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薬のやめ時を延期しない薬剤師になる



長い間、複数の薬を飲んでいる高齢の患者さんが
その人らしい人生の最期を迎えるために
調剤薬局薬剤師の私がしたいことが見つかった。


高齢の患者さん達から時々投げかけられる質問がある。

「もう何年も薬を飲んでいるけど、このままでいいのかな」
「こんなに何種類も飲んで、大丈夫なのかな」


こういった類の質問に対して

「先生の言う通りに服薬しておいた方がいいですね」

私は開口一番、そう伝えることだけで精一杯だった。


理由は様々ある。

処方医の方針に背くことを言ってしまうかもしれない。
そんな重大な相談に応えられるほどの知識がない。
この手の話は時間がかかり、待合室で待つ人たちを困らせるかもしれない。

どんな言い方をすれば、手短に納得して服薬を継続してもらえるか
ということしか考えることができなかった。


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しかし、上記の本を読んで、患者さんの価値観を、医療が無視してしまっている現実もあることを知り、
私もその一翼となってしまっていたかもしれないと気付いた。

実は、2年半調剤薬局に勤務して、なんとなく感じていたことがある。


それは、複数の薬を飲み続けることが、本当に患者さんの幸福につながっていくのか、という疑問。

その疑問の答えが、見つかった。

薬はノーリスクではない。
その大小には個人差があるけれど、大きく出てしまうこともあるだろう。

そうなった場合、薬を飲み始めた時の症状は改善されなくても、
薬を飲まない方が、最期まで自分らしく生きることができる、
という結果が待っているかもしれない。

また、毎日薬を飲む動作や、薬を管理することも、高齢になる程、大変になる。


その時間、労力を使って、他にできる楽しいことがあるかもしれない。


薬を飲むかどうか、続けるかどうかは、人生の大きな選択の1つになる。
医療従事者に言われるがまま、服薬を続けるのは、あまりにももったいない。

そこで今後、まだまだお尻の青い薬剤師の私が、調剤薬局でできることを考えてみた。

これからは、
「どうしてそう思ったんですか?」
と、患者さんの本当の気持ちを引き出せるような質問をすることから始めてみたい。

服薬について真剣に考える、その入り口にいる患者さんの、
せっかくの機会を無駄にしないよう、
考えを深められるきっかけになる言葉かけを工夫する。


生きる幸福、そして息を引き取るときの満足感につながる、
患者さんにとってベストな薬の数、種類を、患者さん自身が納得して決める。


服薬の継続、数を決めるのは、お医者さんでも、薬剤師でもない。
患者さん本人であってほしい。


私たち医療従事者にできることは、患者さんが自分で考えるため、決めるための材料を提供することだろう。

それは、薬に関する情報を分かりやすく、良い面も悪い面も、身近に感じられるように伝えること、
薬に関係がなくても、幸福に生きる権利があるという自覚を持ってもらえるような言葉かけ、主にそれらがなりうる。

私は、医療の押し付けではなく、相手が本当の意味での幸福に近づく手助けとなれる、医療従事者でありたい。

そうして減薬が進んだ結果、薬局業界、製薬業界が経済的に苦しくなったとしても、
それはまたその時、誰かの幸福のために頭をひねれば、どうにかなるだろう。
そのくらいの力量は、私たちにはあるはずだ。

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