見出し画像

アワイキオク

夢は夢だと分かっていても、
夢を見ているときは夢と気がつかず現実そのもののように振る舞う。
楽しい夢も怖い夢も、
良い夢でも悪い夢でも「いい夢でありますよう」にと
1日の終わりに夢を抱き眠りにつく。

「あれは夢か」
と思えるのは誰なのだろう。
夢の世界にいる当人は「これは夢か」なんて少しも思っていない。
現実の身体感覚を通して
夢で飲んでいるコーヒーの香りを嗅いでいる訳ではないのに。
しかし、全くもって「知らない」ものは夢に出てこない。
「キャベツ」を知らない場合、得体のしれないカタマリで出てくるだろう。

夢の中のあらゆる事やものは実に奇妙だ。
現実のものとは似ているようで似ていなく、同じようで同じではない。
夢の中にいる時の意識化では
間違いなく「本物」として接しているのに。

よくて6割。良すぎて7割。
必ずといっていいほど「ちょっと違う」部分がある。
友人がイケメンになったとか
意識していなかった女友達がセクシーになって登場する。
おそらく現実では、「およそあり得ない」状況も起きる。

もし、現実に街中で友人そっくりの
「他人」を見かけても、本人と「違う」事を見分けることは容易だ。
髪型が違う、背丈が違う、服の好みが違う、
例え分かりやすい身体的特徴が同じだとしても
「雰囲気が違う」事でも、すんなりと嗅ぎ分けることが出来る。

それなのに夢の中では
多少あやふやでも許されてしまう。
絶対的に「同じ」であることを求められていない。
夢の中では、モヤの中にいることが現実なのだ。
あやふやな現実。そんな世界があるのだろうか。

そもそも「あやふや」と感じているのは誰なのだろう。
夢を見ていた時の当人は夢と気がつかない。
夢のなかでは、今起きていることこそが、真実であり本当のことだ。
誰かが、「これは夢なのです」と告げられたからといって
「そうか、夢か」と納得できる訳ではない。

もし、生まれてこのかた「夢の中だけで生きていたなら」
「起きている」という事実は受け入れられないだろう。
「そんな世界が存在するわけないだろう」と信じない。
信じられない、と言うべきか。

しかし「あなたは本当のあなたではない」「本物はあちらにいる」
と、「知ったら」どうなのだろう。
好奇心のまま目覚めてみるだろうか。
そのかわりあなたは消えてなくなります、と言われても
目覚めてみるだろうか。
そしてそれは「あなた」と言える存在なのだろうか。
「今ある姿とはまるで違うもの」にある可能性だってある。
それは大変怖いことだ。
普通は今のこの閉じた世界での「現実がなくならないよう」にするのが妥当だ。
目覚めを告げるもの、なんて来てしまった日には
余計なお世話だと、跳ね返すだろう。

「寝る」という行為も「起きている」という
「反対の」状態があるからこそ区別できる。
「夢」という世界も「現実」という世界があるからこそ成り立つ。

イケメン化した友人の夢を「あやふや」だと感じているのは
起きている時の当人に他ならない。
「起きている時」に思い出すから「夢の中での」世界を区別できる。
もしこの後、夜に友人に出会ったらいつも通りの彼にホッとするだろう。

よほど強烈な夢ならいざ知らず、
忙しくお昼を過ぎたあたりから
現実の当人は「夢を見ていた」ことすら忘れていってしまう。
いや、起きた時から「夢を見ていた」ことすら知らないのかもしれない。
シャボン玉のアワのように、はじけていって脆くて儚い。

そうだとしても、「夢を見ていた」事は
無くなったりはしない。
「なにか」は残る。
具体的な物質が与えられるものではないのだけど
今日の夢が「いい夢」であったなら今日も楽しいことがありそうな気がする。
いつものランチが美味しいかもしれない。
レアもののアイテムを見つけることが出来る気がしたり
今後に影響しそうな素敵なパートナーに
出会えそうな気もしてくる。

夢というのは現実世界の
「パロディ化されたオールスターの共演」のような存在なのかもしれない。
小さな島を貸切って、あやふやなメンバーで、
なんとなく似ている人や物が集まり
「なにか違うけどみんな揃っている世界」なのだ。

はじけて消えていった夢のカケラの
「なにか」のおかげで今日を気分良く過ごせる。
たったそれだけでも、そう思えた事だけで、その瞬間は幸せになれる。
思い返す、という行為だから
「夢」というより「おもいで」に近いかもしれない。

夢という「おもいで」の世界こそ
「ユメのせかい」そのもの。
いいことばかりではなくとも
悪いことだけでもない。例えそれが夢のようなアワい現実だとしても、
人は明日に夢をみる。

淡い恋心のように夢をみる。
カモメになって、海の向こうを見てみたい夢を。


ここまで読んでくださってありがとうございます。

コケでした〜。











サポートいただけるなんて奇跡が起きるのかは存じ上げていませんでしたが、その奇跡がまさかまさかに起きました!これからありがたくゲームのオトモ代(コーヒーとかお茶)いただけると大変喜びます。サポート設定ってあなどれないぜ…。