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リストカットシンデレラ14

割引あり

病室

2月8日、雪じいちゃんの命日。
年が明けて元旦。救急車を呼んだ。
ばぁちゃんが慌てて私の部屋に来た。
「果理!!じいさんがどうかしちゃったよ!」
私は急いでじいちゃんの所に行った。
「じいちゃん!じいちゃん!!」
目が開いてるのに返事がない。微かな呼吸。
手を触ったら冷たかった。
ばぁちゃんはオロオロしながら父に電話。救急車を呼ぶように言われて急いで電話する。ばぁちゃんは慌てててパニック状態。
「ばぁちゃん!ばぁちゃん!!」
「あ?!」
「落ち着いてよ」
「・・・そうだな」
私はじいちゃんに何度も呼びかけた。もうダメかもしれない、そう思った。ばぁちゃんも覚悟していたらしい。
親戚中が病院に集まった。でも手当てして少しすると、じいちゃんは目をパチパチさせて回復した。あーよかった。私もばぁちゃんもホッとした。
じいちゃんは、いつも茶の間の同じところに座って煙草を吸っていた。ずっと私が生まれた時からそこに座っていた。夕食の時、私もばぁちゃんもそこには座らなかった。
そこはじいちゃんの席。たいして口もきかないけどいないと家の中がどこかスースーして、変な感じだ。
私はできるだけじいちゃんに会いに行った。休みの日は必ず叔母さんと従姉妹たちと一緒に病院に行った。じいちゃんはもともと声が大きいけど耳が遠くなってさらにデカくなった。
しかも、何を言ってるのかよくわからない。ほとんど聞こえてなかったんだと思う。でも、ばぁちゃんだけは、じいちゃんが何を言ってるか理解できていた。さすが夫婦だと思った。
学生の頃は保健室とか病院が好きだった。単純にサボれるから。
でも今は大嫌い。熱が40度近く出ても、自力で治す。
じいちゃんの病室は個室でこんな所にいたら余計病気になりそうだった。

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