見出し画像

エビを釣って泣いた日

もう30年以上前の話になるのですが、私が住んでいた実家のそばに川があって、夏はそこで釣りをしていました。

釣りといっても本当に釣るのではなくてミミズの代わりに味噌と小麦粉を混ぜて固めたものを餌としていました。

川に糸を垂らしたら餌はすぐに溶けて釣り針から落ちていき、小魚がそれをつついて食べる様子を見て楽しむというのを繰り返すだけです。

それでも魚が寄ってくるので、釣り針がつんつんと振動するのを楽しみながら釣りの時間を楽しんでいました。

そんなある日、いつものように針を垂らしていると、糸がピンと引っ張られる感覚がしました。

初めは川底に引っかかってしまっただろうか?とすごく不安になったのですが、引っ張り上げるとエビのハサミがしっかりと釣り針を掴んでいました。

大きさは子どもの手のひらくらいで、まだ小さいエビでした。

初めての事だったので私は両親に見せようと持ってきていた小さなバケツに水を入れてエビを持ち帰りました。

小さなバケツの中で元気にエビが跳ねるの見た私はとてもエビが可愛くなり、エビを飼おう!そんなことを言ってたと思います。

その日の夕方、晩御飯を食べてお風呂に入った後に明日はエビのための水槽を買ってもらおうかと考えながら、小さなバケツの中を覗き込みました。

するとエビの姿がどこにもなくて驚きのあまり「エビどこ!!」っと叫んでいました。

父が私の叫び声でやってきて「エビは…死んだ」と言ってすぐに「死んだから食べた」と言うのです。

あまりの衝撃に私は父をバカ呼ばわりして暴れまわってました。
(今思うとバカは言い過ぎだと反省しています。)

さんざん泣きじゃくったあと、母が話をしてくれたのですが、動かなったエビを見つけてどうするかと父に相談したそうです。

すると父はおもむろにその動かなくなったエビを手に取って焼いて食べたそうです。

なんとなく、父は私がエビを大事そうにしていたので死んだエビを見せたくなかったのだと思います。エビを食べて見えなくしてしまうことで悲しみが半減するかもしれないと思ったのか…、もう亡くなってしまって聞くことは叶わないですが、そういう優しい父でした。

エビを釣って泣いた日。

終わり。

サポートお願いいたします!!サポートしていただけると日々の励みになり、生きる糧としてめっちゃ頑張れます∩^ω^∩❣️