ホテル療養2日目:1/13

前日の夜に部屋の暖房を消さずに寝てしまった。起きたら上半身が汗ばんでいた。もう少し冷え込むと思っていたのだがそうでもなかった。

ホテルでの生活は宿泊客として行くのとだいぶ違っている。部屋に清掃は入らない。各種アメニティが必要な場合は、食事時間のロビーに行くタイミングで新しいものを弁当と一緒に持って戻る必要がある。汚れたタオルやシーツもロビーの指定した場所に片付けることになっている。タオルやバスマット、部屋で履くスリッパも自分で取り替える。ベッドのカバーやシーツ類は交換ができない。我々は宿泊客ではないので仕方がないが、こういうところを気にしてしまって、気分が落ち込む人もいるのだろう。

体温とSpO2を測定し、システム「LAVITA」に入力する。朝食の時間まで間が空いたので二度寝をした。時間になり、朝食を取りにロビーに降りる。人は多いが皆無言である。朝食を温め、必要なアメニティをもらう。薄暗いロビーにはペッパーの甲高い声が響く。「しっかりご飯を食べて栄養をつけてくださいね!」などと喋っている。この能天気さが癪に障るが、彼とて入所者を励ますと言う自分の仕事をこなしているだけなのだ。そう思えば少し優しい気持ちになった。私はペッパーと目を合わせ、軽く会釈までしてエレベーターに乗った。

この日は先日とは別のエレベーターに乗った。こちらのエレベーターの壁にも付箋とメモ用紙が貼り付けられていた。スタッフへの感謝の気持ちが書かれているもの、ホテル生活での不満が綴られているものもある。「本当に収容所って感じでした」「ホコリまみれの部屋で食べるお弁当」と言ったようなことが書かれている。他には「あなたはひとりじゃない!」と言うものと、先に出所した人がホテルに残っている人に向けたメッセージだった。先日乗ったエレベーターに貼られていた付箋もここで療養していた(あるいはしている)人によるものなのだろう。こういう特殊な状況下では会話をせずとも妙な連帯感が生まれるものなのだ。とはいえ少々怖いところに来てしまったのかなと言うのが私の正直な気持ちでもあった。

朝食はビジネスホテルで出てきそうなメニューだった。私の好きなベーコンが入っていて嬉しかった。相変わらず味はわからないが、たぶん私の好きな味だ。そう思いながら食べた。朝食を済ませると頭がボンヤリしてきた。部屋が少々暑いように思える。ベッドで横になるとそのまま寝てしまった。

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健康確認の電話で目を覚ました。SpO2の値が低いが呼吸は苦しくないかということを聞かれた。別に苦しくはないことを伝えるともう一度測定してほしいと言われ、私はぼやけた頭のまま測定をした。表示された値を伝えると看護師はホッとしたようだった。電話を置いてもう一度眠り始めた。しばらくするとホテルの電話とは違った着信音が鳴り続けた。寝ぼけた頭ではその音がどこから鳴っているのか判断するのに時間がかかった。それは私の携帯電話だった。電話は看護師からだった。部屋の受話器が外れているので携帯電話の方に連絡をした、今後受話器が外れているようなことがあればこのように携帯電話の方に確認させていただくということだった。確かに部屋の電話は受話器の座りが悪く、簡単に外れてしまう。気持ちよく寝ているところを起こされたようで私は少々ムッとしていた(ごめんなさい)。受話器を置き直し、昼食まで眠っていた。

昼食を取ってロビーから部屋に戻ると明らかに空気が良くないように思えた。窓も開かず入り口も締め切っている。換気扇は風呂場だけだ。空気が良いわけがない。少ししてまずは部屋の暖房をオフにすることを思いついた。なぜ今までそんなことを思いつかなかったのか。風呂場のドアを開け、少しでも換気ができるようにした。入り口もドアアームを使って入り口を少し開けた状態にした。すると少しだけ空気の流れが出来上がり、気分が良くなってきた。昼食は「チャーシュー弁当」とでも言うべきものだった。そろそろ果物や生野菜が欲しくなってくる。

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何らかの運動を食後にしたほうが良いように思えた。食べ過ぎだとは思わないが、全く身体を動かさないのも問題があるだろう。とは言えこの狭い部屋で無理なくできることはなんだろう?部屋を見渡し、少し考えた末に食後に以下をやってみることにした。一日3セット行うことになる。

まずは血栓予防のためのウォーキングをすることにした。部屋の端から端までを往復する。これを毎食後に20往復。一往復でだいたい14歩から15歩となるので、およそ300歩となる。次に腕立て伏せ、と言うか壁たて伏せ。これを10回。次にスクワット。これを10回。最後はロープランク、これを20秒くらい。日頃まったく運動をしていないから、この程度でないと怪我をしてしまいそうだ。やってみると、なかなかいいんじゃないかと思えた。何がいいのか。気分がいい。身体を少し動かすだけでスッキリする。こういうことは三日坊主となってしまうことが多いが、せめてホテルを出るときまでは続けたいものだ。

夕食の時間の前に鹿児島県の加計呂麻島で暮らす三谷晶子さんからオンラインでのおしゃべりの申し出があった。夕食後にしましょうと言うことになり、そこに同じく加計呂麻島でカフェ店長をされている長紘子さんを交えてこちらの状況などのお話をさせてもらった。この三名は数ヶ月前にリアリティーショー「バチェロレッテ・ジャパン」についてオンラインでお話をしたこともある。

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こういう状況なので話し相手がいてくれるのは嬉しかった。自分でもずいぶんと喋ったと思う。話し相手がいないと自分の内面に向き合う時間が増えることは確かだ。しかしそれだけでは気が付かない自分も確実にある。話し相手を欲していたとは自分であまり感じていなかったけれども、こうしてみるとやはり溜め込んでいたいものがあったのだなと思う。話をすると不安や不満が落ち着く。自分の置かれた状況を言葉にすると、自分自身の状況を距離を取って見ることができることも気持ちが落ち着く理由だろう。

そういう話をしていたら三谷さんから「マッチングアプリで同じホテルにいる人と話ができるようになるのでは」と提案をいただいた。確かにそれは面白そうだ。私がそうであるように、話し相手を欲しがっている人もいるはずなのだ。早速Tinderを使うことにした。結果は後日にお知らせする予定です。

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