【後編】SUNABACO八代滞在記 ~熊本県八代市で大人の棚卸し~
2022年7月8日
《SUNABACO八代 3日目》 トークイベント
いよいよトークイベントが始まった。会場と配信合わせて70名以上が聞いてくださっている。不思議と、緊張はない。
なかまこさん(@nakamakoko)が進行をしてくれるので、僕は振られたことに応えるだけだ。最初は少し戸惑ったものの、すぐに呼吸と言うか、タイミングがわかってくる。どんどん話しやすくなってくる。
楽しく話をさせていただいていたら、あっという間に90分が経過していた。そんなに話していたなんて信じられない。もっと喋りたい気分だ。
それ程なかまこさんのモデレーターとしての能力は高いのだと痛感した。僕は、本当にすごい方と仕事をさせたもらったのだ。果たして僕は担いを果たせたのか?報恩できたのか?
その後は2階に上がって打ち上げ。なかまこさんがバーカウンターの内側に入ってくださいと言う。講師がカウンターに立って、聞いてくれた皆さんと交流する形を理想としているとのことだった。
確かにこれは講師サイドとしてもありがたい。感想も聞けるし、何しろ沢山の方と交流できる。願ったりかなったりだ。
その後、二次会としてむらしゅうさん(@Murashu_5919)に近所の名店に連れて行っていただく。地元の方が〆に行く店とのこと。そういうのは絶対に行きたい。
連れて行っていただいたのは、SUNABACO八代からほど近い「小麦」という居酒屋だった。店名がナゾであるが、大変にただごとでないオーラを纏った店である。写真を取り忘れたので是非リンク先で確認していただきたい。
この店、メニューがない。何が食えるかは一見さんはわからないという大変ロックなシステムである。
だが、こちらにはむらしゅうさんがいる。心配ない。慣れた様子で注文してくださる。黙って見守る。
色々出てきたが、残念ながら写真を撮ったのは以下の二品。どちらもとても美味しかった! 八代の甘い醤油と海産物はとにかく合う。ビールが進むけしからん味である。ただしメニューがないため料理名は不明。次に来た時に再度注文する難易度が高いシステムである。ディープなのである。
そうこうしているうちに午前様になっている。むらしゅうさんにお礼を申し上げてSUNABACO八代に戻る。シャワーを浴び、ベッドにダイブする。心地よい疲労感に包まれている。
明日はいよいよ最終日だ。
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2022年7月9日
《SUNABACO八代 最終日》
本日14時50分の熊本空港発の飛行機で帰郷しなければならない。
しかし、サイクリングへ行く。
はあ?
実は昨夜、サイコパスサイクリスト(通称PC)とこタケキさん(@takeki09)に「明日の午前中、サイクリングに行きませんか?」と誘われていたのだ。
僕が明日帰ると知っていてのこのムーブ。なかなかのものである。
だが、この旅は断らないと決めている。即OKする。
OKした理由はサイコパスが怖いからだけではない(失礼)。タケキさんはこの八代市にサイクルツーリズムを興そうとされている。
彼は京都に一時在住しており、自転車にハマっていたが、故郷の八代に帰ってみると誰も自転車に乗っていない。八代には多くの風光明媚な場所があるのにもったいない…。
そんな想いと、SUNABACOの「地域課題は地域で解決する。それが真のスマートシティ」とのビジョンが一致し、現在サイクルツーリズムの実現に向けて鋭意活動中なのである。
見上げた男である。
彼は市役所の職員ではない。いち会社員である。実際にサイクルツーリズムが定着しても、彼に具体的金銭的なベネフィットはないだろう。あったとしても割に合うものではない。
しかし、そこに地域の可能性があり、地域の発展に繋がるのであればトライしたい。そして実際に事をおこしてしまう。
こういう市民が、地域を具体的に支えていくのだ。
つくづくそう感じた。だから快くサイクリングに参加したのだ。
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久々のロードバイクである。ちょっと怖かったのでビンディングペダルは勘弁してもらった。ヘタレのフラットペダルである。
スタートするとしばらく町中の道路。そして幹線道路へ入る。ここら辺は特段語ることはない。何の変哲もない道である。
本日の目的地は日奈久温泉。八代の温泉郷である。
昔は下駄の音で寝られなかったほどの盛況だったようだが、今はその面影を残すばかりである(とのこと)。とは言え行ってみたかったので僕にとっては渡りに船のコースである。
高速道路と並走する道に入る。ここら辺から交通量も減り、景色が楽しめるようになる。田園と山々。故郷と似ているようでどこか違う景色。わずかな違いを探すのもとても楽しい。自転車速度で地域を感じるのは最高だ。
「ここらへんからウチの農場が近いんです」とやつしろサニーサイドファームの桑原健太くん(@KXtreme6421)が教えてくれる。彼は元銀行員であるが、退職して農家をやっている。そして晩白柚(ばんぺいゆ)を育てている。
晩白柚。
八代市に来て初めて知った果物である。
晩白柚とは、簡単に言えばドでかい柑橘である。僕はまだ現物を見ていないが、下の写真を見た時、最初こどもがビーチボールで遊んでいるのかと思った。が、なんとこれが晩白柚である。世界最大の柑橘とのこと。
実は、初日のBBQでこの晩白柚をいただいていた。ナリからして大味を予想するがいい意味で裏切られる。酸味は少なくほのかに甘い。イチゴでも酸っぱく感じられる僕でも食べられるほどの酸味であり、とても上品な味である。後引く美味しさである。いっぱつで気に入った。
