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#22 山あり谷あり・NY美大の秋学期が終了。感動の最終クラスをレポート!

12月の第2週、アメリカのほとんどの大学は秋学期を終えました。デザイナー夫が担当する美大の3クラスも、オンライン授業特有のチャレンジを乗り越え、無事に最終日を迎えました。乗り越えたチャレンジが多かった分、感動の多かった最終週の様子をレポートします。

全員が直面した、オンライン授業特有のチャレンジ

デザイナー夫が講師を務めるNYの美大には、世界中から学生たちが集まっています。今年の3月に状況が一変した際、海外から来ていた学生たちの多くは自分の国に帰りました。当時は春学期の真っ最中でしたので、国をまたいだ移動とオンライン授業への切り替えはとても大変でした。

夏休みの間、大学側と講師たちは、オンライン授業の本格化に向けて新しく使うツールや時差対策について話し合いを重ねました。観察日記#7で書いたように、学生がそれぞれのタイムゾーンからオンライン授業に参加するための様々な工夫がなされ、試行錯誤続きの秋学期を迎えました。

時差対策の一例:アジアに住む学生など「NY時間では授業時間が真夜中になってしまう学生たち」のために、通常よりも数時間早めに授業を始めました。途中でNY時間の学生たちも加わり、全員に向けた授業をしました。全員で受ける授業を終えると、アジア圏の学生は退出し、NY時間の学生たちは残りの部分(アジア圏の学生が先に済ませた授業内容)をこなす、という日程です。

デザイナー夫の朝は6時に始まり、授業が終わる頃にはもうランチタイムなんてとっくに過ぎていて、ヘロヘロでした。学校で授業があった日のデザイナー夫の1日の実態は、詳細な時間の記録とともに観察日記#12でレポートしています。初めて試した密着レポートです、よかったらご覧下さい。

講師と学生の間で、初対面の緊張がなかなか溶けないというのも、オンライン授業特有のチャレンジだったと思います。本来ならば、毎週同じ曜日に顔を合わせ、授業でやり取りをしていくうちに縮まっていく距離感が、オンラインの小さな画面でしかやり取りできないことで、数週間たってもなかなか縮まらなかったかもしれません。限られた時間の中でお互いを知り合うのは簡単なことではありませんでした。

(ちなみに、普段デザイナー夫が実際に学校の校舎で授業を行なう時には、学生との距離感を縮めるため、ある工夫をしています。説明が長くなってしまうのでそれについてはまた別の観察日記でレポートしますが、ここではその工夫を「🍌バナナ作戦」と名付けておきましょう👀だいたい予想がつく作戦だと思いますが・・・後日改めて書き起こすことにします。)

加えて、機械の調子が悪かったりインターネットが不安定だったりして、フルに参加できない学生がいる日もありました。様々な事情で授業(全部もしくは一部)を逃した学生には録画したものを送っていましたが、全員が一緒に同じ温度で授業を作り上げるということが、オンライン環境では難しかったように見受けられました。

もう一つのチャレンジは、画面上でコミュニケーションをとるのが難しいということです。教室であれば、複数の学生と会話し、ディスカッションは盛り上がりますが、画面上で複数が円滑にディスカッションをするというのはとても難しいことです。デザ夫さん曰く「場を上手に回す方法」が必要です。そして、会話の雰囲気によって授業の流れを作っていける教室と違って、オンライン環境では事前にしっかりとプレゼンを用意して流れを決めておかないといけません。実際、授業の準備にかかる時間が増えたそうです。

オンライン授業だったから実現できた良いことは?

ネガティブなことばかりではありませんでした。良かった点については、デザ夫さんに直接聞いてみました。まず挙げられたのは、新しいツールを使えるようになったことです。zoomのブレイクアウトルーム機能をフル活用して、少人数でのディスカッションを見て回ることができましたし、「miro」というオンラインのホワイトボードツールを使って、学生たちが作品を制作する過程をリアルタイムで見ることができました。

「miro」は、他の学生が作業しているのを学生同士も見ることができ、チャット機能を使ってコミュニケーションを取ったりしてつながることができます。実際のホワイトボードにポストイットがどんどん貼られていくような光景は、ちょっとゲームの画面を見ているみたいでした。デザ夫さんは、学生たちが作業している様子を楽しそうに見守っていました。

