#23 観察再開!デザイナー夫が美大の授業で決行する「バナナ作戦」🍌
観察日記#22で、NY美大の秋クラス・感動のフィナーレをレポートし、デザイナー夫の冬休みに合わせて観察日記も冬休みに入ったと思ったらもう3月!というのも、この数ヶ月【デザイナーの妻】は、家族の事情のため、日本に緊急帰国しなければならず、その間は観察日記を中断しておりました。またデザイナー夫を観察する日常に戻りましたので、新たな気持ちで観察レポートを再開したいと思います。よろしくお願いいたします。
2021年1月に始まった春の新クラスも、もうすでに"Mid-term grading"[中間成績]の時期。(NY美大の"Mid-term grading"[中間成績]がどんな時期かについては、観察日記#14で説明しています。)本来、この「バナナ作戦」🍌については新クラス第1週にレポートしたいところ!なぜなら、デザイナー夫の「バナナ作戦」はクラス第1週から始まるから。しかし次のクラスまで待てない!本日、観察再開を機に書いてしまおう👀
「バナナ作戦」🍌とは
これは、学校の教室での対面授業をする際の作戦。つまり2020年3月に世の中の状況が一変し、授業がすべてオンライン形式になる前の話であり、この先また教室での授業が始まった際に再び決行される作戦。
それはシンプルに「朝9時から始まるクラスには、必ずバナナを12〜13本持っていくこと」である。デザイナー夫はこの数年、雨の日も風の日も、電車で通う日も車で行く日も、欠かさずに大量のバナナとスナックを持って朝のクラスに行っていた。なぜでしょう?👀✨
その目的はふたつ。ひとつ:4時間半の長丁場、学生の集中力アップのため。ふたつ:学生との心の距離を縮めるため。
①4時間半の長丁場、学生の集中力アップを図る🍌
朝9時に始まる授業に、朝食を食べてくる学生がどれほどいるだろう?デザイナー夫自身は完全夜型人間であり、朝9時の授業のために朝食をとって行くことはない。クラスの前日、教師が夜遅くまで授業の準備をしているように、学生たちもきっと遅くまで課題や制作活動をしているだろう。朝9時に、フラフラで教室に来る学生も多いと思われる。
その状態で4時間半のクラスを集中するのは、ほぼ無理でしょう。学生たちが互いのプレゼンから学び合うせっかくの機会を逃してしまってはもったいない!ならば、お腹が空いたらバナナを食べるのだ!ということで、教室にある、デザイナー夫のデスクにそっとバナナを置いておくそう。最初はバナナだけだったのが、ここ数年はちょっとしたスナックも置くようになった(クッキーか、チョコレートか、ビスコッティか、その時による)。
腹ペコで耐えているよりもバナナやクッキーを少しつまむ方が、もちろん集中力は上がる。ほぼ毎回、バナナは全部なくなる。スナックもほぼ完食されて帰ってくる。しかし、いきなり出会った教師から「Help Yourself!」(自由に食べてね!)と言われても、学生は手に取るんだろうか…?それが、この作戦のふたつめの意図でもある。
②学生との心の距離を縮めたい🍌
新しいクラスで出会う教師と学生との間にはもちろん緊張感があり、それが解けるには数週間かかる。そしてお互いに信頼関係を築くには、もちろん授業でデザインについて共に学び合い、制作に打ち込む学生を励まし、一緒にその成長を喜ぶ過程が必要。
でも「食」は人と人を繋げることも確か。たくさんの文化背景が入り混じっているニューヨークも、そうでない場所でも、様々な背景を持つ人たちが一緒に何かを食べることは、仲良くなるためにものすごい力になることがある。デザイナー夫は、どの文化でも馴染みのある食べ物・バナナ🍌を使って、その機会を図っているのだ。
第1週はバナナが残ることも多い。それも当然。でも毎週毎週必ずバナナを置き、時にはデザイナー夫もそれを食べたりしていると、だんだんバナナを手に取る学生が増えてくるという。(つまり餌付け?!)冗談のような、ちょっと大げさな表現のような?でもそれは学生との距離を図る上でとても大切なサイン。新しく出会った誰かに食べ物をもらってそれを食べるというのは、勇気が必要なことだから。
【デザイナーの妻】は、バナナとスナックの買い出し班として、授業の前日にいそいそと大量のバナナを仕入れに、Trader Joe's(トレーダー・ジョーズ)に繰り出す。学期によっては、デザイナー夫は週に2クラス(時には3クラス)担当することがあり、その場合【デザイナーの妻】は、スーパーのワゴンに30本ほどのバナナを積み込む。すれ違う他の客に二度見されているのは知っている。
そして授業が終わって帰宅するデザイナー夫のバッグを開け、バナナやスナックの残り具合をチェックするのが【デザイナーの妻】の楽しみでもある。学生受けの良いスナックとそうでなかったスナックを分析し、次なる作戦に生かす。だんだんクラスの温度が温まっていく過程を聞くのは毎回嬉しい。
学生から感謝の🍌バナナ返し🍌
デザイナー夫のバナナ作戦は、すでにもう何年にも及んでいるため、もしかしたら学生の間では「バナナの人」と呼ばれているかもしれない。そうだったらオモシロイな。嬉しいな。そう思ったきっかけがこれ。
2017年、デザイナー夫のクラスをとっていた学生の中に、学期末にサンキューカードと一緒にこんなプレゼントをしてくれた子がいた。
ウォッカのラベルを自分で作り直し、デザイナー夫の名前とバナナの絵を載せてくれている。(ボトルの裏側にはサンキューメッセージのラベル。さすが美大生!)デザイナー夫がバナナ作戦に込めた思いと愛情が届いたんだなと思い、4年経った2021年現在もデザイナー夫と【デザイナーの妻】の大切な宝物。
学校の教室での授業を再開した暁には、またバナナ作戦が始まるでしょう。その時をお楽しみに🍌
デザイナー観察日記#23読んでくださってありがとうございました。
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