拙訳 夜船閑話 1

こんにちは、猫ねっこです。

さて、題名の「夜船閑話」とは江戸時代の禅僧、白隠慧鶴師によって記された瞑想、即ち心身修養法に関する書籍です。戦前期(江戸の終わりから)の心身修養法に係る大家が必ずと言っても良い程に引用する、瞑想の奥義(おくぎ)書の一つとでも言えましょう。

あくまでも私の趣味として現代風に意訳してみようかと存じます。私は文語文の読み下しに関して専ら我流故、固有の言い回しや語句こそ私の解りうる範囲で現代風に改め、詳細な解説などは明治期に出版された”詳注 夜船閑話“に譲ります。尤も、誤訳など多々あると存じますが雰囲気程度に楽しんで頂けたら幸甚です。
最後まで訳せるか自信はないのですが、気長に取り組んでみます。。。


--以下本文--

夜船閑話

※やせんかんな、と読みます。夜の渡し船での他愛のない雑談という意味でしょうか。

夜船閑話序
窮乏庵主饑凍選

※”序“ とは前書きのこと、
窮乏庵主とは窮乏する庵の主人の意、饑凍とは白隠禅師のお弟子さんのペンネーム、選とは撰述のことでしょう。

寶暦七年の春、京都の書店松月堂のなんとかと言う者がはるばる急ぎの手紙を携えて我らが鵠林(白隠禅師の号)師匠の近侍(お側に仕える者)に以下申し伝えた。

「先生(白隠禅師の事)の書き留められた草稿の中に夜船閑話という様な名前のものがありますね、その本では精神をいわば統一し気や血行の滞りを除き、畢竟長寿を得る秘訣が述べられ、所謂神や仙人の丹薬(不老不死の薬)の真髄たるものだと聞いております。ですから、この世で道を求める人間はその内容を一目拝見したく、荒地の草木が雨の恵みを希う程に渇望しております。
偶々、幾許かの修行中の禅僧がこっそり書き写した様ですが彼らもそれを大切に秘匿し人に見せようとはしません、いわば珍宝をただただ箱に入れて大切に秘匿する様に。
私が願います事には、貴著を広く上梓しその渇望を癒していただきたいのです。
聞く所、先生は常に他を喜ばせる事をその楽しみとされていると伺います。ですから、上梓の件は他を利する事こそあれば、先生はそれを惜しまれないと拝察します。」

以上を近侍二人が師匠に伝えると、彼は微笑みを浮かべ快諾された。
そこで弟子がその草稿を収めた櫃を開けた所、虫に喰われているものが半数以上であるとわかった。故に弟子らはそれを綺麗に修復、書き改めるに五十数枚となり、それらを封筒に収め京都に送る手筈が整った。
その時に私(饑凍)は他の弟子からいわば年長者故に今回の顛末としての序文を記す事を求められ、それを請けて記している。



--以上本文--

長くなってきましたから今回はここまでにします。

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