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極東から極西に行くことにした⑨:カミーノ準備編番外。退職準備とセンチメント

前回の粗筋
細々したものの準備を進めた。医者に行っておいた方が良さそうだと言う結論に至った。
上の画像は、スマホがなぜか職場をつくしと認識して表示していたのをスクショしたもの。
なんてメルヘンチック!





・退職願


 そもそも職場が家から遠かったのと、コロナ禍の忙しさで身体がおかしくなった(突発性難聴。今は良くなっている)のと、他にも諸々理由はあるのだが、1月頭に退職を申し出た。可能なら3月か4月に辞めて、1週間くらいゆっくりしてから、また仕事をするつもりだった。この時は、人が育つまで待ってと言われて保留になった。
 ところが、何人か自立して夜勤に入れるようになってもなんの音沙汰もない、再三上司に辞められる時期を尋ねたが、ちゃんとした返事がない。なんの計画も立てられず、ずっとやきもきしていた。
 そして、4月が過ぎ、退職願いを出せたのは5月末のこと。3ヶ月後の8月末に退職と漸く決定。
 既にカミーノを歩く気満々だったので、それまでしっかり稼ぐことにした。


・有給


「常さん、有給申請しました?」
「うん? あー、したよ。流石に辞める時くらい自分の希望で使いたいよねぇ」

 笑い話なのだけれど、私達が所属しているのは、「白いのは白衣だけ」なんてよく言われているくらい、ブラックな職場が多い業界らしい。
 夜勤明けの先輩が次の夜勤入りの人が来るまで委員会や監査の仕事で帰れなかったり、日勤が消灯すぎまでいたりするなんて話は、専門学校の同期と話すと、どこでも日常茶飯事であることが分かる。
 それでも、スタッフ同士の仲が良かったり、患者さんが元気になっていく姿が見れたり、逆に弱っていく姿になんとか力になりたいと思うから、良くも悪くも頑張れてしまうのだ。
 その頑張りの結果、現場で人は足りていると言うことになるのだから、永久に人手不足で切ないものだ。
 
「有休どのくらい残ってました? 私30日以上」
「私この間出て、いくつか消えてMAX40日」
「せめて10日は欲しいですよね。2ヶ月合わせてでもいいから」
「有給ってさ、職場は取る理由を聞いちゃダメだし、基本申請されたら受諾しないといけないもんなんだね」

 今までの人生における有給は、勝手に適当にシフトに撒かれるか、病欠の時に使われるものだった。そもそも事前申請できるものとは知らなかった。

「そうですよー」
「サービス業時代も有給無かったから知らなんだ」
「うわぁ」

 だから、初めて使ってみようと思った。
 全部残った状態で辞めるのは勿体なさすぎる。
 折角もらったのだから、有給まで幻にしたくない。



・労基署


 有給は片手で足りる分しか出なかった。
 でも少しは出たので余り気にしていなかったのだが、Sさんが有給を申請した際にちょっとしたトラブルが起きた。ドン引き案件だったのだが、Sさんは少し表情を変えただけだった。

「つねさーん、労基署行きましょ」
「うん、行こう。後続の為にも有給泣き寝入りは良くないしね」
「いつにしましょう?」

 労基署には、有休やその他相談したいことがあったので、その案件が起きる前からいざとなったら行く予定ではいたのだが。
 こうなったら早い方がいい。
 でも次の休みはXdayである8月2日だ。午前中に歯医者さんを予約したから午後なら空いているけれど、しょぼくれている可能性もある。

「2日が休みなんだけど、歯医者さんの後なんだ。怖いなあ」
「ああ、それは……大丈夫かなあ。じゃあ常さん無事なら行きましょう」
「うん、終わったら連絡する」

 Xday当日。
 虫歯もなく無事に済み、でも危惧した通り、私は口の中をいじられたショックでしょぼくれていた。なんとか午後にSさんと合流し、お昼を食べ、カミーノ前の宿をどうするか軽く確認していざ労基署に出発。

 庁舎の集まる一角、ビルの一室へ。
 着くと親切に対応してくれた。


 結論は、

・有給が取れないなら無理やり取るしか無い。
・もしそれで無理に取った分給料が出なかったら労基署の出番。
・無理に取る際も手製でいいから有給願いを書いてコピーか写真を証拠で取っておくこと

 の、3点。
 上司との話し合いで解決できればベストで、話し合う時に労基署の名前を出しても良いとのこと。
 因みに、パワハラ・モラハラ・マタハラなどのハラスメント相談は同じ労働局の雇用環境・均等室に相談すると良いらしい。

 アドバイスをもらったので、時間を合わせてSさんと今度部長のところへ行くことにした。

 交渉の結果がどうなったかを伝えてほしいと言われたので、交渉が終わったらまた行くことにする。


・珈琲


 帰りに、焙煎珈琲の店に寄った。
 Sさんはアフォガード、私はフラッペ(アイスコーヒーにソフトクリームが残ったもの)を頼んで、外のベンチで食べた。

「一歩前進ですかね」
「だねぇ。ボイスレコーダー買っておくね」

 きっと一筋縄ではいかないだろう。
 「なぜ有給が消化できないのか」答えてもらうためにも多角的に質問を考えて、きちんとリストアップして臨む必要がある。納得が行く答えなら別に揉める気はない。
………待って、なんか似たような作戦、別件で前に立てていなかったっけ。

「それにしても暑いねー。珈琲美味しい」
「本当だ、うまー」

 蝉が鳴いている。背の高い欅の木陰の隙間から、キラキラ陽の光が溢れている。そう言えば、夏だった。
 スペインに蝉はいるだろうか。
 カフェでこんな風に二人で珈琲を飲むことはあるだろうけど。


 泣いても笑っても退職まで1ヶ月を切っている。
 直訴が職場の環境改善に繋がると良いのだが。
 



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