泥船から抜け出すための、3ヵ月の冒険

「あれ？　実は、私ヤバイ？　泥船に乗っているのかも」

2020年初夏。会社でリストラが発表された。
私は会社に残る組。でも、それって本当にセーフ？
港で船を降りそこなって、泥船に取り残されたのかもしれない。

「とりあえず、良かったね」
「そうだね……」
本心ではなくても、そう言うしかない。船を降りた人のことを考えると、そこに不安はあっても乗る船が決まっている自分はマシだ。
「でも、もしものことを考えておいた方が良いのかも」

40代という年齢、スキル不足、世界情勢。
考えれば考えるほど、動き出すタイミングとしては最悪だ。

求人を探しても、資格の学校を探しても、気持ちは落ちていく一方だった。今はこの船の安定を求める方が、良いのかもしれない。
変えたくても変えられない自分に、ほとほと嫌気がさす。

「これってどう思う？」

そんなとき出会ったのがライティング講座だった。
3ヵ月で電子書籍を出すまでを学ぶ講座らしい。

「ちょっと無謀じゃない？」

学校を卒業してから、まったく文章を書いてこなかったのに？
たった3ヵ月で出版なんてできるわけがない。

「会社の人には内緒で。ダメだったら、なかったことにしよう」
「そういえば子どもの頃、作家になりたい、なんて思っていたね」
「そうそう。ダメもとで、やってみない？」

大人の冒険が始まった瞬間。
あのときは、無謀だと思いながらも、どうにかなると思っていたんです。

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「やっぱり無理。もう、ヤダ！　Twitterって必要？　私、人見知りだし。リプなんてできないよ。海外ではフォローするときの挨拶なんて、しないらしいよ。日本もそうなったら良いのに！」

最初の１ヶ月は、愚痴と泣きのオンパレード。
大人の冒険は、やっぱり小説の中だから成り立つのだ。

今まで文章を書くことを習慣にしてこなかった私。140文字でも文章を書く練習になる。分かってる。
リプしないと認知して貰えないのも分かる。
分かってるんだよ。気持ちがついてこないだけで。

「早くもギブアップ？　まあ、諦めが肝心だよね」
そんなことを言われたら、負けず嫌いが顔を出すに決まっている。せめて課題の１つや２つはクリアしたい。

「あのさ。２人ともズレてない？　課題は何だか分かっている？」
そうだった。ツイートやリプ、フォロワーさん数は課題ではない。まずは、ヘッダーやプロフィールを整えよう。
Twitterは、まずは慣れることが目標でも良いじゃないか。

「次の課題は、noteでしょ？　先回りして始めちゃいなよ。他人より時間がかかるんだから。余裕を持ってやらないと、つらくなるよ」

本当のことを言われると、ムカつくんだけど。

　→　→　→

２ヶ月目に突入！
さあ、講座の最終課題、電子書籍について考えよう！

テンションを上げていかないと、ついていけません（泣）
答えが1つじゃないことって苦手なんです。正誤が曖昧なのも苦手。
あー、ダメだ。できない自分も嫌。

一緒に学んでいる仲間は１歩も２歩も先にいて、正直ツライ。
ゼロベースから学ぶ私と、商品や権威性を持った状態で学ぶ人。

「スタート地点が、始めから違っていたでしょ？小学生じゃないんだから、同じ状態からってありえないし。今更だよね」
だから、本当のことは痛いんです。
分かっているから、優しくしてよ。私、褒められて伸びるタイプよ？
ほらほら。褒めて褒めて。ついでに、ぐちゃぐちゃな構成案、どうにかして！

「ねえ。他の人はどうなんだろうね？隣の芝生が青く見えるだけかもよ」

そうなんだよね。年齢も住んでいる場所も、職業だってバラバラで。普通に生活をしていたら、知り合う機会なんてない。なのに、同じ時期に同じ課題で悩んでいる仲間。相談相手として、これ以上の人っていないんじゃない？

「で？どうだったの？zoom会」
「私が誘っても、参加者は数人だと思っていたんだけどね。意外に人が集まったよ。幹事は苦手じゃないしね。協力してくれる人も見つかったし」

本当に意外。もっと意外だったのは、本当に構成が進んだことだと思う。
あんなに先が見えないトンネルに入り込んでいたのが、ウソみたいだ。始めから目の前にあったのに、ヒントだと気づけなかった。
悩んで、探して、進んでも振り出しに戻って、やり直す。そんな時間があったから、ヒラメキの神様が微笑んでくれたのかな？

光は、見えた。

そこからの1ヶ月は、あっという間だったと思う。
材料は揃った。レシピも決まった。あとは料理をするだけ。
初めての料理で、手際は悪いし見た目だって良くない。泥船に乗ったままの料理だから、時間管理も難しかった。

大変だけど、楽しくて充実した時間。
疲れても、周りには仲間がいた。アドバイスをくれる先輩もいた。
幸せな３ヶ月の冒険になったと思う。

１つの冒険が終わった今、私はまた旅に出ようと思っている。
今度も仲間と一緒だ。

仲間も必要だけど。
脳内会議も、まだまだ必要だからね。よろしくね、わたし。

さあ、今度はどこに行く？

最後まで読んで頂きありがとうございます。
ストーリーを書く練習でした💦
結局、登場人物は自分だけというオチ。
オチになっているんだろうか？？？