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植物に聞いてみた「マンリョウ」(シナリオ)

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 難病になり人生がボロボロになっていた「私」。あるきっかけで、なぜか植物と話せるようになる。彼は、個性豊かな植物に、その生き様を教えられて、それをヒントにしながら絶望していた彼は少しずつ、変わっていく。

私: マンリョウさん。あなたを、インタビューしたいのですけど、いいですか?

 

マンリョウ: いいですけど、どうしたの? 植物に話しかけたりして、頭、おかしくなった?

 

私: いやいやいやいや。「植物に取材する話って、音声配信で需要があるでしょうか」って、先輩に聞いたんです。「自分は聞いたことないから、ありじゃないかと思う」って言ってくれました。それと、登録している所からお題を頂いたんですよ。せっかくの機会だから、植物に取材してみようと思いまして。

 

マンリョウ: どんなお題?

 

私: 今年のうちにやりたいこと。

 

マンリョウ: 別に取材は今年でなくてもいいんじゃない?

 

私: いやいやいやいや。マンリョウさんたちは、正月の縁起物として年末に園芸店に並ぶものです。下手すると、売り切れてしまう。だから、今年のうちじゃないと。

 

マンリョウ: ふーん それで、私に何を聞きたいの?

 

私: その前に、お礼とお詫びをしたいのです。

 

マンリョウ: 私、何かしたっけ?

 

私: いや、マンリョウさんのお仲間を去年、購入したんです。

私は、当時、病気で、とっても辛かった。ペットボトルも持てないくらいだったのが、自転車に乗ったり、買い物ができるようになった。ありがたいことです。しかし、依然として、全身が滅茶苦茶痛くて、物凄い疲れがあって、生きてるのが、あまりにしんどかった。

素早さ、力強、正確さ、持久力。それらの連係。つまりタイミング合わせ。見た感じ普通に見えるのですが、そういった事がてんで、今の私は、健康な人についていけないレベルなんです。それは辛い。前提とするものが違うと、分かち合えるものが見つけにくい。そういうものが失われると、居場所を作るのが、とても難しい。だから、いい歳して、何ができるか、いろんな事を試してるんですけどね。死んだら終わりだから。ああ、話がくどくなってすみませんね。

未来への不安もあったけど、とにかく24時間営業で体が激痛。心身ともに休まる時が無い。

何をして耐えたらいいだろうって、考えました。そんな時、マンリョウさんの仲間に出会いました。それで、購入したのです。

パチンコ玉くらいの赤い実が、ニ十~三十個くらいついていた。凄く生命力を感じました。見ていても温かいものを感じたし、実に直接触ることもできた。このくらいの小さな鉢植えの木だったら、持ってかえって育てられるかもしれない。そう思った。

それで、二か月くらい、赤い実に励まされながら過ごしました。しかし、世話が悪くて、枯らしてしまいました。

 

マンリョウ: あらあら。でも……それは、仕方ないんじゃない? あなた病気だったんでしょう?

 

私: 水やりがどうしてもできないときがあって。いや……育てると決めたからには、ちゃんとしないと。

 

マンリョウ: ありがとう。でも、気持ちは嬉しいんだけどさあ、さっきから聞いてたら、そんな細かい事を気に病むから、病気になるのよ(笑)

 

私: マンリョウさん……結構きついなあ(笑)

 

マンリョウ: うふふ。私たち、葉っぱに微生物飼ってて、窒素を蓄えるから、すぐ枯れるほど弱くは無いんだけどね。

 

私: そうみたいですね。地植えするのが、一番いいのだけど、そうすると、そばで見てられないから、窓辺に置いて、水切れさせてしまった。

 

マンリョウ: 自生している仲間は、林の少し陰、湿っている所に住んでいるからねえ。

 

私: そうなんですか。お店でしか見た事ないけど。

 

マンリョウ: 当たり前だけど、もともとは、私たちも野生で生きていた。それを、昔の人たちが……日本だと江戸時代くらい? 実が大きくなるように改良したりして、お店で売って広めてる。海外にまで仲間が進出してるみたいね。

 

私: え? マンリョウが海外に?

 

マンリョウ: フロリダだったかしら。私たち有害植物に指定されているんじゃなかったっけ。

 

私: それはどういう状況ですか……?

 

マンリョウ: 現地の植物に深刻な打撃を与えるほど、マンリョウだらけになっている場所もあるそうよ。

 

私: えええ……?

 

マンリョウ: 私たちの中に、そんな広範囲で脅威になるほどの力があるなんて、私たちは自分でも知らなかった。私たちは、さっき言った飼ってる微生物のお陰で発芽する力は確かに強い。でも、通常は、私たち、そんな増え方しないわ。詳しい事はわからないけど、私たちが異常な繁殖をしないような土の中の微生物のバランスがあるんじゃないかって。フロリダには、それが無かったんじゃないかっていう人もいるわね。

 

私: たくましいというかなんというか……

 

マンリョウ: 勝手に連れて行かれただけなんだけどねえ(笑)

「置かれた場所で咲きなさい」なーんてこと言っていた人もいたけど、私に言わせれば、危険や犠牲はあれど、もっと動いた方が一生を楽しめる気がするわねえ。あなたたちは、私たちを育てて増やしてるつもりだろうけど、逆の見方をすれば、私たちが、人間たちをコントロールして勢力を広げてるとも言えるかも。あらー、やだー 私、黒い事言ってるー。うふふ。まあ、場所が変わると、別にスペシャルな存在じゃなくても、生き方ががらりと変わったりするのよ。

あなたが、変えられる事の中で、人生が、うまく行くことを祈ってるわ。

 

私: マンリョウさん、貴重な、お話、本当に、ありがとうございました。

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