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読売新聞偏向報道事件簿 → メタバースでセクハラ横行!? 対策急務!? とにかく気持ち悪い!?

読売新聞が2022年11月21日に公開した記事「【対策急務】仮想空間「メタバース」でセクハラ横行…臨場感あり「とにかく気持ち悪い」 」は私達メタバース研究ユニット「Nem x Mila」が公開した調査レポート「メタバースでのハラスメント」について取材したものでしたが、私のインタビューと共に掲載する約束を反古にされ、偏向した恣意的な取り上げ方だったため、情報提供者として情報の削除を要請し、11月22日に記事が撤回されました。この記事ではその顛末についてまとめます。メディアの方にはアクセス数稼ぎの悪質な印象操作を止めて頂きたいです。

11/8 読売新聞より取材を受ける

今月11月8日に読売新聞の記者の方よりコンタクトを受け、レポート「メタバースでのハラスメント」について、私に対するインタビューと共にデータを掲載したいという希望があり、了承しました。

こちらが記者の方とのインタビューのやり取りです。当日たまたま私が忙しくテキストチャットでのインタビューとなったため、偶然にも会話ログが全てそのまま残っていました。こちらに全文ノーカット・改変なしで掲載します。

(読売新聞記者) ねむさん自身もメタバースでハラスメントを受けた経験があれば、いつ、どこで、どういう状況だったか、どんな気持ちがしたか、を教えていただけると。

(ねむ) はい。私もあります。治安の悪いところに行ったときなど、グロテスクなアバターとかを無理やり見せられたり、不愉快な音を聞かせられたり、付きまとわれたりとかしたことはあります。ただメタバースでは、相手を非表示にしたり、ミュートにしたり、ブロックしたり自分を守るしくみが充実していて、ちょっとでもイヤだなと感じたら私はそういう機能を躊躇なく使うので、現実で起こるハラスメントとくらべてそんなにダメージが強い訳では無いです。すぐに忘れてしまいます。メタバースでも現実同様ハラスメントはあるが、程度としてそんなに強いわけではない、というのはまさに今回調査で実証されたところです。ただし、人によって感じ方が極端に違うので、そこは注意が必要ですね。結局現実と一緒で「相手の立場に立って考える」というのが一番大事です。ただ、国や性別の境界のない世界なので、現実以上に難しい側面はあるかもしれません。

(読売新聞記者) もしその場合、今回の実態調査は自身の経験も踏まえてのものと考えていいのか

(ねむ) そうですね。自分自身も被害者にも加害者にもなりうることなので、一度実態を詳しく調べてみたいと思っていました。あと、最近メディアがメタバースの危険性を過剰に煽ったり、政府がやけに規制に前向きだったりと、実際のユーザーの感覚からかけ離れた議論があちこちで起こっていることに強い危機感を持っていました。このレポートは、地に足がついた議論に向けて一石を投じるものになればと思っています。

掲載されるはずだったインタビュー内容 - 読売新聞メタバース偏向報道事件 

このように「メディアがメタバースの危険性を過剰に煽らないように」予め記者の方に対しては忠告をしていました。

11/21 読売新聞が偏向報道「【対策急務】仮想空間「メタバース」でセクハラ横行…臨場感あり「とにかく気持ち悪い」」

読売新聞オンライン「【対策急務】仮想空間『メタバース』でセクハラ横行…臨場感あり『とにかく気持ち悪い』」(アーカイブ)|Wayback Machine - 読売新聞メタバース偏向報道事件

11月21日に読売新聞夕刊と読売新聞オンラインで「【対策急務】仮想空間「メタバース」でセクハラ横行…臨場感あり「とにかく気持ち悪い」 」が公開されました。掲載が約束されていた上記のインタビュー内容は一切掲載されなかった上、私の忠告は無視され「ハラスメント横行」「対策急務」「とにかく気持ち悪い」という、まさしく私が恐れていた通りの、メタバースの危険性を煽る偏向した結論ありきの取り上げ方になっていました。

ライブドアニュースやYahoo!ニュースにも転載され、ライブドアの記事ツイートは数万リツイートされるなど、メタバースのイメージを不当に悪化させかねない情報が大きく拡散されてしまいました。

仮想空間「メタバース」でセクハラ横行…臨場感あり「とにかく気持ち悪い」

 インターネット上の仮想空間「メタバース」で、ハラスメントが横行している。有志の調査では、利用者の半数が被害に遭ったことがあると答えた。メタバース市場は2026年度に1兆円を超えるとの試算もあり、子どもたちが利用する機会も増える。対策は急務だ。(大重真弓、隅谷真)

(後略)

読売新聞オンライン「【対策急務】仮想空間『メタバース』でセクハラ横行…臨場感あり『とにかく気持ち悪い』」(アーカイブ)|Wayback Machine - 読売新聞メタバース偏向報道事件
数万リツイートされたライブドアニュースのツイート(現在は削除済み)- 読売新聞メタバース偏向報道事件

11月21日に発行された読売新聞夕刊はこちら。記事内容は同じでしたが、こちらの見出しはややトーンダウンした表現になっています。それでも「体触る、性的な言葉 横行」という表現がありますが…

