10月のねこ

生まれ落ちた10月の、乾いた秋の空気と金木犀の香りが好きです。「陽だまりのかけら」とい…

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生まれ落ちた10月の、乾いた秋の空気と金木犀の香りが好きです。「陽だまりのかけら」という場所で毎週エッセイを更新しています。

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    日常の光を集めるメディア。

最近の記事

変わらない過去とイヤホンから流れるラジオのこと

『みなさん、こんばんは。……です。本日は…』 朝起きて仕事に行くとき、いつもの駅まで40分くらい歩いています。 近くに15分くらいで着く駅もあるのですが、夏や雨の日以外はずっと、仕事に行く前のお散歩の時間としてよく歩いています。 ここ最近は金木犀が咲きはじめ、ふわっと香るたびに「うわ…うれしい…」と、大好きな10月がようやくやってきたかと胸を躍らせて。 暖かい日差しと肌を撫でる涼しい風、秋の花は咲いて草の香りがする。これほどに美しい季節のことを、わたしはとても愛していま

    • また会えたね

      これまで書いてきたエッセイを、ふと読み返してみることがあります。 数十日前。数ヶ月前。数年前。 いろんな眠れない夜にたくさんの言葉を綴ってきました。始めた頃は、すぐに書けなくなってしまうのではないかと思っていましたが、いまは数ヶ月単位ながらもなかなかによく続いているものです。 生活の中で、日々の中で、自分で書いた言葉たちのことをどんどん忘れていきます。一緒にいたことは覚えているけれど、なにを話したのか覚えていない記憶みたいに。 ありがたいことに、エッセイをいつも読んでく

      • 冬の光

        わたしは移り変わる季節の中、冬に差す光のことがとても好きです。それは必ずしも目に見える、行き交う人や街並みを照らす光だけではなくて、心の内側に差す光みたいな記憶のこと。 指先まで冷え切るような夜に、コンビニで買ったほかほかのにくまんとか、自販機に並ぶ赤いラベルのついた飲み物たち、この日々にしかない缶に入ったおしることか、なかなか粒の出てこないコーンポタージュとか。 それらはどれも、この真っ暗な世界に薄く光る灯りみたいなもので、もう目に映すことのない過ぎ去った時間のこと。た

        • この星のかけら

          「ツートントン、ツーツー。」 この広い宇宙のなかで、その星の上にいるあなたに、この声が届いているでしょうか。モールス信号を使ってみましたが、意外と通じるかもしれないと思って話しかけています。 子どもの頃から、そういう空想をするのが好きでした。宇宙人はどんな言葉を話すのだろうという楽しい空想もしていましたが、ある時から果てしない宇宙のことを考えては怖くなって眠れなくなり、どこかで「宇宙の果てにはブラックホールがあるらしい」という話を聞いてから、ひと安心したことを覚えています

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          あなたのための星であること

          わたしの住む星には、ほんの少しの美しいものがある。 そう感じたのは、ここ数年のことでした。 自分の星から旅立って、たくさんの誰かが住む星を巡って、自分が何者かさえ忘れてしまったとき、それぞれの星に住む人から、そんな美しさを教えてもらったのです。 カーテン越しに差し込んでくるやわらかい陽の光のことや、淹れたばかりのあたたかい飲み物から立ち上る湯気のこと、それらすべてを感じられること、わたしはそれをとても愛おしく感じるのです。 あの頃のわたしには、冬に吹く風が連れてくる、襟

          あなたのための星であること

          12月31日

          こんにちは、ねこです。 これを書いているのは12月31日、忙しなく働く人たちと年末年始お休みの人たちがゆっくりと行き交う街に、年の終わりらしさを感じています。 みなさんはいかがお過ごしでしょうか。 年末年始もお仕事の人はきっと忙しいでしょうから、無理をしすぎず体に気をつけてくださいね。がんばっていてほんとうにえらいです。 お休みの人はここぞとばかりにたくさん休んでください。「なにもしない」をするように、たくさんゴロゴロしてくださいね。 一年がんばってきたあなたに、ちょっと

          光の中に

          窓から光が差している。 わたしはその光で目を覚ました。 今日はすこし早起きをしたから、朝から湯船に浸かって、電子レンジで温めるパスタソースを、冷凍のうどんにかけるだけの簡単な昼ごはんを食べて、すこしドラマを見て、いつの間にか椅子に座りながら眠っていた。 眠っているうちに進んでいた物語を、とりあえず止めて「うーーーん」と言いながらひとつ伸びをする。 いい天気だからすこし散歩に行こうか、それともこのままあたたかい飲み物を注いで映画でも観ようか、まだ寝ぼけた頭で考える。少なく

          光の中に

          ガラスの瓶に星の砂

          こんにちは、ねこです。 あっという間に11月になりましたね。ここ最近は冬みたいな寒さの日があって、ついつい電気ストーブや毛布を用意してしまいました。 今年ももう60日もないのかと、クリスマスカラーに染まりはじめた街を眺めながら、心にも忙しなさを感じています。 先日、誕生日を迎えた日にパートナーからチェキをプレゼントしてもらいました。綺麗に撮るのがなかなか難しいのだけれど、その不便さがどこか面白くて楽しい。 ファインダーを覗いて「パチリ」とフラッシュと一緒にかわいい音が鳴