すぐにでも買って帰りたいが、冬に収穫される果物とのことで断念した。今冬に必ず送ってもらおうと決意する。家族の驚く顔がぜひ見たい。
桑原夫妻は、先日クラウドファンディングを成功させるなど意欲的な人物である。また奥様である茜さんはnoteで婚活について連載されており、こちらも必読である。
桑原夫妻もまた、地域を良くしたいと願う人物である。そしてそんな人たちがSUNABACO八代に集まってくる。
またしても、またしても「場」の力をまざまざと見せつけられる。だんだん羨ましくなってくる。
日奈久温泉に到着する。距離的に程よく、サイクリングとして問題ないと感じる。
温泉郷の裏路地を通る。前評判通り確かに寂れた雰囲気はあるものの、風情を感じられる場所である。嫌いでない。好き。
日奈久温泉で最も有名な旅館「金波楼」へ案内していただく。それどころか、中を見学してもよいという話になった。マジか。お言葉に甘えて汗だくなのにズカズカ入る。
玄関の向こう側。大きな板の床がピカピカに磨かれて水面のように庭の緑を反射している。磨き上げられた床板から、否応なく歴史を感じる。通る風が大変気持ちいい。ここで本でも読んだら最高だなと思う。大変良いものを見せていただいた。
日奈久温泉を離れ、復路を行く。
今度は田園の中、そして海沿いを走っていく。
前日の夜が豪雨だったせいか海・川ともに濁っていたものの、天気は最高であり大変気持ちいい。海の向こうには島々が見える。途中には大変雰囲気のある水島神社があるが、時間の都合上スキップ。
サイクリングはやはり良い。その土地の景色、空気、季節、匂い、風、温度、生活、歴史、すべてがダイレクトに感じられる。車ではこうはいかない。
車では「通過」でしかない時間が、サイクリングでは「体験」に変わる。
八代市は中編でも触れたが、海と山の距離が近い地形である。
自転車は山岳も大変面白く、そういう意味では八代市は多くのサイクリングコースが取れるだろう。今回はいかなかったが湾岸の商業港もとても楽しそうである。くまモンポート八代なんか絶対に行きたくなる。
無事、SUNABACO八代に帰還する。
遊びのようで遊びではなく、八代サイクルツーリズムの実証実験のつもりで参加したので、タケキさんにしっかりとフィードバックする。こういうのは遠慮なくガチにやるのが礼儀である。全力でフードバックした。
時間がないのですぐシャワーを浴びて下に降りる。するとなかまこさん達が「キューバサンド」を作ってくださっていた。
キューバサンドとは、バターかオイルで焼いたバゲット(バタール?)に具材を挟み、上からプレスしたサンドイッチである。これが本当においしい。ガスパチョも最高である。
なかまこさん曰く『ただサイクリングするだけでなく、その後の食事、入浴、焚火、BBQ等までセットして初めてツーリズムとして完成する』とのことである。
確かにサイクリングだけでは物足りない。「体験し尽くす」ことの重要さを身をもって体験したからこそ、とても納得できてしまう。
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いよいよ、別れの時である。
もっとしっかりとお別れの挨拶をしたかったが、時間がない。簡単なお礼の言葉を残して去ることになった。
熊本空港まではなかまこさんとカリンさん(@CarinWaka21)に送っていただいた。最後までお世話になりっぱなしである。
家に到着する。4日ぶりの我が家。家族への挨拶もそこそこにnoteを書き始める。どうしても今書きたくなって、お礼の手紙としてのnoteを書いた。
これにて、僕の「人生を変える4日間」は終わりとなった。
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なかまこさんはこの旅行の中で「大人の棚卸し」という言葉をよく使っていた。
大人は色々抱えて疲れている。一年に一回でもいいから荷物を下ろし、客観的に自分の背負っているものを点検し、何を選択していくのかをフラットな心で見つめるべきである。
僕は「大人の棚卸し」をそう解釈した。
そのためには、日常から切り離された空間と、非日常を体験することが必要である。
そのためのBBQであり、川遊びであり、キャニオニングであり、イベントであり、地元の店巡りであり、サイクリングなのだ。
ただのエンタメではない。「魂に届く」ように計算されたアクティビティ。
そんなことを、この八代市にてSUNABACOは実現しようとしている。
そして、意欲ある八代市民が、なにより八代市が、そのビジョンに共鳴している。
「スマートシティとは、地元の人が地元の課題を解決できる状態になること」と、なかまこさんは喝破した。
僕が八代市で感じたのは、その胎動である。
これからは困難な時代である。悲観的すぎるかもしれないが、明るい未来への材料はとても乏しい。
だから、これから「大人の棚卸し」が必要な人は増えるだろう。僕がそうであったように。
休みが取りやすい時代になっている。でも、日常の範囲内では自分の客観化は難しい。それは至難の業である。
外部の力を借りよう。自分だけでやるのはいささかシンドイ。
PCとスマホもって、SUNABACO八代に来るだけで、きっと何かが見えるだろう。
ただし、あなたが「見たい」と思わなければだめだ。その意志がなければ何も見えてはこない。
これまでのバカンスとは違う、「大人の棚卸し」のためのワーケーション。
そのための仕組みが、八代市には整いつつある。
あなたも、八代市に行ってみませんか?
僕は、きっとまた行くことになるだろう。
ありがとうSUNABACO八代。ありがとう八代市。
皆様の進む未来が、黄金に染まりますように。
《終》
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