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眠る前に読む小話

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眠る前に読む一言小話です 読者になっていただけるととてもうれしいです。
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2016年7月の記事一覧

100年後の町

肩が凝って、久しぶりにマッサージに行った。1時間のコースだったのだが、始まってすぐに寝てしまった。起きると、「ここはどこだ!」と思いながら、「ああ、マッサージだ」と思い返す。ただ、脳はついてこず、ふらふらしたまま。そして、着替えて夜の町に出た。

寝ぼけた頭で見る町は、なんだか不思議だった。異国情緒さえあった。「僕は日本人じゃなかったけれど、起きたら日本だった人」にしよう、と思い、その目線で町を眺

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高速道路の雨

高速道路を運転していると、急な雨となった。スコールのような通り雨のような激しい雨だった。

夜だったので、視界も悪い。それが雨でさらに悪くなった。

頼りになるのは、前の車のテールランプだった。前の車の灯りを頼りに道を走る。

その時に、いまそこで高速を走っている車たちが一体になったように感じた。僕の車のテールランプが後ろの車を先導し、僕は前の車に先導されている。

ほとんどの車が60キロほどにス

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首都高

レインボーブリッジを過ぎてしばらく走ると東京タワーが見えてきた。ピンク色の東京タワーが光る。

「ね、どこに行くの?」

女が聞く。男は何も言わずに、一ノ橋ジャンクションでカーブを曲がる。スピードは落ちない。80キロを保ったまま。

ナビは、池尻で降りるように指し示すが、さきほどから距離は減ったり増えたりしている。

「首都高といってもいろんな降りるところがあるのね」

女は、窓の外を見る。そして

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夏の音

夏から生まれてきたのではないか、というほど夏が好きで。どれくらい好きかというと、夏になると「ああ、夏が終わると秋がきてしまう」というほど、夏が好きだ。

夏を形容する表現を見ると、無意識にアドレナリンが分泌される。

たとえば、湘南の江ノ電の写真や氷がグラスの中で溶ける音。あるいは、小学校の夏休みのひまわりへの水やりやスイカの匂い。どれも、体の中に眠る夏の遺伝子を刺激する。

そんな私が

小学生

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冬の海

鎌倉の七里ヶ浜にパシフィックドライブインというカフェがある。

名前の通り、テイクアウトがメインのお店で、車の人たちがふらっと立ち寄り食事を買って車に戻る。カリフォルニアのロードサイドにあるバーガー屋のような風体だ。

そこで働いている人たちは海の匂いがする。真っ黒に焼けて、髪も金髪で、ビーチボーイズ、ビーチガールズだ。店にあって、とても良い。

「でも、彼らって、夏はいいけど、冬はどうしてるんだ

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いろんなお仕事

大変な仕事かと思われていますけれど、そんなに大変じゃないですよ。もちろん、下心のあるお客さんもいますけど、たいていは、普通の方です。年齢層では30代以上が多いですね。若い人はもう少し直接的な快楽を求めるのかもしれません。耳かきを求めるお客さんは、快楽よりもやすらぎを求めているのかもしれませんね。実際、耳かきの気持ちよさを求める方もいますが、それよりも、「膝枕をされる」ということに安心を覚えてくださ

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舞台があるレストラン

白金台のプラチナ通りにあるその店は、「劇場」という意味合いの名前が付けられていた。その名の通り、劇場をモチーフにしたレストランで、地下一階のドアを空けると、そこは、キッチンを舞台とした劇場のような作りになっている。

オープンキッチンを取り囲むようにコの字に配置されたカウンターは、まるで舞台を見る客席のようで。そして、天井から吊るされた数十のライトは、卓上の食事を絶妙な光加減で照らしていた。いわば

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東京タワーを見下ろして

東京タワーを見上げて暮らしていた頃があった。大学生の頃だ。

東京タワーは芝公園にあり、少し歩くと麻布十番や三田になる。しかし、芝公園のあたりはそこまで人気でもなく、意外と学生の僕でも背伸びをすれば住める町だった。もちろん、その分、たくさんのバイトはしたけれど。

田舎から出てきた者の宿命ゆえか東京タワーには憧れがあり、どうしてもその近くに住んでみたかった。その分、大学からは離れてしまったので毎日

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損することと幸せにすることと

「人を幸せにすると自分も幸せになるんだよ」と言葉が口癖のような男だった。元来、奴はそのような博愛主義者や利他的な生き様を歩んでいたわけではなかった。しかし、30も超えた頃だろうか。急に、奴はそのような方針を打ち立てた。いわば転向とでも言うような。

ただし、奴はむやみに人を幸せにするということはしなかった。そうではなく、ふとした折に人を幸せにしていた。たとえば、年始に神社に初詣を行く時は「人類が平

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のるな

「なぁ、今日、隣の課長が部下に怒ってたんだよ」

「ああ、あのひと、よく怒りますよね」

「でさ、怒られてたのは山下だったんだけど、言い返さないわけ」

「そんな感じですね」

「すると、課長はどんどん怒っていくわけ。音量が大きくなるとかではなく、なんというかノッてきたんだよ。テンションがあがってきたというか。みりみりみりみり去年の事とかも言い出したわけ。それが30分くらい続いたの」

「30分も

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夢で見る男

熱を出した時にだけ見る夢がある。サーカスのブランコに私は座っている。そのブランコが急にぐるぐる回りだして、私は上下左右がわからなくなって気分が悪くなる。そして、遠心力は強くなり、私はもう踏ん張ることも辞めて、どこかに放り投げられる。観客席でその私をみている1人の男がいる。厳しい顔つきで私をみている。ひげが少し生えている。30歳か40歳くらいだろうか。私はその人の目をじっと眺めている。

この夢をみ

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バーテンダーが酔うお店

「バーの出会いって不思議なんですよ」とカウンターの向こうでグラスを磨きながら榊さんが言う。

「バーで男女が出会う。それはよくある話です。私が仲介することもありますし、あるいは、たまたまお客さん同士で意気投合をすることもあります。そして、付き合うことになれば、お二人でお店にきてくださいます。でも別れたら?」

榊さんは言葉を止める。私は言う。

「来なくなるの?」

「ケースバイです。基本的に、振

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リンゴ好きなカップル

果物のリンゴ、だ。最初のデートではそんな素振りを見せなかった。でも、何回目かのデートで行ったバーで、フルーツカクテルがあり、女が「リンゴのカクテルってありますか?」と聞いたことで、女がリンゴ好きということが判明した。そもそもリンゴのカクテルはなくメロンのカクテルになったが。

とはいえ、「リンゴ食べに行こう」というように出かけることはなく、日常の細かいシーンでリンゴは脇役として活躍した。たとえば、

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マンションの近くに病院がある効用

「聖路加病院ってあるんじゃん。日本での病院ランキングでも上位に入る」

 「メディアでよく見る日野原先生がいるとこでしょ」

「そうそう。今でもいるのか知らないけど、ともかく。その聖路加病院の近くにマンションができて、その売り文句の1つが聖路加まで2分なんだって」

 「へー。病気になった時にすぐ行けますよってことなのかな」

「まぁそうなんだと思うんだけど、これってさ、駅まで2分とかスーパまで2

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