように捉えることができれば、我々は誰かのために動き出せます。こういった共感の研究は、まだまだ歴史が浅く、発動の原理も明確には解き明かされていません。それでも、物語が重要な鍵を握っていることがわかってきています。
「爆撃によって100人が亡くなった。そこに子どもが10人含まれていた」という情報は、客観的な悲惨さを伝達します。しかし、これらの数値的な情報から犠牲者の感情を読み取ることができないため、そこに共感は生まれません。数値に対して、感情を持つことは難しいのです。
爆撃に怯えている人が、どういう生活をしていて、誰を大切にしているのか。そこで何が起き、どう感じているのか。例えば、そういったことがインタビュー映像からひしひしと伝わってくると、我々は相手の物語を読み取り、共感が呼び起こされます。
デジタル技術が共感力を強化する
その距離がたとえ1万キロ離れていても、スマートフォンを通じて、毎日のように悲惨な状況を伝える物語が我々のもとに届いています。
そして、助けを必要とする人を助けたいと切実に思い、実際に助けることができるようになりました。
私自身も先日、1日単位で空いている部屋を借りられるエアービーアンドビーで、ウクライナ首都のキーフにある部屋を寄付を意図して借りました。
家主の方とメッセージをやり取りして、「どんなに辛くても諦めずに頑張り続ける」という強い決意を伺いましたし、こちらからは「日本の多くの人がウクライナを応援し、平和になることを願っている」ことを伝えました。
これまでユニセフなどを通じて間接的にしか関われなかった支援の仕組みが、デジタルサービスを利用することで、自分自身がつながりを持てるようになり、より直接的で、もっと熱のこもった支援ができるようになっています。
世界中の誰とでも、簡単に物語を交換し、支えあるようにしてくれたデジタルネットワークは、自由意思に基づいた複層的な相互支援の仕組みになれるはずで、私はここに大きな可能性があると感じています。
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