グッモーニンの呪文
言葉の聞き間違いは誰もが経験していることだ。
私はその聞き間違いが大変多い(と思われる)。聴力は敏感なほど良いのにも関わらず、言葉が呪文のように聞こえることがよくある。
「もし変な言葉に聞こえても、それを聞き返さなければいいんだよ。聞き返すからややこしくなるんでしょ」と友達に言われた。その通りである。
しかしだ。本当に誰かが言わんとした言葉が聞き取れない場合、その呪文のように聞こえた言葉をすぐに繰り返してしまいたくなってしまう。もうこれは私の悪い癖になってしまった。イライラさせてすみません。
最近、聞き間違いが多いな、と思っていたところ思い出した古い記憶がある。それは、おそらく5歳の時。
誕生日にミニーマウスの目覚まし時計をもらった。その目覚まし時計は時間になる度にこう繰り返す。
『おはよう、おはよう!さあ早く起きましょ。私はミッキーとデートなの。あなたはどうするの?タノティー・フィニティノティーいいわね!』
おいおい『タノティー・フィニティノティー』ってなんだ。最早言葉じゃあないだろう。
でも当時の私はこの響きがお気に入りで、何か楽しい言葉なんだと思ってわくわくしながら目覚めていた。
そして時は経って高校生。私は友達が偶然同じ目覚まし時計を持っているという話を聞いて、『タノティー・フィニティノティー』について聞いてみた。
そうすると友達は大笑い。そしてその子に『タノティー・フィニティノティーいいわね!』の部分は『楽しい1日になるといいわね!』でしょ!と教えてもらった。
衝撃だった!そして辻褄の合うその言葉並びに感動するとともに、でも私には呪文に聞こえてしまうのは何でだろうという疑問に包まれた。
その疑問は未だなくならない。何回聞いても私にとっては『タノティー・フィニティノティー』にしか聞こえない。
聞き間違いというのは本当に不思議だ。
聞き間違ったその言葉には何ら意味はないのだけど、リズミカルに口ずさみたくなったり、楽しい気分になったり、丸で魔法の呪文のように、突然浮き上がってくる。
急に昔のことを思い出して、また色々考え直してしまった。でも、こんな無意味な言葉たちを、大人になっても愛していきたいぜ!格好はつかないけど!
という訳で言葉の意味から剥離した呪文に励まされながら、寝て起きて生きていこうと思います。
タノティ・フィニティノティー間戸ゆき
サポン!で世の中を変えることは難しそうです。しかしやってみる価値にかけてみたいと思います。