いつか「夫婦」になる日まで

前妻と夫が寝ていたダブルベッドで寝ている。


いきなりなんの告白だ、と思われるかもしれない。

ちなみにそういう性癖がある、という話ではないのですが。


ベッドだけではない。
私は夫が前の結婚生活の際に購入した家に身一つですっぽりと納まった。
正確には服や本など身の回りのものは持ってきたけれど

所有していた家電や家具などはすべて処分した。


こういうときって、他の人はどうしているのかな。
聞いてみたいけどなかなか聞きづらい質問でもある。

前の配偶者との結婚生活で使用していたものは心機一転、全て処分?

もしくは一部処分し購入?

でもまだまだ使えるし、特別使い勝手が悪い、とか趣味に合わない

というものでなければ捨てるには偲びない。


家電や家具を処分するのにも手間とお金がかかる。
家電や家具は買い換えたとして、家本体はどうするの?
家を売ってまた購入する、という作業は家具や家電を処分する以上に

いろいろ大変そうだ。



その話を何人かにしたことがあって、

母親と職場の先輩には

「えっ、信じられない!ありえない!私なら全部捨ててもらって、

一式新しいのを買う。買わないと結婚しない。」

男友達は

「うーん、ベッドそのまま使ってるってなかなか振り切ってんな〜」

親しい女友達には


「ベッドだけでも買い換えたら良かったのでは?」


とそれぞれの感想やご意見をいただいたけれど
私側の人はいなかった、共感は得られませんでした。

まあそりゃそうか。。

新婚生活となると縁起を担ぐ意味もあって、前の結婚生活で使っていたものは処分することのほうが多いのかもしれない。

すっかりあたおか認定されてしまったため、

なんなら布団もそのまま使用していますけどね!キリッ

とは到底言いだせなかった。


ベッドだけ買い換えるというのは、労力もコストも最小限で抑えられるけれど、お付き合いしている期間は普通にそのベッドで寝ていたわけだし、結婚すると決まった途端


「もうこのベッドで寝ることはできないので処分して新しいの買います!」

というのも私の気持ちにしっくりこず。。


もともとお付き合いしている彼氏の元カノへ

嫉妬心とか対抗心といった感情を抱いたことがなかった。

だからそこに対する拒否反応というものがない。
そういう面において潔癖なタイプではないのだ。


終わった関係に嫉妬はしないし、別れた後に交流があったとしても構わない。
浮気する人は元カノとの交流を禁じたところで浮気する。


そんなだから鍋やお皿の類もそのまま使用している。

キッチンは聖域、とこだわりのある人にはこれまた前妻が調理していた

フライパンを振るうなど信じられないかもしれないが、ありがたく使わせてもらっている。

一部古いものは処分し、好きなシリーズで揃えたものもあるけれど。


ここまで書いて気付く。
多分私は家とかインテリアとか、そこにある生活とかに執着がないんだ。


それはできれば
「どこにも根を張りたくない」
という私の根底にある気持ちの現れでもある。


結婚自体、理想とする形や信念があったわけではなく
一度くらいしてみてもいいんじゃないか、と経験値としての意味合いが大きかった。


詳しくはこちら


そんな私がなぜまだ使える生活道具一式全て捨て
新しいものを揃えたい、などと言えようか。

いつでも結婚生活を解消してしまえる方が気楽だと
心のどこかにそんな気持ちがあったことも事実。


まだ使えるものを処分する後ろめたさ、

粗大ゴミの引き取りを依頼する手間、

新しい家具や家電一式を購入する費用。

それらと新生活をはじめる、いわば気分的なものを天秤にかけ

私は自らそのまま使用することを選んだ。


だからいまでも私の家、という感覚はあまりなくて
人の家に遊びに来ている、とかホテルに住んでいる、そんな感じ。


良くも悪くも。

でもそんなこだわりのない私だけれど、一度夫に言われとても腹立たしく

思った一言がある。


「休みの日も外に出かけてばかりで家にいないよね」


一人暮らしの頃から休みの日も家でゆっくりするより

できるだけ外へ出かけたいタイプだった。

それは夫も知っている。


それなのにさらに

「家に愛着がない」というようなことを言われたので、悲しくて悔しい気持ちでいっぱいになってしまった。


「そりゃあ、あなたにとっては全て自分で選んだインテリアで

お気に入りの部屋かもしれないけど、

私にとっては(嫌いではないけど)特別思い入れがあるものではない。

それを愛着がないとか言われても知るかああああああ!」


そこでちゃぶ台をびっくり返した、気持ち的には。

(現実にはひっくり返しも、言葉にもしなかったけれど。)


すべて自分で納得して選んだことだけど、

家具や電化製品を2人で選び、新しい生活、

新婚生活ををはじめるワクワク感を感じたい気持ちが

1ミリくらいはあったのかもしれない、こんな私にも。


何か困難なことがあったときにも、

あのとき2人で選んで始めた新しい日々を思い出して

乗り越えていけるような。


それが私にはない。


「結婚なんかせんかったらよかった」

暗い穴に吸い込まれそうになったとき

不意に思い出し夫が買ってくれたキラキラした婚約指輪をひっぱりだして

しばらく眺めたのち、指に嵌めてみる。


それは生活必需品ではなく、むしろ生活のなかで役に立つ瞬間は一瞬たりともこないものだ。


アクセサリーや装飾品に一切関心のない夫には
正直無駄でしかない出費だったと思うけれど、

見るだけ、と出かけたお店ですっかり一目惚れした

私の気持ちを察して買ってくれた。



非日常を象徴するその美しくも無駄な輝きを見ていると、

もやもやした気持ちやとけどげしい気持ちがすこしずつ

消えていくのを感じる。


私にとってお守りみたいなものだ。




結婚とは生活である。

結婚したことで特別なにか変わるわけじゃない。
結婚したから急に夫婦になれるわけでもない。


毎日おなじような日々を繰り返して

飽きたりつまらなく感じる日もあるけれど、

時々きらりと輝く楽しい時間があれば、

また毎日を愛していけるはず。


そしていつかこの家に愛着を感じて、
結婚て思ってたよりいいものだったなって

思える日が来るといいな。



そうだ、今日は少し模様替えでもしてみようかな。

すこしだけ、私好みの部屋にしてもいいよね?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?