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アバター姿でポスターセッション? 「バーチャル学会2023」レポート

アニメキャラのようなアバターの姿で、大真面目にポスターセッションを行う。冗談のようなシュールな光景ですが、これこそがVRの本質ではないかと思います。空間を共有し、顔を合わせるからこそ生まれる、コラボレーションや閃き! この記事では本日行われ、今年も大盛況となった「バーチャル学会2023」の模様をレポートします。私達の「VRライフスタイル調査」の発表も行い、たくさんの意見やコメントを頂きました。


12/10「バーチャル学会2023」ポスターセッション生中継

「バーチャル学会2023」ポスターセッションの模様を現地cluster会場より生中継しました。気ままに思いつくままに周り、気になったポスターは発表者の方に直接お話を伺いました。動画にチャプターを付けたので、ぜひ気になるところだけでも御覧ください。配信カメラマンはkomatsuさんにご協力頂きました。

運営委員長ふぁるこさんが語る「バーチャル学会2023」のポイント:ポスターセッションの為に最適化された仮想空間

03:15

バーチャル学会2023運営委員長ふぁるこさんにイベントの主旨や今回のポイントを解説してもらいました。今回はバーチャルならではの学会イベントの在り方を追求したそうです。

運営委員長ふぁるこさんが語る「バーチャル学会2023」のポイント

特に私が注目したのは、五角形の空間がいくつも組み合わさった、独特な階層構造の会場デザイン。発表者と周りに集まる人々の間で、どうすれば適切なコラボレーションが生まれるのか? 音声の距離減衰などを考慮し、ポスターセッションの為に最適化を重ねた仮想空間のワールド設計は「なるほど」の塊。導線設計の為に床に引かれた白線は、ポスターセッションのための空間を視覚的に表現するためのものとのことで、こちらも印象的でした。

導線設計の為に床に引かれた白線も印象的
五角形を組み合わせた独特な階層構造の会場設計

バーチャル学会2023の開催目的
『バーチャル学会』はVR空間での学術発表や交流を通じてVR空間での価値創造をアカデミックな側面から促進する取り組みです。ここでのVR空間とは三次元空間性を備え、電子情報通信により他者とインタラクション可能なCG領域を指します。VR空間、ひいては電脳世界での交流は技術の発展に伴いますます便利なものになるでしょう。しかしその世界をより豊かなものにするためには、その世界に暮らす人々による社会・経済活動が促進されることが必要です。バーチャル学会はそのような世界を目指すため学術という面から電脳世界の実現に貢献します。

※出典:バーチャル学会2023の開催目的

楓ヒナギクさん・法月ロイさん「VR酔い訓練集会参加者の特徴」

19:43

「VR酔い訓練集会」の楓ヒナギクさん法月ロイさん。VR酔いはVRユーザーを増やすための立ちはだかる大きな壁です。酔いの原因として「回転」がおおきいのではないかとのこと。普段VR酔いしないユーザーでもVR酔いを体験できるという最強トレーニングコースの話は衝撃w clusterで実際に体験できるそうです。

楓ヒナギクさん・法月ロイさん「VR酔い訓練集会参加者の特徴」
楓ヒナギクさん・法月ロイさん「VR酔い訓練集会参加者の特徴」
楓ヒナギクさん・法月ロイさん「VR酔い訓練集会参加者の特徴」

 近年、多くの企業がVR業界に参入し、一般ユーザーにとってVR体験が身近になってきている。一方、デスクトップモードかVRモードかを問わず、VR酔いがユーザーのVR体験を制限している。
 さらに、VR酔いは嘔気や倦怠感などの症状を伴うことから、VR体験がトラウマとなることも少なくない。3人に1人がVR酔いを起こす体質を持つとされており、我々はこれをVR体験への参加を躊躇させる大きな問題と考えている。
 そこで、この問題を解決するため、平衡機能を鍛えるためのトレーニングを個人のペースで行える機能を備えた訓練ワールドが制作された。このワールドで制作者や常連ユーザーから案内を受けることができるVR酔い訓練集会を月曜日の23時から開催している。今回、我々はこの集会の参加者から得られた情報から、VR酔いの症状が発生する状況の特性をまとめた結果を報告する。

