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長崎猫童話 夏 八月の黒い子猫
長崎猫童話 夏 八月の黒い子猫
八月十五日。静かに満月が昇る夜。
日が落ちて、やや涼しくなったとはいえ、生ぬるい空気はまだまだ夏のものでした。
長崎は精霊流しの夜でした。国道の歩道側、普段はバスが通る辺りを、曳かれたり押されたりしながら、ゆっくり移動してゆく精霊船。つきそうひとびとが鳴らす、チャンコンチャンコン、という鉦の音と、どーいどーい、というかけ声が響きます。連なるように道を行く船た
長崎猫童話 冬 クリスマスの女の子
長崎猫童話 冬 クリスマスの女の子
クリスマス・イブ。長崎市。
大学生は、冬休みが長いところがいいなあ、なんて思いながら、舞衣は久しぶりのおばあちゃんの家の前に立ちました。
その家は、小さなカフェと画廊も兼ねているので、家をとりまく狭い庭にも、窓から見える部屋の中にも、クリスマスの飾りや灯りがきらきらしていました。
玄関を開ける前に、つい、スマホで写真を撮ってしまいます。あとでSNSにア
長崎猫童話・あるとらねこの物語
長崎猫童話 春
あるとらねこの物語
中島川沿いの、石橋がいくつも並んでいる辺り。
苔むした石橋や、あたりに住んでいるひとたちが育てている緑や花々が美しいその辺りに、きじとらのとら子は住んでいました。
猫が好きなひとたちになでられ、ご飯をもらい、軒下や植木鉢のそばに寝床を用意して貰ったりしながら、気がつくと年をとり、すっかりおばあさんの猫になっていました。
とら子にはたくさんの素
長崎猫童話 夏 八月の黒い子猫
長崎猫童話 夏 八月の黒い子猫
八月十五日夜。静かに満月が昇る夜。
日が落ちて、やや涼しくなったとはいえ、生ぬるい空気はまだまだ夏のものでした。
長崎は精霊流しの夜でした。国道の歩道側、普段はバスが通る辺りを、曳かれたり押されたりしながら、ゆっくり移動してゆく精霊船。つきそうひとびとが鳴らす、チャンコンチャンコン、という鉦の音と、どーいどーい、というかけ声が響きます。連なるように道を行く船