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極東から極西へ19:カミーノ編day16(Castrojeliz〜Fromista)
前回のお話
旅の準備について改めて考えさせられた。
前回
今回は、フロミスタまで。
初っ端から12度の坂を登り18度の坂を下りることになる。
・Castrojeliz〜Itero de la Vega
カストロへリスから次の街までは約9kmある。その内の前半が山登り。街を出て少し下ってから、12度の山を一気に登った。
ほぼ満月なので、とても明るい。最初はライトを点けていたが、要らなくなって途中で消した。
息が白くなるくらい気温は低い。でも中腹くらいまで登ったところで、もう暑くてたまらなくなり、ダウンを脱いだ。
涼しくなったところで振り返ってカストロへリスの写真を撮った。静かで、好きな村だった。
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良い村だったなあ。
そこから一気に山頂まで歩き、水を飲んで一息つく。ところが、汗で手が滑って上手くボトルがバックに入らない。
「ごめん、ザックにボトル、入れてもらえる?」
「勿論!」
一緒のペースで登っていた女の子に頼むと、快くボトルをしまってくれた。
女の子はフランス人でクリスティーンという。法学部を卒業したと言っていた。18度の坂を「私この道好きよ!」と、まるでウサギみたいに軽々降りていく。
暫く一緒に歩いていたのだけれど、私には快適な気温でも、彼女にとって寒かったらしい。平地に辿り着くと、ジャケットを羽織っていた。
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濃い霧のせいで、クリスティーンには寒かった模様。
「ねずみがいるわ。ほらあそこ、巣があるのかも」
「どれ? あ! 本当だね」
なんて言いながら街を目指す。
9km先だから、2時間ちょっとで着くはずだ。
やがて、お日様が顔を出して朝靄が畑や川を包み込む。いつか見たような景色だなあと思いながら、写真を撮った。
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こういう景色、好きだなあ。
イテロ・デ・ラ・ベーガの街は丁度起き出したくらい。放し飼いの犬(スペインに来てからよく見かける)が駆け寄ってきた。
そして、散歩をしているおばあちゃんも、側に来てくれた。多分、何か困ってる? と思ってくれたのだと思う。
フランス人の女の子が、おばあちゃんと流暢にスペイン語で話しをしている。断片的に、カフェ、何時、と聞こえてきたので、多分店が開く時間を聞いているらしい。
「9時だって。あと10分待つ?」
「待ってみようか。珈琲飲みたいな」
教えてくれたおばあちゃんにお礼を言うと、チーズを一欠片ずつくれた。巡礼者さん、という言葉と、トルティージャ含め幾つかの食べ物の単語から、多分持ち合わせがある時に配ってくれているのだろうと察する事が出来た。
「本当に、ありがとうございます!」
「いいのよ。ブエンカミーノ!」
チーズ、大事に食べよう。
ところで珈琲は、機械がまだ十分あったまっていなかったのと、洗浄(前日に洗って、次の日に珈琲を提供する前に何回か流す)が不十分だったのか、ちょい薄い。
でも、カマレラがオープン早々に淹れてくれたのだもの、あったかい珈琲が不味いわけはなかった。
珈琲を飲み終わった後、クリスティーンに思わず言った。
「スペイン語も喋れるんだね!」
「実はスペインの大学に通ってたの」
凄い。
それで資格取ってしまうんだから本当に凄い。
・Itero de la Vega〜Boadilla del Camino
途中、休憩をしたいというクリスティーンと別れて、一人でメセタの大地を歩いた。真っ青な空に鋭い太陽光。
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いつだったか韓国のアレックスが、湿気がないから良く見えるよね、と言っていたけど本当にどこまでも見える。
まるで絵に描いたような……というか、Windowsのような、青なんだよなあ。
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と教えてくれた街の人。巡礼路からは少し外れていた。
途中で自転車の集団に追い抜かれつつ、手を振りつつ次の街を目指した。
ボアディージャの村でアプリの地図を片手にうろうろ(方向音痴)していると、街の人が合ってるよ、と教えてくれた。
街を抜け暫く行くといい感じの水路が。
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乗客が手を振ってくれたので振り返したけれど、ひょっとして我々巡礼者も観光の目玉なのでは、とはっとした。
もらったチーズと、スーパーで買ったパンと洋梨でお腹を満たした。
