極東から極西に行くことにした⑧:カミーノ準備編・こまごましたギアと、病気対策
前回の粗筋
浮腫と足のマメについて真剣に考えていた。
・液体が問題だ
巡礼をする上で悩んだのが、スタート地点であるサン・ジャン・ピエ・ド・ポー(以下SJPP)までの行き方。そして持ち物のこと。
なんせ、ザックに収まる分の荷物しか持って行けないのだ。季節が変わってしまうので、小さめのスーツケースに秋冬の服と靴は突っ込んでゴールのサンティアゴ・デ・コンポステーラへと送ってしまう予定だけれど、基本はザック一つに入る荷物で生活しなければいけない。
そのザックも、登山で言えば日帰りか、山小屋一泊目安である大きさの30から40リットルという小ささで、なんでもかんでも持っていける訳ではない。
「Sさん、そう言えば買ったザックってさ、大きさどれくらい?」
「えー、なんか30から40リットルらしいんで30の買いました」
ちゃんと調べている安定のSさん。ロールトップ式のものを購入したそう。
彼女は、とある特殊な理由で、アウトドアが趣味という訳ではないのだけれどレインウェア他、外で使えるギアを持っていたりする。
「体重の1/10くらいに荷物纏めないといけないらしくてさ、私だと大体5.5から6kgかなあ」
「私もそのくらいですねー」
「多分重たいのって液体だよね。シャンプーとかかなあ。ザックにどうやって入れよう」
登山でもキャンプでも重たいのは水モノだったりする。
「常さん常さん。液体は制限があって、少ししか機内持ち込みできないんですよ!」
「え! あ! そう言えば長崎に旅行行った時、空港で液体云々言われた気がする! あ、鋭利なものもダメだよね?」
ザックを無駄に開けずとも済むよう、きっちりパッキングするつもりでいたのだけれど、計画を変更しなければならないらしい。
「スーツケースに、機内持ち込みできないものを詰めるしか無いなぁ。ストック、オピネルのナイフ、液体もの……化粧水、乳液、日焼け止め、シャンプー……とか?」
「結構ありますねぇ」
「あるねぇ」
となると、パリの宿でスーツケースから荷物を出して、ザックにパッキングするのが良さそうだ。と言うか、そのタイミングしかない。SJPPのトランスポートサービスは午後からなので、逃すと3日目から歩き始められない。
1日目:パリ泊
2日目:SJPPに移動。スーツケースを預ける
3日目:早朝からピレネーアタック
2日目で預けるのに失敗すれば3日目にSJPP観光。午後にスーツケースを改めて預け、4日目からのカミーノ出発となる。ちょっと勿体無い気がするが……いやでも、SJPPはフランスの美しい街のうちの一つにピックアップされている場所なので、観光もありなのかもしれない。
予備日も設定し、カミーノは余裕のある日程。更に帰りのチケットは曜日を変更できる形で取っている……ので余程のトラブルが無ければゴールできるだろう。2日目、3日目の動きはその日の様子で決めれば良いか。
液体が問題なだけに解決方も流動的にすれば良いのだ。
・細々したものを集め始める
液体ものは兎も角、他のものを集め始めることにした。
まずはリストアップ。
入りそうなものを、海外のカミーノ関係のYouTubeや、前に紹介した本、ホームページを参考にして書いてみた。ノートに書くのは、キーボードで打つよりゆっくりで、一文字一文字考える時間ができる様な気がするから。
やる事が多いとどこから手をつけて良いか分からなくなるものだけれど、書くことで、頭の中が整理できて取っ掛かりが見つかるような気がする。
パスポートや旅券などは早々に準備できたが、これを書いている現段階でまだなのが、やっぱりシャンプーや石鹸。そして救急セット。
仕事後、ロッカーでSさんが街歩き用に防虫のワンピースを購入したと教えてくれた。街歩き用の服はラフなのが良いかな、と、金魚の和柄アロハをチョイスした私より余程お洒落だ。
かと言って、Sさんと違い、私はワンピースは正直似合わないのだ。
・お医者さん
持病というほどでも無いが、私はアレルギー体質なので、旅行に薬は必ず持っていく。