          ガラスの瓶に星の砂

          金木犀の香る道を

          こんにちは。ねこです。 とても久しぶりのエッセイになってしまいました。みなさまいかがお過ごしでしょうか。 わたしはというと、この10月で4年間働いていた場所を辞めることにしました。なんだかいい区切りだなと思って、いくつか綴りたいこともあって、久しぶりに言葉たちを打ち込んでいます。 あれは専門学生の、たしか2年生になった頃。 わたしは高校生からずっとアルバイトをしたことがなくて、周りがみんな働いていく焦燥感に駆られて、家の近くにあったパン屋さんに応募したのがきっかけでした。

          金木犀の香る道を

          午後の電車

          晴れの日。 映画を観に行こうと、午後3時発の電車に乗って、空いている席に座る。席が空いているのには相応の理由があって、大抵は車窓から陽が差しているから、首元があつくなる。手にするスマホも反射して、何が写っているのかよく分からない。 わたしは、いつもそれを忘れてそちら側に座ってしまう。座った後「あぁ、そういうことか…」となっているのを悟られまいと、平然とした顔つきでその場所に座り続ける。はやく着かないかな…と思いながら。 最近は、電車の窓がすこし開いているから、風が通って

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          なんでもない日に、ひとかけらの愛を

          なんでもない日に、プレゼントを。なんでもない日を彩るように、花束を。なんでもない日が、特別な今日になるように。なんでもない過去が、何かあった未来を救うように。 そんな風に思って、よくパートナーだったり大切な人に、なんでもない日だけどケーキを買ったり、ちょっとだけいいお菓子を買ったり、好きだと言っていたものを買ったりしてしまいます。 会えたことが何よりうれしくて、それで笑ってもらえたらうれしいななんて。あげすぎるとそれもよくないから、たまーにこっそり買うのが好きです。 会

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          眼前に広がる海原の向こうへ

          こんにちは、ねこです。 約2ヶ月ぶりのエッセイとなってしまいました。待ってくださった方がいたら、なかなか書くことができなくてごめんなさい。 2月の末から3月のはじめ頃、件の流行り病にかかってしまってからというもの、なかなか気分が上がらず、ずっと文字とにらめっこしているような日々でした。もうすっかり元気になり、ようやく書いてやるぞ!という気持ちになれたので、またまっさらな場所に文字を落としています。 さて、ここ最近は春の気候どころか夏の光や風が訪れ、桜もいつの間にか満開にな

          眼前に広がる海原の向こうへ

          ちいさな祈りの数々

          こんにちは、ねこです。 今日は予定があって外に出ているのですが、電車の窓からぽかぽか陽気の中、お家の庭でそれぞれ自由に歩いているおばあちゃんと芝犬を見ました。あのくらいゆったりした日々を過ごしたいものです…。 冬と春の光が入り混じった中、みなさんはいかがお過ごしでしょうか。お仕事の人もお休みの人も、今日もやわらかな日になりますように。お家まで気をつけて帰ってくださいね。 この前、ツイートかなにかで読んだのですが「気をつけて帰ってね」と伝えると、あぶないことに会う確率がす

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          いつだって唱えられる魔法を

          こんにちは、ねこです。 最近は、また雪が降って気温が落ちて、まだしばらく冬なのだなと暖かい日差しを待っています。それと共に花粉も来るので少し気が重いですが…。 もうすぐバレンタインデーですね。仕事先の人に義務で渡さなきゃいけないとか、そういうのは無くなっていいですが、男も女も関係なく好きな人に渡しあえると楽しいなと思います。チョコだけじゃなくて、しょっぱいお菓子とか、嬉しければなんでも。 昨日、パートナーとすこし早めのバレンタインデーをしました。おいしいチョコのパフェを二

          いつだって唱えられる魔法を

          取り留めのない日々の話

          こんばんは、ねこです。 雪が降るような寒さもすこし落ち着き、時折あたたかな春を告げるような陽が、頬に落ちることが多くなってきました。まだ春はすこし先でしょうか。 最近は、なんだかTwitterを見る気もなかなか起きなくて、SNSからすこし離れた日々を送っています。逆を言えば、それだけSNS以外の日々が充実していると言えるのですが、きっとまた少ししたらお布団に入るように戻ると思います。 あの場所は、やさしい人たちとだけ繋がっている、まさに安心するお布団みたいな場所ですから。

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          変わらない今日の日に、おめでとうを。

          こんばんは、ねこです。 あけましておめでとうございます。 2022年もまた、ここでたくさんのエッセイを書いていきます。どうぞよろしくお願いします。 年末年始、みなさんはいかがお過ごしだったでしょうか。お仕事で忙しかった人も、お休みでおうちでゴロゴロした人も、お休みでもお休みじゃないような日々の人もきっと。あたらしい一年のはじまりが、よいものであったことを願っています。 この前、関東でも雪が降りました。少し前に初雪を見ましたが、ちいさな雪だるまの写真がたくさん流れてくるく

          変わらない今日の日に、おめでとうを。