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植物に聞いてみた ~ パンジー ~


私 :こんにちは。パンジーさん。初めまして。植物に取材する番組をやってます。よろしくお願いいたします。

 

パンジー :ああ、マンリョウさんが言っていた、植物に話しかける頭のおかしな人っ!

 

私: 相変わらずな言われようだな(苦笑)

 

パンジー:えー? マンリョウさん、あなたの事、「病気で社会貢献できてないって、ウジウジ気に病んでる暗い人」って、言ってたけど、そっちの言い方の方が良かったですかあ?

 

私: パンジーさんまで(汗)。なんだか……包丁で胸をブスブス刺されてるような感じなんですけど……

それはともかく。マンリョウさんが、「最初は、私よりも、もっと名前が売れた植物に取材する方がいいんじゃない?」って言ってくれて、パンジーさんを紹介してくれました。冬に花が咲く素敵な花だし。 

 

パンジー :由緒正しいマンリョウさんの推薦(すいせん)なんて、光栄です! マンリョウ姐さんは、いい方ですよね!

 

私 :わかります。チャキチャキしてて、うっ! と来るようなことを言う時があるけど、細やかな優しさや気遣いを感じました。

 

パンジー :マンリョウさん強いけど優しいから!

 

パンジー:そうですね。見知らぬ土地で大繁殖とか。でも、パンジーさんも強いじゃないですか。珍しく雪が降った時、ほかの植物は枯れたのに、パンジーさんは、枯れてなくてびっくりしました。そうでなくても、冬の花が少ない時期は、本当に、パンジーさんに癒されています。

 

パンジー:そんなこと言ってくれて、嬉しい! 私たち高山のスミレの血が入ってるから、寒さには結構強いんだ! 暑さには、めっちゃ弱いけどね!

 

私: そもそもパンジーさんは、どこが故郷なんですか?

 

パンジー: わかんない!

 

私 :わからない?

 

パンジー :ヨーロッパのサンシキスミレとか中近東や中央アジアのスミレ、とにかくいろんなスミレを、北欧の人だったり、イギリス人、スコットランド人が、いろいろ掛け合わせて私たちができたの。

 

私 :そういうことか。パンジーさん、多国籍のルーツを持ってるんですね……

 

パンジー :うん!

 

私: ところで、あれ、どうしたらいいのかな。

 

パンジー: 何?

 

私: 冬は鳥がパンジーの花びらを齧ってしまって、ほぼ花が無くなってしまう時があって。野菜みたいにネットかけたら、お花が見えなくなってしまうし。

 

パンジー: それは……鳥さんに文句言ってよ!(笑)

 

私 :すみません……

 

パンジー :糸を張る方法もあるけどね。

 

私: やってみたけど、うまくいかなくて。透明な糸や黄色い糸や、いろいろやってみたんだけど。

 

パンジー :農家の人にとっても、鳥さんは、手ごわいみたいだね! 

ある種の黄色は、鳥の視覚を撹乱(かくらん)するっていう先生がいて、カラス用に黄色いゴミ袋とか。鳥を防ぐ黄色い糸とかいろいろ開発したけど、いろんな状況や鳥の種類があるから、完璧な方法は無いかも! 温室を作って私をまるごと入れてくれると、すっごく嬉しいかも(笑)。

 

私: お、温室ですか……庶民には、ちょっと……

 

パンジー :イギリスで安い鉄が生産されるようになってから、温室がさかんに作られて、品種改良とか、もっとされて、私たち今の状態になったの。温室! 温室!

 

私 :大英帝国と私を一緒にしないでください……

あ、そういえば、パンジーさん、ポツンと、空き地に咲いてたり、アスファルトの割れ目で咲いていたりするんですけど、あれは、どうしてですか?

 野生のスミレじゃなくて、確かにパンジーの仲間で、そういうことがあります。普通は花壇にあるものが。それがなんで、こぼれ種でも、こんな変なところに生えてるんだろう? っていうことがあって。

 

パンジー: 野生のスミレさんも、アスファルトの割れ目とかで生えてますよね! かっこいいなあ。憧れる~! シンプルだけど、かわいくて強い! ナポレオンや太陽王にまで愛されてた!

 

私 :ちょっと。え? ナポレオン? 太陽王? 太陽王って、フランスの王様のことですか?

 

パンジー そうそう。ナポレオンは、ジョセフィーヌさんにスミレを贈っていたし、ルイ14世もスミレが大好きだったんだって。

 

私: どっちも大英雄ですよね。もっと大きくて、派手な植物を選びそうです。

 

パンジー :そうでしょ! なんか、野心だらけの人たちだけど、ちょっと見直すー! まあ、でも、あの人たちは、繁栄の中で、いろんなものを見過ぎたのかもしれないね!(笑)。

 

私 :あはは。あの、パンジーさん 話を戻していいですか? 離れた場所に生えたり、小さい隙間に生えたりするのは、どういう……

 

パンジー :あ、ごめんなさい。野生にいるスミレさんと同じことなの。

 

私: え?

 

パンジー :私たちは、アリさんが好きな匂いがするものを種にくっつけてる。アリさんは、それが欲しくて種ごと運ぼうとするんだ。アリさんは、細い(ほそい)隙間にも入っていくから。

 

私: 蜂が花粉を運ぶっていうのは聞いたことあったけど、アリに種を運ばせてるんですか!

 

パンジー :そうそう。種を弾き飛ばす仕組みもあるんだけど、それ以上に広がりたいから。

 

私: だから、遠い場所に生えたり、変な隙間から生える事があるのか。そういうことなのか……

 

パンジー :単純にほかの植物と競争をすると、ちょっとシビアで……アスファルトの隙間とかだと、かなり有利。ほかの植物が入り込みにくいし、舗装(ほそう)があると、土の乾燥がゆっくりだから。

 

私: 隙間に生えて微笑ましいって思ってたけど、ちゃんと有利な場所を押さえてるんですね……

 

パンジー :しおらしく生きてたんじゃ、生き残れない! 植物の中にもパワーファイターはたくさんいるから、単純には勝てない。美しさや匂いで、人間だって、アリだって、なんだって利用する! 負けない! 生き残るって、そういうことでしょ?

あ、そんな顔して! 私のこと嫌いになった? 

 

私: いや、強くて賢い、しっかり生きてるんだなって、感動してたんです。

 

パンジー: なんか、その顔は、しっかり生きてるのに比べて、自分は……とか思ってないですかあ? 

いつも、元気印ではいられないのはわかるけど、あなたは、もっとずうずうしくてもいいと思う。

病気で、社会復帰できてなくて、って思ってるみたいだけど、随分、変わったやり方で、私たちの魅力を伝えてくれてるじゃないですかあ!

 

私: パンジーさん……(涙)

 

パンジー: あー泣かせちゃった! 私、罪な女! (笑)

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