ホルモンのせいにする
せっかく天気の良い休日なのに、私は今病院の外来で自分の名前が呼ばれるのを果てしなく長く待っている。
といっても大した病気ではなくて、毎朝足がつって絶叫しながら目覚めるのがつらいので、いい薬があればもらいたいからちょっと診てもらいに来た。
なぜ私は足が毎朝つるのか、思い当たる原因として、2年くらい毎日飲み続けているピルを疑っている。
ピルはホルモンバランスを整えると同時に血を固まりやすくする。副作用で血栓を作りやすく、足に静脈瘤ができたら服用をやめなければならない。私の場合まだ静脈瘤はできていないが、足がつるのもなにか関連があるのではないか。そう疑って病院にきた。今はまだピルを止めるわけにはいかないのだ。
ピルを飲んでいるといっても避妊のためではない。あの恐るべき悪夢、月経前困難症を抑えるためだ。
高校生くらいの頃から、自分は気分にムラがありすぎることに悩んでいた。
やがてそのムラが、生理の周期と密接に関連づいていることに気づく。
やたら腹が立ったり、うつ状態に陥ったりするのは、たいてい生理の直前2日間なのである。
その期間には他にも集中力がゼロになったり仕事がミスだらけになったり記憶力思考力が著しく低下してバカになったり、顔にぶつぶつが出たり太ったり眠かったりと、相当なダメ人間となり自分を殴りたくなる。しかし生理が開始した途端、怒りもうつもぶつぶつもどっかへ消えてなくなるのだ。
それほどにもホルモンが精神に与える影響は大きい。影響の大小は人によるが、感覚が敏感にできているHSPは、特に莫大な影響を受ける。これを月経緊張症(PMS)、もっと重篤で生活に支障のでる状態を月経前不快気分障害(PMDD)という。
以来、自分をPMDDだと認識してからは、うつだな、イラつくなと思ったら、ああ2日以内に生理なんだとわかるようになった。その結果、うつ状態またはイラつき状態の自分をちょっと離れたところから客観視できるようになった。(時にはホルモンと関係なくイラつく場合もあります)
人生の中でいろいろな困難を味わい、ときに絶望的な気持ちになったり死にたくなったりしたこともあったが、なんとか死なずに経験値を積んだ今過去を振り返ると、度を超えた怒りや悲しみやうつは、多分ほとんどがホルモンのせいだったんだと思う。
どんな酷い目にあったって、人によって怒り方も悲しみ方も気持ちの切り替え方も全然違う。
あまりにも落ち込みやすいのは、私が悪いわけではなくて、ホルモンのせいだったのだな、と思うようにしたら、以前のような強烈な自己否定感がなくなった。
もちろん自分のダメな部分を反省して直す努力は人間必要だけど、あまりにも自己否定が強すぎると人間は前を向く努力すらできなくなってしまう。だからそんな強い自己否定感を抱えていて全部が全部自分が悪いと思ってる人は、ホルモンとか利己的遺伝子とか、時には宇宙とか、自分の力じゃどうにもならない要因のせいにするとちょっと気がラクになる。ラクになるととたんに前を向く努力を開始することができる。
私は今ピルのおかげで毎日毎月心穏やかに過ごすことができている。この状態を続けるため、血栓ができることは断固として避けたい。そのために毎日大量の水を飲み、ヨガをし、HEETをするという努力をしている。
その後、診察が終わり血液検査も終わりお会計になった段階で6500円というなかなかの金額を請求された上、足がつるのとピルは全然関係なかったらしいことがわかり、あああ足がつるくらいで病院なんか来るんじゃなかったとうつになりかけたことも、病院で途中まで書きかけたこのnote を家に帰ったら末っ子がうるさすぎて夜中まで完成させることができなくてイラついてしまったことも、きっと全部ホルモンとか暑さとかのせいだから私は自分を殴る必要はないのである。
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