文章を書く時に心がけていること③
かなり高い確率で「①と②における書き方が全く同じで、つまり手抜きじゃないのか。」みたいな批判があるだろうと予想していた。これまでの所は杞憂に終わっているようなので、皆さんの寛大な心に感謝したい。(「文章を書く時に心がけていること①及び②」をご覧ください。)
確かにこれらはほぼ同じ型に沿って書かれた文章だ。だが、両文章とも極めてシンプルな内容を述べているので、わざわざ構造を変える必要も無い。必要が無いことはできればやりたくない。私は、いわゆる面倒くさがり屋なのだ。それでも、スポンジ、フルーツ、生クリームという要素から様々なケーキが生み出されてきたように、表現を工夫すれば同じ要素でも全く異なる文章にアレンジすることもできる。では、その表現を一体どのように探していけば良いのだろうか。
私は、文章の表現とは
・比喩(例え)
・対比(構造)
・流れ(リズム)
の三つを意識すれば良いのではないかと考えている。
例えの重要性は本シリーズ①で述べた通りだ。例えを簡単に作るコツは、例えば身の回りにありふれた道具に例えたり、専門用語をその専門外のテーマに移植してみることだ。例えば、"新鮮さ"を表現したい時に「朝どれレタス」と書いてみたり、"あまり強くない力で結び付いていること"を表現したいときに"ステープラー(ホッチキス)の芯"と書いてみたりする。誰もが知っている物に例えることに成功すれば、誰でもそれを感覚的にイメージすることができる。これが「マネの絵」とか「雇用・利子および貨幣の一般理論(著名な経済学者『ケインズ』の名著)とか、あまり皆さんがイメージできないことになってくると、例えとしての機能が極めて限定的になる。距離を縮める"例え"を用いて、相手を突き放しては本末転倒だ。専門用語を用いるときには特に注意が必要だ。
ちなみに、最近書いた「後輩Aの話。」というnoteの中に次のような一文がある。
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我が国最高法規の12条を、それはそれは忠実に実行し続けた。
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"我が国最高法規"が日本国憲法を指す点に異論は無かろうが、我々の大半はその12条が何たるかまでを把握していないものと想像する。(かくいう私も知らなかった。)この専門用語が例えの一翼を担えるのは、日本国憲法のことくらい日本人として理解しておく必要があり、たとえ知らないとしても読者の責任で調べるべき(また容易に調べることができるはず)だ、と多くの人が考えるからだ。そういうバランス感覚でギリギリの所を狙っていければ素敵だなと思う。例えを作る際には、たとえば"不断の努力"とかいう貴方の頭の片隅に残る検索ワードを用いることで、それらしい表現の候補を何点かインターネットの大海が提供してくれるはずだ。我々に与えられた時間は有限で、例えを作るために、物知りになる時間はないし、その必要も全く無い。
二点目として、「文章は対比である」と断じても決して言い過ぎではない。驚くべきことに、我々は2種類以上の要素を対比させることで、物事を初めて認識できる。例えば、初めて東京は京橋の名店「Idemi Sugino」でそのケーキを口にした人は、その素晴らしさを到底理解できやしないだろう。スーパーマーケットやコンビニエンスストアで手に入るリーズナブルな一品で糖分を補った経験、もっと言えば、いかにも健康に宜しくない10円の駄菓子で幼少期をやり過ごした原体験が、良質な甘味の良さを相対化する(際立たせる)のだ。ゆえに、文章は主張と対になる要素を交えながら対比的に展開されなければいけない。例えば「後輩Aの話。」では、強烈なキャラクターをもつ新時代の後輩Aと、前時代的な大人達が対比されている。大人達がいなければ、Aに着目した理由は途端に朧気になる。「育児はクリエイティブだ、という話。」でも、仕事と育児を"計画性"の観点から比較することで、育児の大変さと、それが理解されづらい点を綴っている。文章とは、すなわち対比することなのだ。対立する要素AとB、過去・現在・未来といった時間軸で、我々は対比を試み、対象物を相対的、立体的に描く必要がある。
最後の要素である"流れ"というのは、いわば言葉遊びのようなものである。例えば韻を踏んでみたり、体現止めや倒置法、縁語といった技法を用いてみたり、文章に自分なりのテンポ、リズム感をもたせる工夫がそれにあたる。誤解を恐れずに言えば、オリジナリティとは、何に着目するかではなく、どう表現するかにかかっていると言える、とも思う。これは、私自身模索中のところがあり、詳述をご容赦願いたい。色々な人が、色々なテクニックを駆使しているので、「この人のような文章を書きたいな。」と思える先人のマネをするに尽きる。
これら三要素、つまり
・比喩(例え)
・対比(構造)
・流れ(リズム)
により、貴方の文章はずっと分かりやすく、直感的で、貴方らしさを伴うものになるはずだ。
少し細かい話も出てきた点で③は①、②と比較して幾分マシだったろうか。④以降の作成は、なお確約できないものの、予報は「曇り後晴れ」であるから、傘は必要ないように思われる。
何かのお役に立ちましたなら幸いです。気が向きましたら、一杯の缶コーヒー代を。(let's nemutai 覚まし…!)