呪いの臭み #毎週ショートショートnote
「よくここに来ました。皆さんは運がいい」
深夜2時。心霊スポット帰りに怪奇現象に見舞われた4人組が訪れたのは消臭寺。日本で唯一"呪いの臭いを嗅ぎ分けられる"力を持つ和尚がいる寺院。
「あの、実は」
背の高い男が切り出したのを遮り和尚は言う。
「皆まで言わずとも大丈夫。この中の誰かにかかった呪いを祓いましょう」
そう言うと和尚は先の男の臭いを嗅ぐ。
「ぐふっ」
咽せた。
「すみません、出がけに餃子を食べまして」
ニラとニンニクの臭いで呪いが分からない。やむを得ず隣の女性に移る。
「くぁっ。香水きっつ」
和尚は鼻をつまむ。
「ご、ごめんなさい」
続いてさらに隣の男へ。
「むぅ。げほげほ」
咽せるほどの汗の臭い。見れば緊張からか滝のような汗をかいている。
そして最後の女性へ。
「おっ!これは!」
古い線香の香り。これぞ呪いの臭い。
「この女性ですね?」
背の高い男が首を振って言った。
「僕らは3人で心霊スポットに行ったんです。誰が霊かはもう分かってます」
了(409文字)
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