あさイチ/千葉雄大さんへのアナウンサー講義を見て

以前、池上彰さんがこんなことを言っていた。
「新人アナウンサーがニュースを読むのを聞いていたら、途中で突然意味がわからなくなった。ニュースは問題なく読み続けられている。それなのに内容が入ってこない。終わった後そのアナウンサーに、君、もしかして途中からニュースの意味が分かってなかったんじゃないかと聞くと、そうだと言う。読み手がしっかり理解して読まないと、聞き手には伝わらないということをハッキリ感じた体験だった。」と。
その言葉はずっと私の心に残り、人前で話す度に頭をよぎった。


今朝のあさイチで、俳優千葉雄大さんに、NHKの小林アナウンサーがニュース原稿読みの講義をするシーンがあった。

文節ごとに頭を高く発音してしまうと、ブツ切りに感じる。そのため、ニュースの始めを高くして、終わりに向けて次第に低くしていく「読み下し」の方法をとる。
ただしそれだけだと平坦な感じになるので、自分が重要だと思う言葉を選んで少し高くしたり、ゆっくり強調したりする。


「○○動物園でキリンの赤ちゃんが産まれました。今は緊急事態宣言を受けて動物園は閉園中のため、開園が再開した後に一般公開する予定です。」(原文はもっと長かった)
たとえば、このニュース原稿ってつまり何を伝えたいニュース?ということは、どこを強調する?
答えは「キリンの赤ちゃんが産まれたよ、今は難しいけど、コロナが落ち着いたら公開するよ」というメッセージ。だから「キリン、赤ちゃん産まれた」「一般公開」を強調する。

そんな指導に、「なんだか国語のテストみたいな…」「読解力が試されますね」と花大さん。
「強調する場所は打ち合わせるんですか?」との質問に、小林アナたちは「打ち合わせることもあるけど、基本的には読み手それぞれが考えます。」と答えていた。

このアナウンサー講義を見たとき、あの池上さんの「読み手が分かってないと聞き手に伝わらない」の理由が分かった気がした。
言葉は、そこにあるだけでは意味をなさない。言葉が選ばれ、組み合わされ、原稿になり、それを誰かが読み、聞き手に届く。届く、までには、誰かの解釈と意味づけが必要なのだ。それがない言葉だけの言葉は、発語されても意味をなさずに宙を舞うだけ。そして言葉に意味を込めて表現するには、声の高さや速さ、呼吸や表情など、沢山の言外の要素をコントロールしなければならない。
改めて、言葉の奥深さと、「言葉を声に出す」表現の奥深さ―難しさと可能性―を知った。

ある情報を話すとき、自分は何を伝えたくて話すのか。立ち止まって考えてから、唇に音を乗せようと思う。


※千葉雄大さん、指導がすぐニュース読みに反映されていて素敵でした。前シリーズは見逃しちゃったけど、「いいね光源氏くん しーずん2」絶対観よう〜楽しみ!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?