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メタバースで学術が加速する!「バーチャル学会2022」レポート

メタバースの学術イベント「バーチャル学会2022」に参加しました! 私達メタバース研究ユニット「Nem x Mila」は大規模調査「メタバースでのハラスメント」を発表しました。アニメキャラクターみたいな姿でポスターの前に集まり真面目な議論をするのは一見シュールですが、アバターがあるからこそ初めて出会う人とも心の距離が縮まり、自然とその場で議論が巻き起こりやすいのはメタバースならではの現象です。この記事では、学会で回ったプレゼンテーションの模様や私達の発表、そしてみんなの感想をまとめました。

12/18 「バーチャル学会2022」ポスターセッション生中継

メタバース「clsuter」の現地会場からYouTube LIVEで生中継して、メタバースで加速する学術の模様をお届けしました。

バーチャル学会2022とは?

バーチャル学会2022とは? - バーチャル学会20222

※動画チャプター:00:00

副運営委員長の「ふぁるこ」さんにお話を伺いました! 4回目の開催となるバーチャル学会。今回clusterでのポスターセッション開催となったのは、clusterで一般来場者でもトークをする機能が実装されたからだそう。たしかにみんなで話せるなら大人数に対応していてスマホでも入れちゃうclusterは学会向きかもですね。

バーチャル学会の目的について
ソーシャルVRは、複数人での同時多発的な対話と身体性を伴った交流が可能であり、人類の新たな活動拠点として注目されています。
ソーシャルVRは物理的制約から開放された世界・空間の創造が可能であることに加え、所属組織や居住地といった社会的制約に縛られない交流の場たりえます。すでにソーシャルVRの中では人々の交流、コミュニティや文化の形成が進んでおり、新しい価値を育む土壌となっています。
特に学術活動は、知識を継承し、交流により新たな課題を創出することが不可欠であり、ソーシャルVRの活用との高い親和性があります。学問の様な普遍的な価値を介し、ソーシャルVRと物理世界の双方向に循環が生まれることで、あらたな価値形成につながると信じています。
2022年度のバーチャル学会では、多くの分野間の交流を通じて新たな課題の発見や気づきを促進するとともに、学術に関心のある誰もが参加しやすい開かれた学会を目指します。

バーチャル学会の目的について - バーチャル学会20222

D1-23: 医学生に対する血管内治療用VRシミュレータの有用性

D1-23: 医学生に対する血管内治療用VRシミュレータの有用性 - バーチャル学会20222

※動画チャプター:10:30

血管内カテーテルを使った手術のトレーニングをVRシミュレーションで行う研究。「職人芸」みたいな、文章で伝えづらい技術を伝えやすいのはVRの効果が期待される分野です。実際に学習効率の向上につながったことがしっかりと数値化されているのがよかったです。

D1-23: 医学生に対する血管内治療用VRシミュレータの有用性
著者:三谷英範、宮路憲太郎、本田有紀子
所属:広島大学 放射線診断科
概要:我々の開発した血管内治療のVRシミュレータ (HiVR) の有用性の検証。 方法:2022年4月から9月までに血管内治療の実習をした学生22人を対象とした。ランダムにHiVR群(13名)と従来群(9名)に分け、模擬患者に対する手技の手技時間、造影剤量、透視時間、患者最大皮膚線量を比べた。なお、模擬患者には VIST G5 (Mentice社)を使用した。 結果:HiVR群 vs. 従来群で、手技時間11.9 vs. 14.1分(p = 0.17), 造影剤量32.1 vs.41.5 ml (p = 0.08), 透視時間 9.7 vs.11.2分 (p = 0.19), 患者最大皮膚線量 282.8 vs.383.0mGy (p = 0.04), 専門医による評価点数 36 vs.31(p < 0.01) であった。 結論:HiVRは初学者の被爆線量の短縮や手技向上に期待される。

