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SNSをする時に気を付けるのは「正義中毒」

こんにちは、保育士兼ベビーシッターのねこばすです。

以前参加したnoteの読書感想文イベントのために読んだ本が2冊ありました。
片方は締め切りに間に合わなかったのですが、個人的に好きな中野信子さんの本なので、今日はその内容に触れたいと思います。

今の時代欠かせない生活手段であるSNS

子どものいない私が子育て中の方と触れ合い、幸せや困難を共有させてもらう手段として普段Twitterを利用しています。

ただ、140文字という限られた世界で自分の考えを表現すると意図が十分に伝わらないこともあり、それは自分が受け取り側になる時も同様です。
SNSの中でも気軽にアップができるTwitterrではよければバズ、悪ければ炎上が起こることもよくありますね。

SNSは純粋に楽しみたいから、人の投稿を見てイライラするのも嫌だし人から非難されるのも嫌。

平和に楽しむためには、平和じゃない状態の仕組みを知るのが効果的です

それで選んだのが、脳科学者である中野信子さんの著書「人は、なぜ他人を許せないのか?」です。

※今回から、本についてnoteを書く時は「まとめ」にするつもりです。
子育てや仕事に忙しいママ・パパさん達に本からの子育て(たまにそれ以外)のマメ知識を端的にお伝えする手段にしたいから。

では、早速。

正義中毒とは

私たちには正義感があります。
「そんなことをするなんて間違っている」
「そんなことを言うなんて許せない」

など、日常生活の中でも正義感がムクムク出てくることはあります。

正義感があるから社会のルールも守れるし、困った人を助けることもできます。
子どもにも持ってほしいのが正義感。

ただ、強過ぎる正義感は、時に相手のそしてじぶんの首を絞めてしまいます。

例えば自分には全く関係のない有名人の不倫などにも強い怒りや憎しみの感情が湧き、叩きのめさずにいられなくなるような状態。

これは正義に溺れてしまった「正義中毒」と言えます。

ことSNSの世界ではこういった人に遭遇することが多いのではないでしょうか?
・匿名性が確保されやすい
・色んな人が発信をしているため、自分の正義感と異なる価値観に触れる機会が増えた

などの理由が考えられます。

あなたもSNSやネットで正義中毒状態の人を見て「うわっ」と思ったことがあるでしょう。

しかし、今そう思っている私たちも同じ状態になる可能性は十分にあります。

日本人は正義中毒になりやすい?

「何が正義で何が愚かなのか」は国により違います。

例えば、中野さんが数年間過ごしたことのあるフランスでは、皆と同じであることや自分の意見を言わないのは「つまらない」と思われがちです。
一方日本では、皆に合わせることができない人は批判されることが多いですね。

中野さん曰く

何でもかんでもヨーロッパ方式が良いと言いたいわけではありません。

ただ

「日本や日本人の考え方は過去も現在もグローバルスタンダードではありません。」

「皆に合わせられることがいいこと」「人と違う言動をする人は愚かだ」という正義感は、こと日本人には強くあるでしょう。

そして、この同調圧力が正義中毒に繋がりやすいのは容易に想像できるところです。

そもそも、なぜ日本人にはこういった「周りと同じようにあれ」という価値観が根付いているのでしょうか?

地理的・気候的要因

日本での上記のような風習には、日本特有の事情が関係していると考えられます。

・降雨量が多く台風も多い。風水害のリスクが高い
・火山が多く地震が多発する

そもそも人間が生き抜くには集団を形成する必要がありますが、自然災害のリスクが高い国とそうでない国では、生き残っていくことのできた人間や集団の性質が違ってきます。

大きな地震が起こった時に構成員が自分の利益を最優先する集団と、自分の利益を多少犠牲にしても皆を優先する集団。
どちらの集団が存続する可能性が高くなるのかは明白です。
集団(社会)の中でどう振舞えば自分が生き残れるかも。

