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眠る前に読む小話

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眠る前に読む一言小話です 読者になっていただけるととてもうれしいです。
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2016年11月の記事一覧

台風の恋

台風がなぜ日本を襲うのだろう、と考えていたのだが、もしかすると、台風は恋をしていて、恋人を探しているのではないか。山崎まさよしの如く「こんな場所にいるはずもないのに」とつぶやきながら、日本列島を縦断しているのではないか。

あるいは、恋人候補を探しているのかもしれない。なのに、台風が近づくと人は家にこもる。せっかく台風が恋人を探しているのに、恋人候補たちは家に閉じこもる。台風は「いい人いないー?」

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あかんとこ

- ミヤモト、お前は仕事ようやってくれてるけど、1つアカンとこがある。どこかわかるか?

- アカンとこありますか。わかりません。声が小さいところですか。

- 声小さいのはアカンとこやな。そやけど、もっとアカンところがある。そのアカンところ直したら声もでるようになるわ

- なんでしょうか。気合が足りてないんでしょうか。

- 気合足りてへんのか。それはアカンな。それも違うわ。

- すい

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パンツ時計

2017年の春、画期的な商品が発売され、日本中の話題となった。ポケモンGOを超えるほどの反響であった。

その商品は「パンツ時計」という。時計にパンツがついているという商品だ。

これは、「時間を調べるのは携帯で」という人が増え、時計が売れなくなったことを憂いだ時計メーカーの苦肉の策がこれだった。

時計の裏のカバーを空けるとトランクスが出てくる。バージョン違いとしてはブリーフもある。発明者は、昔

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太陽としての女性

女の友人と食事をしていたんだよ。友人といってもここ数年の仲でそこまで濃い関係じゃない。身体の関係はない。ただ、お互いボディタッチがあるくらいの親密さはある。数ヶ月に1回は二人で食事を食べるような仲。僕に恋人がいなければ、どうかなっていたかもしれないけれど、今のところは何も起きていない。

今回は彼女が昇進したということでお祝いの食事だった。最近、仕事関係で教えてもらった西麻布のビストロでのお祝い。

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ガーリックバターの魔力

ガーリックバターのことを知らない人は、人生を損しているといってもいいだろう。こんなにも芳香ながら素材を活かすソースを私は他に知らない。

にんにくをみじん切りにする。すりおろしてもいいがみじん切りくらいの無骨感が好ましい。バターの量にもよるが、遠慮せずたっぷり入れよう。半分くらい使っちゃって良い。そして、バターをたっぷりミルクパンにかける。200グラムくらい使ったっていい。ことことと弱火で煮る。そ

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独り

雑踏の中を歩いていると、家族連れや学生たちが目に入る。あるいは、居酒屋のメニューを見る会社帰りの男たち、どこを目指すのかわからないけど小走りでかけていく少年たち、夜がきただけでも笑える青春真っ只中の女子高生たち。

そんな中でひとりで歩いていると、孤独が増幅される。「孤独は人の中にいる時こそ強く感じられる」というのは本当だ。独りでいる時の孤独なんて可愛いものだ。忙しくしていたらどこかにいく。

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しなくちゃいけないこと

三軒茶屋の三角地帯では平日というのに、多くのサラリーマンたちが酒を飲んでいる。

ある焼き鳥屋のテーブルでは、3人が赤ら顔で楽しそうに話をする。20代の女性が1人。30代の男性が2人。テーブルの上にはつくねとキャベツ。

会話は仕事の話から恋愛の話、そして、最近、熱中していることに話が続く。

「最近、筋トレ始めたんですよ。そしてビジネス書を毎日読むようにしたんですよ。するとそれだけで毎日2時間く

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価値観があう彼

初めて人と付き合ったのは大学生の頃だ。どこにでもあるような話で、相手は大学の同級生。最初はどうも思わなかった人だった。けれど、会う回数が重なるうちにお互い惹かれ合う、というような。

彼とは多くの価値観があった。一緒にフジロックが行くほどロックが好きだったし、食べ物も2人でラーメン屋を開拓した。好きなものを最初に食べるという性格さえも一緒だった。休みの日には、ボルダリングにも一緒にいった。

3年

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