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眠る前に読む小話

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眠る前に読む一言小話です 読者になっていただけるととてもうれしいです。
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2016年12月の記事一覧

お酒の失敗談を話すバー

「このバーでは、自分のお酒の失敗談を話さないといけないんだ」

- へー。なにそれ、面白いね。

「まぁ、このバーが、というわけではないけどね。僕がこの店に行くと隣になった人によく聞くネタなの」

都心から少し外れた各駅停車が止まる駅。その商店街にある暗いバーに男女が入る。女は男の腕に腕を絡ませながら入る。

「どもー」

男は店員に挨拶をする。進められるままにカウンターに座る2人。カウンターには

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ドンペンさん

友達は私の彼のことを、ドンペンさん、と呼んだ。

由来は、彼の婚活サイトの写真は、ドンキホーテのペンギンが映っているものだったからだ。ビニルの安い青いペンギンを右手に持って、彼は、白いワイシャツの上でてれ笑いのような笑顔をしていた。髪型は少しもじゃっとしていた。

私がその人と「やりとりをしてみよう」と思ったのは、ペンギンに興味を惹かれたことが大きい。

彼はなぜ、このような大切な写真にドンキホー

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象のはな子の死去が意味するもの

今年5月に他界した象「はな子」のお別れ会が行われた。

それまで、私は「はな子」を「長寿の象」としか認識していなかったのだが、思ったよりも、この「はな子」は、多くのものを提供し続けてくれていた象だと理解した。今日は、その話を少しさせて頂きたい。

はな子が、日本にきたのは1949年。タイの実業家が戦後の日本を勇気づけるために私財を投げ打って連れてきてくれた。11日間の船の長旅を経て神戸港についた。

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たまに同じ日が繰り返される国

その国では、たまに同じ日が繰り返される。たとえば、8月31日が終わり翌日が9月の1日だと思ったら、もう一度、8月31日から始まる。

1年に1度くらい起こるので、みなは「ああ、また繰り返しか」と思い、同じ日々をうんざりしながら過ごす。なぜこういうことが起こるのかわからないが、一説によると「世界にもたまにはバグくらい出るのだろう」と言われており、みなはそれに納得している。世界に設計ミスがない方がおか

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コーヒー好きな男

コーヒーが大好きな男がいた。いつもコーヒーを飲んでいた。

朝、出社する時にコンビニのコーヒーを買う。昼ご飯の時は帰り道に缶コーヒー。休憩時間にはスターバックス。夜は、自分でドリップしたコーヒー。

人生でもっとも悲しいことが、コーヒーガムがなくなったことだそうで、イギーならば共感してくれるだろう。

コーヒーであればなんでも良いらしく、たまにコーヒー豆をかじりながら仕事をしている。コーヒーがうま

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