日本人は日本の自然環境に数千年・数万年かけて適応してきました。
集団を優先する性質も同調圧力も、環境への最適化の結果なのです。

高い社会性×ネットやSNSの影響。
この掛け算で日本人や日本で長く生きてきた人は正義中毒になりやすいと考えられます。

そして誰でも中毒になる可能性がある

「日本人は性質的に正義中毒になりやすい」ということを書いてきましたが、中毒になる可能性を持っているのはどの国の人も同じです。

それにも理由があります。

①人間の脳は誰かと対立するようにできている
多くの哺乳類の中でも特に人間は、生存戦略として集団を形成します。
ということは集団主義をとりやすくなるということ。この時別々の集団は対立しやすくなりますが、自分の集団の正義が好みだからというより、その集団の一員であることそのものが生物としての安全性を高める武器になるからです。(日本では特にその傾向が強い)

②快感だから
他者に正義の制裁を加えると、脳の快楽中枢が刺激され快楽物質であるドーパミンが放出されます。つまり気持ちがいい状態になるということ。
これにはまってしまうと簡単には抜け出せなくなってしまうのです。

③脳が怠けているから
外国に行くと不審者扱いをされてショックを受けることはありがちですが、これをイングループ(内集団)バイアスと呼びます。
「イングループにはアウトグループよりも好意的・協力的に接する」というこのバイアスは、いちいち人のバックグランドなどを考える必要がないようにする「脳の手抜き」と言えます。
このバイアスがかかると、人は本質的な正義より身内の正義を大事にするようになります。

④加齢が脳を保守化させる
どの様な相手にも共感的にふるまうという脳の機能はとても高度で、前頭葉の眼窩前頭皮質という領域で行われています。ここは25~30歳くらいにならないと成熟せず、しっかりと発達させるためには相応の刺激(教育)が必要になります。更にアルコール摂取や寝不足といった理由で簡単に機能が低下してしまいます。
機能を得られるまでに人生の1/3近い時間がかかるのに、衰えてしまうのは早いという領域です。
ニュースなどで見る、いわゆるキレる高齢者などが分かりやすい例です。

正義中毒から解放されるために

自分が正義中毒になっている人も、後で罪悪感にさいなまれることがあります。
そこから解放されたらもっと生きやすくなるはず。

解放されるためには、自分が正義中毒になっているかどうかを把握することが重要です。
そして、ある時ある出来事や人に怒りを覚えたら、怒りを増幅させる前に一呼吸する。

ですが、誰かや何かを許せない自分を卑下する必要はありません。人間はそういう生き物です。
その怒りを爆発させないことが大切なのです。

そのためには、何を知り何をしたらよいのでしょうか?

脳の特徴を知り、対策をとる

脳の特徴】
①懐古主義には要注意
脳が老化すると人は保守的になると前述しましたが、そのサインとして「昔は良かったな」という気分にひんぱんに浸る、というのが挙げられます。
思い出は大概美化されるものですが、脳が老化し前頭前野の働きが衰えると新しいものを受け入れられなくなってきます。そのサインがこういった発言に出ます。

②脳の成人年齢は30歳
脳の成熟は部位により異なりますが、感情のコントロールも含め「人間が人間である」ために重要な前頭前野は遅いことで知られています。成熟するのは一般的に25~30歳前後。
若気の至りによる相手への共感性の低さはや抑制のきかなさは、脳が未熟ゆえと言えます。

③脳は経験で進化できる
生物の遺伝的な性質の進化には何世代もの時間が必要ですが、個人の性格や考え方、そしてその相対である集団のふるまい・世論・社会常識のようなものは、世代を経なくても変えることができます。
それが脳の特徴であり前頭前野が持っている大きなメリット。
前頭前野には自分の働きを俯瞰する機能があり、「自分にはこういう傾向があるから今後はこうしよう」と修正することができるのです。

こういった脳(前頭前野)の特徴を考えるほどに、「いかに脳を老けさせないか」が大事だということも理解できますね。

脳を老けさせないためにできること

脳の中でも前頭前野は分析的思考や客観的思考をおこなっています。
それらの中でも重要な機能が「メタ認知」。メタ認知を一言で言うと、自分自身を客観的に認知する能力です。
常に自分を客観的に見る習慣をつけることは、前頭前野を鍛え脳の衰えを防ぐことに繋がる可能性があります。

そのために・・・

①慣れていることをやめて新しいことを始める
いつもと違う道順で会社に行ったり、ご飯に行く時にいつもの店やいつものメニューを変えてみたりなど、ちょっとした違いでいいので脳に刺激を与えるようにすると効果的です。

