見出し画像

”弱パンチ”で大盛況。


後輩のI君はゲームが好き。それもアーケード。
アーケードゲームというのはおおかた「ゲームセンター」に置かれています。
置かれているゲームはほぼ格闘ゲーム。薄暗い店内にけたたましい叫び声が乱立するちょっと特殊な空間。


最近のゲームセンターはラグジュアリーで空調も行き届いていてとても過ごしやすい。
気がついたら何時間も・・何てこともザラにあります。しかしゲームセンターのゲームは都度課金。ゲームする度に100円を使います。


これは非常に高い・・・と思われるでしょうが、大概は「コンティニューさえしなければ」
永遠に遊べてしまう非常にコスパよしの商品なのです。今は事情は変わってるかもしれませんが。

地元のゲームセンターにI君が入り浸っているとのお話を聞き、応援がてら遊びに行きました。時刻はほぼ20時すぎ。もういい時間なので大人の中の大人の方しか見受けられませんでした。

入店するとビックリ。「これが今のゲーセン?」と見間違うほど、綺麗で整えられた部屋。女性でもいやな感じはしないでしょうね。高級ホテルの一室と言われても納得してしまうだろうな・・・。違うのはそこに置いてあるのは「格闘ゲーム」という男くさいシロモノだけ。


ある筐体を探しているとそこにはすでにI君が座ってプレイしていました。驚くべきは
すでに”ギャラリー”がいたこと。ギャラリーがいるって・・・そんなにI君はお上手なのかと驚き、試合が落ち着くまで店内をウロウロしていました。

みるみる内にギャラリーは増え、ちょっとしたお祭り騒ぎに。これはただ事ではない!と
察したぼくは、後輩の応援に急いで駆けつけました。

しかし・・・。

全然強くない。

なんなら一方的にやられてしまっている。これならぼくの方が強い。正直思ってしまいました。なんでこんなにギャラリーがいるのか全くもって理解できません。しかもI君側にです。彼には隠されたカリスマ性でもあるのでしょうか?あそこまでコテンパンにやられるとメンタルも辛かろうね。


ゲームセンターの暗黙ルールとし、「負けたら交代」があります。ひとりのプレイヤーが筐体を独り占めしないように、設けられたいわゆる思いやりみたいなものです。

交代したI君に「お疲れ」と声をかけ近寄るあたし。精一杯言える言葉は「惜しかったね」


安直な気休め程度な言葉しか出ませんが、彼も一生懸命戦ったので、そこは褒めてあげたかったのです。いらぬおせっかいにも彼は持ち前の明るさで元気よく返してくれ、
どうやら凹んでいない様子。よかったよかった。

お話を伺うと対戦相手の方はこのお店では”レジェンド”級のプレイヤーなのだそう。
全国大会でも上位入賞者であり、100円だけで何時間も過ごせる凄腕の持ち主。

彼が来店するとお店側にも利益があるようで、彼のプレイ料金はお店の方がご厚意で
負担していたそうな。実際、お店の案内には「次回の来店日」のお知らせまで張り紙がありました。とんでもない人気ぶり。人がローカルで集まることの意味を思い知らされました。

「そんなレジェンドに挑むなんて逆にすごいね」と問うぼく。
「ですよね〜!でもこうして実際お手合わせ願えること自体リッチですからね」
「確かに・・・。オンラインではこの空気味わえないよね」
「そうなんすよ。相手の方の動きが生きてますから」

彼の中では実際に稽古をつけてもらっているような感覚なのでしょう。確かにどこの誰かとでもゲームができる環境では「特定の誰か」とは試合できない。実際の手合わせがこんなにも貴重な体験を産むとは。ゲーセンが当たり前だった時代の者としてはカルチャーショックすら覚えます。

すると整理券(!)が配られ、再び対戦することが決まりました。その間は少し離れた筐体でCPU相手に訓練していました。まぁぼくもプレイしたことがないわけではなかったので、彼を少しレクチャーしてあげようと乱入。

ゲーセンって筐体と筐体が向かい合わせに置いてあるので、基本対戦相手って見えないのです。後輩もぼくが乱入してきたとは思わず、全力でぶつかってきました。

実力的にはやはり現役プレイヤーには敵いません。新しいシステムも使いこなせず、彼の
華麗なコンボにやられっぱなし。あまりにもお見事すぎるので、先ほどのギャラリーさんたちも少しこちらに集まってきていました。

あかん展開になった時、「これはコンボ決定パターン」に持っていかれ諦めた瞬間、思わず
弱パンチ」が一発入りました。

精いっぱいの反撃。もうこれから先はなにもできません。半笑いしながらゲームは終了。
なんとも情けない試合をしてしまった。
反省反省・・・。

が。
予想に反して意外とギャラリーさんたちが大盛り上がり!
なんだか歓声まで上がり会場(?)は熱気で沸騰するかと思いました。しかも熱い!!なんだか空調が止まったかのように感じました。軽く汗をかいてしまったし。

どうやらあの場面での「弱パンチ」は相当むずかしいらしいのです。
こっちは苦し紛れに出しただけですので、もう一回やれ!と言われてももうムリですが
なんだかみなさんが楽しんでいただけたようでコレでよし!とします。3タテで負けたけどね!

ここから先は

269字

¥ 300

この記事が参加している募集

ゲームで学んだこと

サポートいただけるなんて奇跡が起きるのかは存じ上げていませんでしたが、その奇跡がまさかまさかに起きました!これからありがたくゲームのオトモ代(コーヒーとかお茶)いただけると大変喜びます。サポート設定ってあなどれないぜ…。