わたしはいつも気付くのが遅いという話


あさ、メールボックスを開く。

企業からの不採用通知を目にして、再び布団にもぐりこむ。

悲しい、悔しい、仕方ない。

悲しんでばかりでもいられない。すぐに求人サイトを開く。

ああ、また1からのスタートだ。

「大丈夫、うまくいく」

口癖になっている言葉を呟きながら、あさの支度をする。


転職活動中の今も就活のときもそうだったが、わたしはこれらに関することを一切両親に相談していない。というよりも、両親とはほとんど会話をしない。たぶん、ほかのひとが見たら驚きを超えるようなレベルで。

そんなわけだから、今回もほとんど転職活動の進み具合の話もしていなくて、いとこやおばあちゃんに「ここに応募した。ここに行きたい。」という話をしてたから、それが母にも伝わっていた。だからといって、ここで何がしたいの?とか他にどんなところを受けてるの?みたいな話はない。

面接当日、「面接頑張ってね。応援してるよ!」という置き手紙がテーブルの上にぽつんとあった。

だから、結果を知らせとこうと、「だめだった。長引くかも。ごめん」という内容のラインを送った。

「あなたに合う場所をゆっくりじっくり探せばいいよ」

ピコン、と通知が鳴り、画面にこの言葉が表示されているのを見て、少し泣いた。

甘やかされてるな、と思った。

これだけじゃない。今日だけじゃない。

わたしはいつも、甘やかすという名の愛情をたくさん与えられていた。わたしには、わたしを甘やかしてくれる場所があった。

わたしは本当に気付くのが遅い。たくさんの愛情を注いでくれた母に、わたしはなにをしているんだろう。なにをしてきたんだろう。


母みたいになりたくない、と未熟なわたしは言った。

なりたくないんじゃない、なれないんだ。

こんなわたしに、昔と変わらず、愛おしいと言ってくれる母には、なれない。




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