・Boadilla del Camino〜Fromista
フロミスタには12時に着いてしまった。前日に、ブエンカミーノアプリで評価の良かった宿に並ぶことにする。ドアには、13時30分オープン。〝オスピタレロは働いているから、電話もノックもしないでね〟と書いてある。
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スペイン語と英語のダブル表記。
買ってきた食べ物を齧りつつ日記を書いていると、昨日のアルベルゲで隣同士だった台湾の女の子が。
「ジュースいる?」
「いいの? ありがとう」
なんてやり取りをして、リンゴジュースを頂いた。前にスーパーに行った時3本セットで買いにくかったのだ。
時間になる前に、オスピタレロがひょっこり顔を出した。
「予約してる?」
嫌な予感がする。
台湾の子は予約済みだと言っていた。
「してないです。別のとこに行った方がいいですか?」
「少し待っててね、今、台帳調べるから」
ぎりぎり、最後のベッドをゲットできた。
前の前に一緒の宿だった韓国の元気な男の子、日本人の男の子は一杯と聞いて慌てて公営アルベルゲに向かった。
宿はやっぱり知った顔。
マリンカさん、台湾の女の子、ブルゴスの大聖堂で会った事のある韓国のへリョンさん、カリマさん、後は確かUKの女性(名前きいて!)。
前にログローニョまで一緒に歩いたネザーランドの女性は背が高かったけれど、マリンカさんもやっぱり背が高い。私と同じか、少し大きくて、親近感が湧く。
そしてへリョンさん。多分英語が同じくらいのレベルだし、何より同じアジア圏だしで、一緒のアルベルゲなのがすごく嬉しい。
「また一緒で嬉しいわ」
「私も、嬉しいです」
にこにこ穏やかなマリンカさん。
ほっとする雰囲気のある人だ。
シャワーを浴びて洗濯を済ませてのんびりタイム。皆が各々寛いでいると、猫が入ってきた。
台湾の子のことがすごく気に入ったようで膝に乗っている。写真を撮ったり、じゃらしたりして、和やかな時間を過ごした。後で判明したのだが、この猫はシンバという名前らしい。小さなライオン・キング。
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でもマリンカさんは苦手だった模様。
Sさんから、バルセロナに無事に着いたと連絡が入っていた。良かった。
頼むから無事に日本に辿り着いてほしい。
・パン屋さんで、パンを買う
外は暑く、紫外線も強い。
頂いたチーズとチョコを齧りつつ日記を書いた。
夕方になってから街散策に出かけることにした。マリンカさんとUKの女性が、明日は日曜日だから店が閉まるわ! と言っていたので、私も買い物に行くことにした。
広場の近くのパン屋さんで、翻訳アプリでカンニングしながら、注文した。
「これは、なんですか?」
「チーズとハムと、ツナが入ってるパイよ」
「これをお願いします」
「持って帰る? ここで食べる?」
テイクアウトのスペイン語は分からなかったけれど、ジェスチャーのおかげで、意味は分かった。
「持って帰ります」
アルミホイルに包んでくれた。
「ムチャス グラシアス!(本当にありがとう/カタコトスペイン語)」
「De nada. Gracias(どういたしまして。ありがとね)」
やっぱり、もう少しスペイン語、話せるようになりたいな。
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この後またスーパーに買い物に行ったり、ガイさんやオーストラリアの親子、アメリカ人の自転車カミーノの女性とご飯を食べた。
ソムリエっぽい女性に、「ジュースはありますか?」と訊いたら、幾つか果物の名前を提示された。
「メロコトンってマンゴー?」
「桃のことですよ」
と教えて桃ジュースを注文した。
メロコトンやピミエント(ピーマン)という単語はNHKのスペイン語会話で、エステルさんが教えてくれた言葉。
他にもスーパーに行ったおかげで、ザクロがグラナダ(そういや、グレナデンシロップってザクロのシロップだ)だったり、柿はカキだと知る事ができた。
カヤックや、ボートの話を聴いたりしながら夜が更ける。
解散前に、私が日本から来たと知った自転車の女性が、村上春樹が好きだと教えてくれた。表現が最高なんだって。
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明日で、ドミンゴでドミンゴからもう1週間。
今日も濃い1日だった。
毎日毎日違う事が起きるから、1日がとても長く感じる。
いやいや、日本だって毎日違うことが起きていたはずでしょうと、書きながら自分にツッコミを入れる。
生活に対する姿勢の問題なのか?
分からないけれど、帰ったらもう少し日々を丁寧に過ごそうと思った。
次の話
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