D1-23: 医学生に対する血管内治療用VRシミュレータの有用性 - バーチャル学会20222

そして発表者「イサリア」さんのアバターがミイラづくりなど医術を司る「アヌビス神」になってるのが最高! 去年は医療倫理の象徴である「アスクレピオスの杖」のアバターだったんだけど、今回は教授(となりのテレビ君)と一緒なので恐れ多いので「オシリス神」にしたそうですw 医学生らしいアバターへの謎のこだわり素敵です。

イサリアさん「アヌビス神」アバター(今年)
イサリアさん「アスクレピオスの杖」アバター(去年)

D1-42: 肢体不自由の身体障がい者のための娯楽に関する VR活用方法の模索

D1-42: 肢体不自由の身体障がい者のための娯楽に関する VR活用方法の模索 - バーチャル学会20222

※動画チャプター:20:20

肢体不自由の身体障がい者の方に実際にVRを体験をしてもらってQOL向上を目指す試み。私の知り合いのメタバース住人で障がい者の方は「メタバースでは障がいがあることがわかりずらくて差別されずらいのが利点の一つ」だと言っていました。聴覚障がい者で手話を教える教室をメタバースで行っている方もいます。ただ、障がいの程度によっては、現在のVRゴーグルはまだまだ使いづらいのが大きな課題になりそうですね。

D1-42: 肢体不自由の身体障がい者のための娯楽に関する VR活用方法の模索
著者:秋山悠、齊藤大将、秋山昊
所属:情報経営イノベーション専門職大学
概要:現実では障がいによって様々な活動に制約を受ける肢体不自由の方に、VRヘッドセットを活用して新たな娯楽を提案することが出来るのではないかと考えた。そこで、肢体不自由の方がVRヘッドセットを活用する際に適した「姿勢」と「コンテンツ」を明らかにするという目的で、肢体不自由の対象者がVRヘッドセットを使用してVRのコンテンツを楽しむ補助と、その観察を行った。観察の結果、当研究の対象者がVRヘッドセットを使用する際に適した姿勢は「体育座りに近い姿勢で抱きかかえられた状態」、適したコンテンツは「風景・観光系」であると考えられる。当研究を通して「姿勢」と「コンテンツ」以外にも肢体不自由の方がVRヘッドセットを使用する際に直面する問題が浮き彫りになったため、今後はVRヘッドセット使用者の酔いの測定方法や既存のVRヘッドセットの問題点等の詳細な研究を行っていきたい。

D1-42: 肢体不自由の身体障がい者のための娯楽に関する VR活用方法の模索 - バーチャル学会20222

C2-13:「メタバース3Dプリント計画」のための技術開発状況

C2-13:「メタバース3Dプリント計画」のための技術開発状況 - バーチャル学会20222

※動画チャプター:31:20

メタバース住人やVRChatのアバターをVRChat内でスキャンして、現実世界で物理フィギュアにするプロジェクトを進める「そむにうむ」さん。サービス化まであと一歩!? 現実とメタバースの垣根を無くす試み、注目です!

C2-13: 「メタバース3Dプリント計画」のための技術開発状況
著者:そむにうむ@森山
所属:トイメディアデザイン
概要:メタバース時代と言われる今、メタバース内のアバターモデルを3Dプリンターで出力して取り出すサービスは普及していないのが現状である.特に「メタバース上でのアバターをその姿のまま立体化する」という発想は技術的にも困難なため実現はされていない。本稿ではこの発想を具体化するために「ボクセル変換処理」をゲーム開発環境Unityで動作させ検証を続けてきた。その結果、処理を具体的に実装するための技術的なアプローチや処理時間の短縮を実現し、目標達成直前まで近づいたため「メタバース3Dプリント計画」を掲げるに至った。その現状を報告するとともにメタバース時代の3Dプリントサービス事業の概要について説明する。

C2-13:「メタバース3Dプリント計画」のための技術開発状況 - バーチャル学会20222

C2-45: 人見知りサポートARグラスの開発

C2-45: 人見知りサポートARグラスの開発 - バーチャル学会20222

※動画チャプター:41:00

メタバースではアバターが表情を抽象化してくれるので、コミュニケーションが活発化しやすいと思うんですが、こちらはAR技術を使ってそれを現実世界でやってしまおうと言う試み。面白いです。

C2-45: 人見知りサポートARグラスの開発
著者:山本剛瑠、尾関友恵
所属:愛知工科大学情報メディア学科尾関研究室
概要:人と人のコミュニケーションは,技術の進歩により対面からネットに変化し始めた.しかし,仕事等の影響で実際に顔を合わせながらコミュニケーションは無くなることがないため,人見知りの方だと初対面相手と話し合いは大変である.本研究では,人見知りの人のためのコミュニケーションを補助できるARシステムを構築・使用した影響を調査する.本発表ではその途中経過を報告する.

