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棄てられても めげなかった男

胡ぶへい(こぶへい)

2015年生まれと推定。茶白のハチワレ。

2017年の秋、日比谷公園を放浪中に千代田区の保護団体によって兄弟で捕獲される。

都心にある公園という場所柄や、人間に対しての警戒心がなかったことなどから、人間が外から持ち込んで公園内に棄てていったものと推測された。一時はボランティアさんが構えた網を突き破って逃げたものの、ほどなくして捕獲機に置かれた缶詰の誘惑にあっさり投降したという。

「はーちゃん」と名づけられてボランティアさん宅で過ごした後、2018年2月の譲渡会にて我が家がスカウト。

事前の譲渡猫リストでは「小さく、おとなしそうな」はーちゃんが写っており、期待して会場に向かったのだが、実物のふてぶてしさに面を食らう。ボランティアさんいわく「カメラ技術の勝利」。ちなみに兄弟の「ふーちゃん」も無事、別の里親さんに譲渡され、新しい家の子となった。

三枚目が来るという予感があったので、どんな猫が来ても命名は「胡ぶへい」と決めていた。なお真打に昇格したり名前が「正蔵」になる予定は今のところない。

我が家に来た初日から、激しい夜鳴き。日比谷公園も、猫がたくさんいるボランティアさん宅も、おそらく前にいた家庭もにぎやかな場所だったのだろう。たま胡も警戒心丸出しで声ひとつ上げず、消灯後の静けさに寂しい気持ちを覚えたのかもしれない。

じゃらし大好き、たま胡も大好き(分かりやすい片思い)、そしてテレビも大好きだが、お気に入りは演出が少ない動物系のドキュメント番組。「さわやか自然百景」「ワイルドライフ」「ダーウィンが来た!」の3つは食い入るように見つめている。

食欲は魔神級。フードの好き嫌いなく食べてくれるのはありがたいが、他の猫のごはんまで盗もうとするので、食事はケージの中で取らせている。移動が常に「どちどち」だったので少し減量したほうがいいと思い、食事管理によって現在は適性体重かつ多少シュッとした見た目になっている。


人間に棄てられたのに、それでも人間が大好きで、めげずに愛情を求めてくる。

これが胡ぶへいの「生きたい」というメッセージ。


寒くなる一歩手前で良かった。

放浪の場所が、昼間に人間がたくさんいる公園で良かった。

敷地から車道へと飛び出さなくて良かった。

ひどい仕打ちをされたのに、めげることなく我々人間を信じてくれて、本当に良かった。


胡ぶへいよ。好きなだけ、家でのんびり生きなさい。でもたま胡にマウンティングするのはやめなさいね。


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