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彼女はなぜ勉強するのか

 ずっと本が好きで、同時に勉強も好きだった。わからないことがわかるようになる、その瞬間がたまらなく好きで、高校も数学の点数が悪いのに理系を選んだ。数学は苦手だけど、その論理性を愛した。数学がたくさん勉強したい。微積分をもっとやりたい。だから理系に行った。
 英語は得意だけどずっと嫌いだった。今でもあまり好きではない。英検を受ける友達を眺めて、試験のために勉強するなんて不純だと思っていた。だから英検は受けなかった。
 ただ好きだから、ひたすら勉強した。理科も好きで、特に化学の授業は前のめりで勉強した。美しい数式の世界、理論的に疑問を解決できるその鮮やかな瞬間が訪れたとき、天使が現れて花の風を授けてくれたようなまぼろしを見る。
 きっと、世界中の研究者はみんな天の花が降り注ぐ福音が訪れる瞬間を知っている。教科書に掲載されていないことを、自分で発見したい。学問の神はきっと勝利の月桂冠を授けるのではなく、もっと知に近づけと諭してくれる。受験で勝ち馬に乗れても、学問に勝利はないから。永遠にさまよう研究者という旅人が、知という路傍の花をそっとつみ続けて、鬼籍に入るその瞬間に、ささやかな自分なりの花かんむりを仕上げ、あたまに捧げてそっと眠るのだ。 

 猫野は、そんな一面を持つ物書きです。医学部志望→文転→法学部→文学部→大学院博士課程卒業(西洋文学)と流浪の在野研究者です。

猫野 みずき


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