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私の掌編をイケボが再生してくれたから、もう思い残すことはない

質問です。

自分が書いた物語を、朗読してもらった経験はありますか?

例えば3,000字。地文とキャラクターのセリフを織り混ぜ、完成させた掌編を、見知らぬ誰かが一言一句変えずにそのまま読んでくれる。

超美声で。


ゆうべ、私、体験しました。
「読ませてほしいのですが」とDMで打診があり、どうぞと返事をしたのが6日前。clubhouseで公開するというので、とりあえずアカウントを作り、教えてもらったROOMに入りました。ソファでノンアル飲みつつ、野球中継を眺めながら、朗読が始まるのをのんびり待ってたんですよね。

開始から15分後。それまでざっくばらんにトークしていたその人が、しばしの沈黙ののち、落ち着いた低音でゆっくりこう言いました。

「猫野サラ作。ーーーーーー『姫枕』」


(・・・・・・ぎゃーーーーーー!!!!!!)


なにこの声! なにこの抑揚! なにこの艶っぽいイケボは!!!

前段のトークのときから感じてたんだけど、やっぱり私の大好きなあの声優さんに声質が似てる! 低音域で響く声、あふれ出る上品な色気。時速170キロの超高速ストレート球が、私のハートをズバババーン!と直撃です。

息が……息ができんッ……!!

もちろん野球中継なんかそっちのけですよ。冷えたノンアル缶がぬるくなっていくのも構わず、朗読が終わるまでずっと両手で顔を覆っていました。足をバタバタさせながら。

clubhouseに入る前はね、期待値60ぐらいだったの。小羽勝也さんっていうんですけどね、彼がプロのナレーターだということはTwitterのプロフィール欄で知っていたので、整った声で上手に読んでくださるんだろうなあ、とは思ってた。気になる野球の行方もチラ見しながら聞くつもりだったんですよ。ところがどっこい。

朗読が始まった瞬間から60だった期待値は100に跳ね上がり、読み進むごとに加速が止まらず、17分後に終了したときには10,000をゆうに超えてました。もうね、「ちょっと美味しいもの送ったから」と言われてフルーツゼリーを予想してたら、夕張メロン100個届いた感じ。食べきれない。咀嚼しきれない。熟したメロンを全身に塗りたくって富士山の頂上で、

「ごっつ幸せーーーーーーー!!!」

と叫んで警察官から職務質問されたい。それぐらい情緒が乱れました。


あのですね。たぶんまだ伝わりきってないと思うから言うけど、ちょっと想像してみてください。あなたが書いた掌編をね、ものすごい美声のプロが、余白や緩急も計算しながら情感たっぷりに読んでくれるんですよ。地文で「彼女の語尾は震えていた」と書けば、彼女のセリフの語尾を震えながら読んでくれるんです。絶妙なニュアンスで。

小羽さんは、地文を読む声とテンポよく行き来しながら、5人いるキャラクターの声を見事に演じ分け、性別の異なる人物にもなりきってくれました。しかもそれがどれも自然で大変に美しい。

私は文章を書くとき、頭の中で声に出す癖があり、この掌編も自分の声である程度は読んでいました。私なりにイメージしていた音の世界があった。
プロのナレーターが再現する音を聴くとね、私の音の世界なんてティッシュペーパーみたいなもんだとわかりました。情緒も何もない。平坦でぺらっぺら。

小羽さんの作り上げる世界には、あらゆる音があふれていました。登場人物が確かに生きており、奥行きも高さも深さも果てしないほど広かった。自分が書いた話だということをすっかり忘れ、最後の最後まで聞き入ってしまいました。文字通り、悶絶した。

漫画や小説が原作のドラマCDを、何度も繰り返し聞いてきた私です。声の演技が大好きで、小説でも漫画でもいいから、いつか自作をプロの方に読んでもらえる機会があったなら……と長年夢見ていました。


……叶っちゃったよ。

叶っちゃったよ、母さーーーーーん!!!!!


本当に嬉しい。
小羽勝也さんに大感謝です。野球中継見ながら、とか最初思ってて本当にすみません。これからはファンの一人として、小羽さんの声を楽しませていただきます。

と、ここで終わったらただの私の自慢話ですが、そうではないのよ。
あなたの書く掌編も、誰かが朗読してくれる! というお知らせです。

これ。

今井雅子さん原作の「膝枕」。この中に出てくる「AIを搭載した膝枕」をモチーフに派生作品を書くと、読みたいと思った人が朗読してくれる仕組みになっているんです。誰もが書き手になれる。読み手になったっていい。アマプロは問われません。

自作を朗読してもらうという天にも昇るような体験を、ぜひみなさんにも味わってほしい。私の掌編は読まなくていいから、小羽さんの朗読を一度聴いてみてください。

(朗読部分は開始後、15:00〜32:00あたりです)

かなり濃密な17分間になること間違いなし。目を閉じて、小羽さんの創る世界に浸ってください。新しい世界がひらけます。鼻血注意。

私ももう一回聴こう(5回め)。

最後まで読んでくださってありがとうございます。あなたにいいことありますように。