今後ハイブリッド型の授業になっていく時に必要になるであろうツールを、今回から色々と試すことができ、使い方に精通することができました。

オンライン授業になって、通勤時間がなくなったことは大きなアドバンテージでした。渋滞のあるブルックリンへの往復は、3時間になることもあります。その時間を準備や睡眠に充てることができます。時差対策のため、授業に費やす時間そのものは長くなったので、通勤がなくなった分、時間を最大限に活用することができたと思います。

個人面談の時間をたっぷり取ることができたのも良かった点です。NYの朝6時や7時から始めて、ひとり30分ずつの個人面談×12〜15人という日程を何度こなしたことか!先に述べたように、初対面でコミュニケーションをとるのが難しく、かつパンデミックの状況で個々がストレスを抱えている中で、学生一人ひとりとの時間を定期的に設けることは、様々な事情を鑑みてクラスの良い雰囲気を作り上げていくためにとても役立ったと思います。

そして、学校で教えること以外にも、デザ夫さんはフリーランスでデザインの仕事をしていますので、これまで「学校の日は学校だけ」というスケジュールだったのが、「自宅でオンライン授業」のスタイルだと、半日で授業を終えた日などは午後から個人の仕事に時間を充てられるようになりました。これもポジティブな変化の一つでした。

最終週のプレゼンは盛り上がった

各クラスとも、最後の週は「パネリスト」と呼ばれるゲストを2〜4人迎えて、学生たちがプレゼンをしました。今回のパネリストは、同じ大学の違うクラスの先生や、デザ夫さんと一緒にフリーランスで仕事をしてきた長年のデザイナー仲間たちでした。

パネリストたちも、学生一人ひとりのプレゼンを楽しんで聞いていたように思います。それぞれのプレゼンの後に各パネリストから学生へフィードバックを伝え、時間が許せばディスカッションをします。全員がプレゼンできるように予定時間を事前に決め、デザ夫さんはタイムキーパーとして進行役もしていました。

どの学生とのディスカッションも盛り上がっていて、途中で制限時間が来てしまい、次の学生のプレゼンに移らなければいけない・・・ということが多かったようです。「もっとディスカッションをしていたい!」という学生たちの思いが伝わってくるようでした。

様々なチャレンジを乗り越え、先生と学生も打ち解けて、zoomでの授業やプレゼンにも慣れた15週目、学生たちがとても生き生きとしていたのが音声を通して伝わってきました。【デザイナーの妻】は別室で仕事をしていましたが、ちょっとその「盛り上がる感じ」が聞こえると、何度も覗きに行ってしまいました。

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あるクラスでは、最後に学生さんたちが各々の画面で一斉に「THANK YOU」と書いた紙を出してサプライズしてくれました!その時のスクリーンショットを、授業の後にデザ夫さんが見せてくれましたが、私【デザイナーの妻】はそれを見て泣きそうになりました。

数あるメッセージの中でも一番感動したのは、「Thank you for being an educator」というメッセージでした。その学生にとってデザ夫さんは「真の教育者」になれたことを実感でき、嬉しかったからです。

学生さんたちは、この特殊な状況の中で本当によく頑張ったと思います。教師にとっても学生にとっても、様々なチャレンジがあった学期でしたが、少しずつ少しずつクラスの温度が上がり、士気が高まっていくのを、影ながら観察できて良かったです。学生たちを絶対に見限らない、デザ夫さんの「教師」としての辛抱強い面を再確認することができましたし、学生さんたちのがんばっている姿に励まされて力をもらいました💪


ということで、デザ夫さんも冬休みに入ったわけですが、新学期は来年1月の後半に始まりますので、ぼーっとしてもいられません。12月第3週に成績をつけ終わってホッとひと段落したと思ったら、もう来学期の従業の準備を始めるとのこと!新しく担当するクラスがあるということで、またデザ夫さんの勉強勉強の日々が始まります。(また本が増える予感〜👀)

冬休み中は勉強と準備に加えて、大学の授業時間がない分、オンラインで行う日本のストアカ「デザイン出前教室」も少し増やして頑張るというデザ夫さんを絶賛、応援中です。

デザイナー観察日記#22読んでくださってありがとうございました。




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