※出典:p36-D2:VR酔い訓練集会参加者の特徴

おうむどりさん「VR空間における恐怖推定の試み」

28:28

脳波でVR体験中の恐怖体験を定量化するおうむどりさんの試み。脳波計測って結構難しくていろんな課題があるのですが、実際に明らかな相関が現れていました。将来的にVR体験中の感情を可視化して、アバターにリアルタイムで反映するしくみとかができたら、より現実を超えたコミュニケーションが作れるのかな、などと様々な妄想が膨らむ発表でした。

おうむどりさん「VR空間における恐怖推定の試み」
おうむどりさん「VR空間における恐怖推定の試み」
おうむどりさん「VR空間における恐怖推定の試み」

近年では、様々な生体指標を使った情動の推定が試みられている。情動の推定が可能になれば、環境・体験に対する印象を客観的に評価するといった応用が期待できる。
その中でも""恐怖""は生物が危険から身を守るために必要な情動として考えられ、例えばfight-or-flight反応といった生理的な変化を誘発することがよく知られている。しかし、何がどの程度の恐怖を誘発するのか?は文化的・社会的・個人的差異が存在している。特に過度な恐怖や所謂恐怖症といった状態は日常生活において問題を生じることもあり、刺激と恐怖の有無・程度の関係性を理解することは、学術的な観点からだけでなく、個人の生活の質的向上の面からも利益があると考えられる。
本研究では一般消費者向けの機器で取得可能な脳波などの生体指標を用い、筆者個人の”恐怖”を推定することで、”何”が”どの程度”の恐怖を誘発するのかを明らかにすることを試みた。

※出典:p51-D2:VR空間における恐怖推定の試み

saiさん「VR技術とドローンを用いた空き家調査の効率化」

37:07

ドローンで街をVR空間に再現し、空き家調査を効率化するというsaiさんの壮大な試み。色んな技術を活用しつつ、最後は結局VRでも人の目でチェックするというギャップが素敵です。現実とVRのいいところを組み合わせた、人間拡張の試みとしてとても興味深いと思いました。

saiさん「VR技術とドローンを用いた空き家調査の効率化」
saiさん「VR技術とドローンを用いた空き家調査の効率化」
saiさん「VR技術とドローンを用いた空き家調査の効率化」

近年、日本において空き家の増加が社会問題となっており、2018年時点での空き家数は約846万戸、空き家率は13.6%にも達している。この増加は倒壊や防犯性低下、景観への影響など様々な問題を引き起こしている。対策として「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されたが、現状の空き家調査手法は非効率的であり、プライバシー問題や調査員の主観による影響も問題となっている。本研究は、この課題を解決する新たな手法として、ドローンとVR(仮想現実)技術を用いた空き家調査の効率化に焦点を当てる。ドローンで収集した可視画像を基に高精細な3Dモデルを作成し、それをVR空間で展開。複数の被験者によるVR空間での空き家調査を実施することで、その有用性と課題を明らかにする。被験者12人分のVR空間における調査結果では総合精度が78.8%となり、調査に要する時間を約85%縮減できたことが分かった。

※出典:p28-D1:VR技術とドローンを用いた空き家調査の効率化

みずほコリさん「SNS上のバーチャルフォトデータを活用したマッピングワールドの作成」

46:15

ソーシャルVRの空間で撮影されSNSにアップされた写真データをワールドにマッピングして、3Dのインフォグラフィックにするというみずほコリさんの試み。同期性がメリットであるVRに非同期性を組み合わせて新しい体験がいろいろ作れそうで、面白い発表だと思いました。

みずほコリさん「SNS上のバーチャルフォトデータを活用したマッピングワールドの作成」
みずほコリさん「SNS上のバーチャルフォトデータを活用したマッピングワールドの作成」

clusterやVRChatなどのメタバースでは、ワールドと呼ばれるバーチャル空間内で写真を撮影することができる。このバーチャルフォトはSNSに数多く投稿されており、共有や拡散が活発に行われている。しかし、それらの写真データをワールド制作に活用した事例は少ない。本研究では、SNS上のバーチャルフォトデータを利用し、ワールドの分析や新しい体験提供の可能性について検討した。clusterに公開されているワールド「ほっこりパーク動物園」をモデルに、SNSに投稿されたバーチャルフォトを分析し、撮影地点をワールド内にマッピングした。そして、人気撮影スポットやワールド表現への応用について考察する。

