考察 : クララとお日さま

カズオ・イシグロの最新作「クララとお日さま」を読んだ。

イシグロ氏の小説は10年ほど前から大ファンで、今回もあらすじすら見ずに購入した。

本作も読み終わってから、余韻がすごく、そのまま2回目を読み、何日間かひたすらに思い耽っていた。

同氏の小説は、細かな説明がなく、会話や状況から読者が判断していくという特徴がある。

今回も小説内の設定に関して、私なりに考察を行ったので、備忘もかねてまとめてみる。

なお、所謂ネタバレ記事ではないが、一部ネタバレも含まれると思うので、了承してほしい。


AFについて

Artfitial Friendの略と思われる。ティーンエイジャーを対象にしており、本体部分はそれほど長期間利用するようにはできていない(せいぜい4〜5年といったところか)。また、情報が過多のときなど、視界がボックス状に分割されたり、走馬灯のように別のイメージが入り込むということがある。

ローザ

クララのイメージに突如、ローザの姿が映る。地面に脚を投げ出して座り、金属片が散らばっている。店長の台詞を鑑みるに、良い運命ではなかった...が、この時点では廃棄場だとしたら、早いので、少なくともどこか別の場所で、何かしら襲撃にあったと考えられる。

また、なぜクララのイメージに入り込んだのか?ずっと一緒に展示されていたが、それだけではなく、同じタイミングで作られた、何か部品が共有されているなど、姉妹的な側面があるのかもしれない。

向上処置

子どもに遺伝子操作を行う。勉強的な面でしか話が出てこないので、身体的な影響ではなく、あくまで頭脳的な向上と思われる。 

身体的な影響だけでなく、性格にも影響がある可能性。リックが「前みたいなジャジー」と言っていたので、ジャジーも何かしら変化があったと考えられる。店長さんの台詞で、B3世代は優秀だけれど、愛情が感じられないと言っていたが、向上処置を受けた子もそのようになっているなかもしれない。

というのも、お店に最初にB3世代がきたときの態度と、パーティーでのニックに対する子どもたちの態度に似たものがあるからである。

なぜ学校に行かなくなったのか?

これが私の中では答えがでなかったこと。

向上処置を受けた子と受けていない子の差があるから..だけなのか..?

サリー

向上処置の結果、亡くなった。「だいぶ前」「あまり覚えていない」と言っており、AFが無かった時代。死後にサリーの代わりになるような、劣化版AF(もっと人形的な)が作られる。ヘレンがみたのは、サリーの人形。逃げようとしていた、ということだが、サリーに似せてつくったものの(中身も)、予測できない行動をし、おそらく家のどこかに隠されていると思われる。

AIの発達と向上処置

ジャジーの父親や判事のように、頭脳を使う仕事の人たちがAIに「置き換え」られた。

置き換えられた人々は、コミュニティを結成し、今までと同じところには住んでいない(反乱をおそれ、左遷する形で街を追われた?)。

実際、AF・AIへの反発は強まり、危険な世になってきている。お店がなくなっていること、廃棄場にてB3世代までの話しかでてこないので、もう作られていないのかもしれない。

店長さんの歩き方が変わっているのも、もしかしたらAF擁護者として、襲われたのかもしれない。

メラニアさん

なぜ辞めてコミュニティへ入ろうとしたのか?AFへの反発が高まる世の中で、ジャジーたちの家のあたりも危険になってきた?

いずれにせよ、メラニアさんはサリーの人形をみており、その結果、AFに不信感を抱いているということは想像に容易い。

クリシー(置き換えられていない人)の仕事

法務部であることが明記だが、辛い仕事かつ昔の契約によって辞められないようである。

完全なる想像だが、置き換えられた人からの訴えの対処など...? 人ではなく、会社を擁護する仕事。置き換えられた人からの訴えの対処だとすると、その相手がAI・AFであれば、より一層反発があるであろうし、その意味でも生身の人間が対応するというのは、理にかなっているのではないか?

リック

大学に行くのを辞め、友人と会ったり、自ら作った「鳥」の改良を進めている。

鳥の用途として、「自警団的な組織やカルトの監視」といっており、大学には行かず、独自に(あるいは同じ志のコミュニティ)危険因子の監視を行う道を選ぶ。

元々、リックとジョジーは違う立場になりながら、どうすれば一緒にいられるかの計画をたてていた。1番単純なものは、リックとジョジーが同じ大学に行き、リックも向上処置を受けた人と同じ扱いを受けること。あるいは、理想として、向上処置やAF・AIが登場する前のような世界にすること。リックはジョジーの変化や、大学へ行った場合の苦労をふまえ、後者を選んだ。

ジョジーの計画

これは、考察というよりも、こうあってほしいという妄想である。

大学は法律を学び、母親と同じような道を辿ることを選ぶ。だが、あくまでそれは表向きの目標。

リックと同じ道は進まないことにしたものの、彼女も法律という目線から、置き換えられた人々、そしてAF・AIを守るための計画をたてている。


と、、妄想混じりの考察を長々としてみた。

読めば読むほど、色々な考えがめぐり、感動が深くなる本であった。

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