2022年11月21日 読売新聞夕刊「仮想空間でもハラスメント」 - 読売新聞メタバース偏向報道事件

11/22 情報の削除を要請、web版記事が撤回される

私のインタビューと共に掲載するという約束を反古にされたこと、偏向した結論ありきの恣意的な取り上げ方だと考えていることを理由に、情報提供者として全てのwebの記事中から速やかに私の名前とデータの削除を行うよう、読売新聞記者の方に要請しました。

当初は全く相手にされませんでしたが、既に偏向記事が大きく拡散されてしまった後ではあるものの、最終的に責任者である読売新聞社会部デスク担当の方より記事をwebの記事を削除したと連絡がありました。読売新聞オンライン・ライブドアニュース・Yahoo!ニュース等全て記事が撤回され、情報を拡散していたニュースサイトのツイート等も削除されました。

読売新聞オンライン「【対策急務】仮想空間『メタバース』でセクハラ横行…臨場感あり『とにかく気持ち悪い』」(現在は削除済み)- 読売新聞メタバース偏向報道事件

メタバースでのハラスメントの実態

近年メディアがメタバースの危険性を過剰に煽ったり、政府がやけに規制に前向きだったりと、実際のユーザーの感覚からかけ離れた議論があちこちで起こっていることに、一ユーザーとして強い危機感を持っていました。私達が公開したレポート「メタバースでのハラスメント」はそうした状況に一石を投じ、地に足がついた議論のきっかけとなることを祈って全世界約900名のユーザーの協力のもと実施した調査結果をまとめたものです。

メタバースでのハラスメント (Nem x Mila)

このことは取材を受けた際に読売新聞の記者の方にも繰り返し説明をしました。それにも関わらず「セクハラ横行」「対策急務」「とにかく気持ち悪い」と過剰にメタバースの危険性を煽りメタバースのイメージを不当に悪化させかねない記事にされてしまったこと、非常に悲しいです。

残念ながらメタバースにハラスメントは存在します。しかし、それは人と人とか触れあう世界である以上決してゼロにはできないものです。レポートでは、その程度に関わらず「他のユーザーから不快な思いをさせられる不適切な行為」を全て「ハラスメント」として定義しています。現実世界でこの条件で統計を取ったらハラスメントの経験率はほぼ100%に近い値になるはずですし、それと比べたらメタバースにおけるハラスメントの経験率は決して高いものとはいえないと私は考えます。

ハラスメント経験率と目撃率 - メタバースでのハラスメント

ハラスメントの程度としても、重大な影響を与えるほどのものの割合は決して多くはありません。また、メタバースではミュートやブロックなど現実世界にはない自己防衛手段が充実しており、そういったものを駆使してユーザーが自分を守っていることもレポートから明らかになりました。「セクハラ横行」と過度に危険性を煽るような状況ではないと思います。

物理/メタバース生活への影響 - メタバースでのハラスメント
ハラスメントへの対処 - メタバースでのハラスメント

もちろん、だからといってメタバースでのハラスメントに課題がない訳ではありません。現実以上に様々な人種・性別・国籍の方が交流する世界であり「互いに思いやりをもち、相手の立場に立って行動することが大事」だと数多くのユーザーが答えていました。同時に、「自由を妨げる規制をメタバースに持ち込まないでほしい」と懸念する声が非常に多く、規制に対しては非常に慎重に議論を進めるべきで、「対策急務」というような緊急性のある状況ではないと思います。

安全を守るもの - メタバースでのハラスメント
法律やガイドライン - メタバースでのハラスメント

本レポートは、よりよいメタバースに向けた議論を活性化するため、こちらで全62ページを無償公開しています。ぜひご覧いただき、感想を頂けると幸いです。

アクセス数稼ぎの悪質な印象操作を止めて

今回読売新聞に情報提供者として取り下げを要請しましたが、担当の記者の方に問い合わせても当初全く相手にされませんでした。数多くのメタバースユーザーの方がTwitterで挙げてくれた数多くの懸念や不安の声を直接伝えることで、はじめて読売新聞を動かすことができました。みなさん本当にありがとうございます。

また、メディアの方には、仮想世界といえどそこで生きる人々にとってはかけがえのないものであることを改めてしっかりと認識し、アクセス数稼ぎの悪質な印象操作を止めて、公正な報道を心がけて頂きたいです。

バーチャル美少女ねむ

読売新聞責任者の方のコメント

記事の取り下げを受けて、責任者である読売新聞社会部デスク担当の方に「あらぬ誤解を広めてしまったことに関して、メタバースのユーザーの方々に対してコメントを頂きたい」と11月22日16:03にお願いしましたが、本記事を執筆した11月23日12:00時点、回答はありません。コメントがあり次第こちらに追記してお知らせしたいと思います。誠実な回答を期待しています。

メディア掲載歴

偏向報道事件について多くのメディアで取り上げられました。

読売新聞メタバース偏向報道事件に関する記事

※11/25追記:インターネットテレビ局ABEMAの報道番組「ABEMA Prime(アベプラ)」でも特集されました。

みんなの声(一部抜粋)


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