※出典:p45-D1:SNS上のバーチャルフォトデータを活用したマッピングワールドの作成

バーチャル美少女ねむ「ソーシャルVRにおける経済活動の実態(VRライフスタイル調査)」

1:00:09

先日公開した「ソーシャルVRライフスタイル調査2023」より、経済活動に関するデータを紹介しました。今後クリエイターエコノミーが広がると、メタバースはいったいどうなるのか? たくさんの質問や意見を頂きました。

バーチャル美少女ねむ「ソーシャルVRにおける経済活動の実態(VRライフスタイル調査)」
バーチャル美少女ねむ「ソーシャルVRにおける経済活動の実態(VRライフスタイル調査)」
バーチャル美少女ねむ「ソーシャルVRにおける経済活動の実態(VRライフスタイル調査)」
お集まりありがとうございました!

ソーシャルVR住人対象にした大規模アンケート調査により、人口拡大により急速に拡大しつつあるソーシャルVR内の経済活動の実態を明らかにする

※出典:p19-D3:ソーシャルVRにおける経済活動の実態(ソーシャルVRライフスタイル調査2023)

あまねこさん「バーチャルフォトグラファーとしてできるバーチャル学会の盛り上げ方」

1:26:24

今回バーチャル学会の専属カメラマンをしているバーチャルフォトグラファーのあまねこさんに、写真でバーチャル学会を盛り上げる想いを語ってもらいました。私達の写真も撮ってもらいました。

あまねこさん「バーチャルフォトグラファーとしてできるバーチャル学会の盛り上げ方」
あまねこさん「バーチャルフォトグラファーとしてできるバーチャル学会の盛り上げ方」

リュドミラ・ブレディキナ「ソーシャルVRにおけるコミュニティの実態(VRライフスタイル調査)」

1:30:19

日本語勉強中のミラが今回は猛練習の末日本語でプレゼンしてくれました。先日公開した「ソーシャルVRライフスタイル調査2023」より、コミュニティに関するデータを紹介しました。おおきく広がったソーシャルVRで広がる様々なコミュニティ。こちらもたくさんの質問や意見を頂きました。

リュドミラ・ブレディキナ「ソーシャルVRにおけるコミュニティの実態(VRライフスタイル調査)」
リュドミラ・ブレディキナ「ソーシャルVRにおけるコミュニティの実態(VRライフスタイル調査)」
リュドミラ・ブレディキナ「ソーシャルVRにおけるコミュニティの実態(VRライフスタイル調査)」
お集まりありがとうございました!

ソーシャルVR住人対象にした大規模アンケート調査により、人口拡大により急速に拡大しつつあるソーシャルVR内のコミュニティ活動の実態を明らかにする
※出典:p20-D4:ソーシャルVRにおけるコミュニティの実態(ソーシャルVRライフスタイル調査2023)

みんなの感想

バーチャル学会2023

口頭発表でも発表

口頭発表でも発表させて頂きました。こちらは3分間のショートバージョン。バーチャル学会公式の配信にアーカイブされています。

バーチャル学会2023 口頭発表
バーチャル学会2023 口頭発表

参考:過去のバーチャル学会

「バーチャル学会2022」レポート

「バーチャル学会2021」レポート

ソーシャルVRライフスタイル調査2023

メタバースでのライフスタイルを可視化するため、全世界のユーザーを対象に行った大規模公開アンケート調査のレポートを公開しました。第2回となる今回は回答数が2,000件と過去最大になりました。ご協力ありがとうございました。要望の多かった「人口急増による変化」「コミュニティ」「経済」を重点テーマに設定しました。人類とメタバースの未来に向けたオープンな議論を活性化させるため、全80ページ無償公開します。ぜひ感想をお寄せください。

『メタバース進化論(技術評論社)』

拙著『メタバース進化論(技術評論社)』でもバーチャル学会について紹介させて頂いています。


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