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終戦記念日

子どもの頃、大人から戦争の話しを聞くのが苦手だった。
それは戦時中の価値観を現代を生きる私に押しつけてくるように語る人が多かったから。

初めて実際の戦時中の生活をちゃんと話してくれたのは父だった。
学校のクラスごとに立川の工場で戦闘機造りをしたり、簡易的な戦闘機のコクピット模型で操縦訓練をしたり。

中でも印象的だったのは、工場を狙って飛んでくる米軍機の話し。
戦闘機の飛行音に担任の先生が「作業やめろ!今すぐ森へ逃げろー!」と号令かけてみんなで先生の示す森に逃げ、「伏せろー!」の合図で伏せる。
指導されていた伏せ方は親指を耳に入れて鼓膜を守り、残りの指で目を押さえ口を開ける。
この伏せ方は爆風で鼓膜がやぶれ、目玉が飛び出るのを防ぐため。
肘で地面と胴体を少し浮かす。じゃないと内臓が地面からくる波動でやられる。
耳を塞いでいても爆撃音や機銃の音はすさまじく、地響きが身体にも轟く。
戦闘機が飛び去ったあと、そっと顔を上げると、少し離れたところで同じように伏せてたクラスメイトと目が合ってホッとして笑顔を交わす。
他のクラスで逃げ遅れたり、やはり森に逃げたが機銃で撃ち殺された子が何人もいたり。
そんなことが何回も続いたそうだ。
父の担任の先生は戦闘機が飛んでくる向きなどを見て、逃げる森の方向を示したり、最後尾で伏せるタイミングなどの号令をかけていたから、「今生きているのは先生のおかげだ」と言っていた。
それでも学徒出陣で戦地へ向かう日も近いと思っていたが、8月15日の玉音放送で敗戦に涙したと語っていた。
私は中学生のときにこの話しを初めて聴き、父が戦地へ行く心の準備をせざるを得なかったことにぞっとした。

その他にも焼け野原の東京、亡くなられた市民のご遺体をまとめて荼毘に伏す(もちろん現代の火葬場でするのとは訳が違う)、身近な人々が死んでしまうことなどを話してくれた。

私自身、現在は過去の戦争に関する資料を読み、ドキュメントを観るようになった。
ちゃんと知っておきたい。

今も世界で争いが絶えない。
掲げる理想や目的が自国のためだけなのだろうか?
他国の憲法ってどうなっているのだろうと興味がある。

最後に初めて読んだとき感動したとある国の理想と目的を記した文章の一部を書き出します。

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◯◯国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。
われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。
われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる。

◯◯国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓う。
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良い文章だなぁと思う。
人は理想と目的を目指すから成長し、その存在感が増す。
掲げた理想や目的を見失えば、迷走する。
だから立ち返る理想と目的があることってとても大事。

すぐにわかった人もいると思いますが、
◯◯のところは日本です。
日本国憲法の序文。後半部分です。
旧仮名遣いをちょっと直しています。

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