C2-45: 人見知りサポートARグラスの開発 - バーチャル学会2022

C4-50: コミュニケーション行為としての『お砂糖』

私達のソーシャルVR国勢調査2021でも分析した、メラバースでの恋愛関係「お砂糖」についての研究。現実の恋愛との比較からお砂糖の特異性を浮かび上がらせる検討でした。

C4-50: コミュニケーション行為としての『お砂糖』 - バーチャル学会20222

※動画チャプター:52:28

C4-50: コミュニケーション行為としての『お砂糖』
著者:中尾優奈(さくらまゆ)
所属:一橋大学大学院社会学研究科博士課程
紹介動画:https://youtu.be/oLBd8sCq940
概要:VRChatを中心に、ソーシャルVR文化には「お砂糖」というものがある。一般的に、お砂糖とはVR空間上でアバターを介した当事者同士の「特別な関係」と見なされる。またお砂糖は、ジェンダー論において、ポリアモリー・同性愛など、後期近代において拡張された恋愛概念の一部として捉えられがちである。本発表での問題提起は、果たして『お砂糖』とは本当に近代的恋愛の派生なのか、それとも新規性のあるコミュニケーション類型なのかであり、さらに『お砂糖』とは何かを仮説構築的に考察することである。結果として、近代的恋愛において不可欠な『消費社会への従属』『片務性』という側面がお砂糖には欠けており、また「バーチャル美少女」同士のコミュニケーションがお砂糖において重要であるといえた。

C4-50: コミュニケーション行為としての『お砂糖』 - バーチャル学会2022

C4-28: メタバースでのハラスメント

口頭発表: メタバースでのハラスメント - バーチャル学会20222
C4-28: メタバースでのハラスメント - バーチャル学会20222

※動画チャプター:1:00:27

私達「Nem x Mila」は大規模調査「メタバースでのハラスメント」について口頭発表・ポスタープレゼンテーションを行いました。メディアによる偏向報道事件が起きたり、政府がやけに規制に積極的だったりと、住民の感覚からかけ離れた議論が巻き起こりがちなハラスメントですが、メタバースへの不理解が原因だと私達は考えています。残念がら、事実としてメタバースにハラスメントは存在します。頻度や程度は現実世界のものに比べたら小さなものと言えそうですが、メタバース特有の事象も数多くあります。実態を定量化することで、地に足がついた議論が進むことを期待して調査を実施しました。

C4-28: メタバースでのハラスメント
著者:バーチャル美少女ねむ、Liudmila Bredikhina
所属:VTuber研究ユニット「Nem x Mila」
概要:メタバースでのハラスメントの実態を明らかにするため、全世界のソーシャルVRユーザーを対象に実施した大規模調査を実施した。 対象はVR HMDを用いて直近1年以内に5回以上ソーシャルVRを利用した英語・日本語話者。日本・北米・ヨーロッパを中心とした876件のデータを集計し分析した(全60ページ超のフルレポートを無償公開中)

C4-28: メタバースでのハラスメント - バーチャル学会2022

来場者のみなさんから数多くの質問を頂き、その場で議論できて良かったです。やはりこれがメタバースの醍醐味ですね。頂いたご意見や反応は今後の活動に活かして行きたいと思います。

C4-28: メタバースでのハラスメント - バーチャル学会20222
C4-28: メタバースでのハラスメント - バーチャル学会20222

フルのレポ―トは62ページありますが、こちらで全て無償公開していますので、ぜひ御覧ください。

みんなの感想 (一部抜粋)


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