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午後の電車
晴れの日。
映画を観に行こうと、午後3時発の電車に乗って、空いている席に座る。席が空いているのには相応の理由があって、大抵は車窓から陽が差しているから、首元があつくなる。手にするスマホも反射して、何が写っているのかよく分からない。
わたしは、いつもそれを忘れてそちら側に座ってしまう。座った後「あぁ、そういうことか…」となっているのを悟られまいと、平然とした顔つきでその場所に座り続ける。はやく着かないかな…と思いながら。
最近は、電車の窓がすこし開いているから、風が通ってこの季節は気持ちがいい。気持ちばかりにかかっている冷房を、風が運んできてくれる。
近くで赤ちゃんが泣いていて、みんなはそれをそっと見守る。うるさくないよ、という空気をなんとか出せないものかと、とりあえずのほほんとしてみる。
こんな時間のことが、わたしはとても好きです。晴れている休みの日は、あえて予定を午後にずらしたりして。みんながそれぞれ昼寝をしていたり、本を読んでいたり、あたたかい空気のなかぼんやりしていたり、子どもが笑っていたりする、この時間を。
やわらかな陽の差す、午後の電車。
それはこの世の中で、とくに穏やかな世界のように思えます。からだは動いていないのに、いつの間にか目的地に着いている。それぞれが、このやわらかな時間のなかから足を踏み出し、それぞれの世界に帰って行く。
深い海のような自分の世界と、水面が見えるような外の世界との中間、それがきっとこの時間。わたしはここでは何者でもなくて、誰に知られることもない。そんな中層をぷかぷかと浮いているとき、「あぁ、今日は出かけにきてよかったな」と思うのです。
今日はそんなとても些細で、とてもだいすきな時間についてのお話でした。読んでくださってありがとうございます。
では、また。
暑くなってきましたから、どうか体に気をつけてくださいね。
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