ただし、今回の様な長期間家を空ける事は無かったので、症状がある時に偶に処方してもらう位でこと足りていた。内服薬と、吸入薬。ぎりぎり足りそうだけれど……吸入薬って持っていっても大丈夫なんだろうか。調べなければ。因みに予防注射は職場でばしばし打ってるから多分大丈夫。
「常さんエピペン持ってってくださいね!」
「エピペン、消費期限が短いし使ったことないよ」
「間違えてハチミツやらタコやら食べたらどうするんですか」
「えー……ああ、ぷるぽかぁ……」
ガリシア地方の名物はプルポとか呼ばれているタコらしい。
甲殻類にがっつりアレルギーがあるので気をつけたい。最近、ハチミツはお腹壊す程度だから大丈夫だと思うけれど、イカタコはアナフィラキシーを起こした事がある。他にも果物やら何やら数えても仕方ないくらい沢山あるが、イカやタコ等一部の酷いものだけ避けていれば今まで大丈夫だった。
「持っていってくださいね!」
圧が強い。
「検討しとく。お医者さん面倒いけど、現地で行くのもねぇ」
「ですよね」
向こうの病院システムをよく知らない。海外保険には入るけれど、回避できるリスクは回避しておいて損はない。タコイカレベルだと刺激が強すぎて飲み込むこともないだろうけど。
「お医者さんと言えばさ、きっと歯医者さんにも行った方が良いよね」
三大怖い場所。
歯医者(病院)、お化け屋敷、狭くて暗いとこ。
海外の歯医者さんなんて怖さ3割増し。言葉はわからないし、容赦無さそう(イメージです)。
「怪しいところ治していかないとダメだよね。歯が痛くてリタイアは嫌だなあ」
「私も被せてるとこ取れそうなんで行ってきますよ」
「ああ、でも怖いなあ。歯医者さん怖いわぁ」
「私も行くんで、行っといたほうがいいですよ」
歯医者さんの、あのリクライニングの椅子からして怖いのだ。倒れていく過程で自分がまな板の上の鯉だと思い知る。もう乗った瞬間から逃げ場なんてない。
そして真横に置かれるものものしい器具達。因みに歯医者・医者嫌いは父からの遺伝で、父は今はあまり使わない笑気ガスで以前気が遠くなってしまったらしい。ご両親も医療関係者ですよね? と言う問いはスルー。怖いものは怖いのだ。
でも行かなければより怖い事になるのを知っているから予約は入れた。
8月2日がXday。
「湿布、持ってきます?」
「どうしようね。塗るタイプのやつ考えてるけど」
救急セットに湿布を入れるか否か。
以下救急セットに入れていく予定のもの。
1.絆創膏
ちょっとした怪我はするだろう。マメまでいかないまでも足にできた傷に貼ることもできそう。
2.ガーゼ
同じくちょっとした傷に使えそう。
3.傷パワーパッド
マメ用。クッションの役割も果たしてくれるし、痛みが軽減されるので良い。
4.包帯&テープ
念の為。
5.ネット
包帯より簡単に固定できる。
6.ワセリン
皮膚保護用。軟膏の基材としても使われるので、肌に優しい。何かで傷を作ってしまった時に、ガーゼを使う前に塗ると剥がしやすい。
7.VG軟膏
虫刺されやらかぶれやらに使いそう。抗炎症と抗菌作用あり。
8.ハサミ
包帯やガーゼを切るのに使いそう。
職場で使っていたやつを持って行く予定。
9.消毒
傷ができたら洗って消毒したい。
ここに爪切りや常備薬を加える。更に湿布を入れるかどうか。歩き始め1週間くらいはお世話になるかもしれない。
塗るタイプのスミルスチックか、湿布を検討しよう。
「まあ、まだ時間あるから少しずつ揃えればいいよね」
「そうですね。まだ時間ありますし」
ちょいちょい進捗をお互い確認していたけれど、気付けば出立まで2ヶ月を切ってしまった。まだ用意は半分くらいしか済んでいない。間に合うのかな?
カミーノ行きを決めてからまるで中学、高校生の時に戻ったみたいに時間が少しゆっくりになったような気がしたのだけれど、気の所為だったようだ。
やっぱり時間が過ぎるのは思った以上に早い。
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