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帰国子女の帰国後の人生:日本での高校受験

前回の続き。

高校受験

アメリカにいた頃自分はそれなりに勉強ができると勘違いしていた。現地校では簡単な宿題を提出するだけで良い成績がもらえたし、周囲からは「アジア人は頭がいいなあ」ともてはやされた。週1回の日本語補習校において大した授業なんてしないしできないものだから教科の成績は総じて悪くなかった。(補習校の先生からはどちらかというと健康面・生活面に気を配ってもらっていたような気がする。)

高校受験で私は打ちひしがれた。受験勉強に際して私は結構なカルチャーショックを覚えた。色々な意味で自分の無知を思い知った。各科目の感触を思い出してみると:

・国語:一致のはずだがシンプルに不得意。「日本語」の授業は週1回しか受けていない。日常的に英語で会話していたため、母国語として使いこなせてすらいない。

・数学:ほぼ一致。私が通っていた現地校では中学から数学の授業がレベル別に分かれており、私は運よく上級クラスでAlgebra(代数学、ただの方程式計算)を履修できた苦ではなかったが、そうでもなければ日本の高レベルな数学についていけなかっただろう。それでもなお、数学が得意だと思っていた私にとって高校受験の数学は難解ですっかり自信喪失した。

・英語:現地校では国語の授業として英文法も取り扱っていたので意外と理論も分かる。品詞の名称を日本語で覚える必要があるくらい。

・理科:あまり一致せず。アメリカと日本でカリキュラムは全くと言っていいほど異なっていた印象。多分アメリカでは高校で取り上げる科目が多いのだろう。特に天体や気象は全く触れなかった。全体的に苦手、というか知らない。

・社会:一致せず。私はアメリカ史の記憶しかない。日本史なんて学んだこともない。公民・地理という日本特有の科目についても知るはずがない。

こんなところだ。つまり英語以外はどの科目も平均以下のレベルにあり、帰国して半年でこれを戦えるレベルに仕上げるにはあまりに時間がなかった。人並みに勉強したが猛勉強したという記憶はない。分からない数学の問題は解法を見ても分からないまま。自分はこんなレベルだよな、と我に返った気になった。受験に向けて1回も塾に通わなかったがそれは今思えば色々と諦めていたのだろうか、とも思う。私も、私の両親も。

理・社は特に苦行だったので5科目の公立よりも、国・数・英の3科目で済ませられる私立を狙った。結果的には近くの私立高校に合格し、進むことになったわけだが、この高校へは一般受験ではなく、高校独自に設けている「帰国生自己推薦方式」という裏技を駆使して入学した。これは現地校での成績と自身の英語力に関する証明書を提出し、会場で簡単な小論文を仕上げるだけで合格できてしまう受験方式で、アメリカにおいて宿題を提出するだけで良い成績を手にしてきた私にとってはまさに棚からぼた餅が落ちてきたような状況だった。

これこそ私が帰国子女というステータスを活用した最初の瞬間であるが、この高校、(自分で言うのもはばかられるが)私のような学力の人間がいくには場違いな優秀校であり、私が今に至るまで苦しみ続けるその入口となる。これも帰国子女あるあるの一つであり、自身の境遇がなぜか優遇され、身の丈に合っていない高校、大学に進学してしまうのである。

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