②不安定・過酷な環境に身を置く
この言葉を読むとハードルが高いように感じるかもしれませんが、その意義はとても大きいものです。

今の日本のように安定した社会では、システムの維持が大きな目標になるので、新たな科学的思考や客観的思考の重要性が下がります。
それだと、どうしても今自分のいる社会・集団のルールが万能という感覚になりやすいですが、それではメタ認知が育ちません。

日常ではそこまでハードなことをする必要はありませんが、例えばあえてノープランで一人旅に出てみるのはどうでしょうか。
予期しないことに対応するために、前頭前野をはじめ脳全体が活動状態になります。

②睡眠
睡眠に適した時間や睡眠のパターンには個人差がありますが、いずれにしても睡眠不足は一時的にせよ習慣的にせよ、脳にとってはよくありません。

睡眠不足は思考力や記憶・学習能力の低下を招きます。
動物実験では、マウスを1日眠らせないだけでもシナプスの長期増強が起こりにくくなり(=新しい学習をしにくくなる)、2日間眠らせないとさらに起こりにくくなることが分かっています。

複数の研究によると、睡眠不足を補うためにはわずかな時間でも休息をとったり昼寝をすることが重要だということです。

加齢とともに質の良い睡眠がとれなくなることも多いですが、これは生理現象です。
眠気は睡眠ホルモンであるメラトニンにより起こります。20代の頃は体内でメラトニンを分解する働きが弱いため長く眠ることができますが、加齢とともに速やかに分解ができるようになるため若い頃よりも眠りにくくなったと感じるのです。

このようになったら、メラトニンの元となるセロトニンの量を増やすのも一つの手。
セロトニンは普段の食事から摂取した必須アミノ酸のトリプトファンが原料となり体内で合成されます。
トリプトファンが多く含まれるのは、豆腐・納豆・味噌などの大豆製品、チーズ・牛乳・ヨーグルトなどの乳製品、コメなどの穀類など。
また日光を浴びるのも有効です。散歩などの運動が難しければ、朝起きたらすぐに窓を開けて日の光を浴びるようにするなどの習慣を作れば、睡眠の質の向上を期待することができます。

心の持ち方で正義中毒を乗り越える

最後に、生後中毒を乗り越え人を許せるようになるための心の持ち方のヒントを考えてみましょう。

正義中毒にならないためのカギは「メタ認知」

常に自分を客観的に見る習慣をつけておくことは本当に大切です。
これができていない人は、他者に共感したり他者の立場で考えることができません。
そしてメタ認知の高低には、環境が大きく影響しています。

メタ認知は、小学校低学年辺りから徐々に育ち始め、完成するまでには30歳くらいまでかかります。
つまり、30歳くらいまではずっと周囲の環境から影響を受け続けるということですね。
例えば我が子のメタ認知能力を育てるためには、幼少期から30歳くらいまでの間にどんな人に出会いどの様に影響を受けるのかが非常に重要なのです。

自分にも他人にも「一貫性」を求めない

人が「信じていたこと」が裏切られたと感じると、そこに摩擦やいざこざが生じます。

典型的な例が有名人の不倫。
不倫という事実とその人のイメージがかけ離れているほど、バッシングも激しくなります。

「そんな人だと思わなかった」
「だまされた」
など。

しかし、その有名人のイメージ自体商品であってその人の本質であるかは分かりません。
表舞台でのキャラクターとプライベートでのキャラクターが全然違っていてもそれは当然のことです。
そもそも、他者や自分自身にも一貫性を求めるのは不可能なのです。
人間である以上、言動に矛盾があって当たり前。

そしてあくまでも他人の人生はその人のものであって、私たちにはその人をバッシングする権利も必要もありません。

バッシングする方だってパワーを使って疲れますし、一時的には快感を覚えたとしてもその後にもっと大きな罪悪感や虚無感が襲ってくる可能性もあります。

その状態から離れる最良の方法は「自他に一貫性を求めることをやめる」ことです。

対立ではなく並列で考える

正義中毒から解放される最終的な方法は、あらゆる対立軸から抜け出し何事も並列で処理することではないでしょうか。

国と国、宗教Aと宗教B、男性と女性など異なる人間同士が集まれば、対立軸はいくらでも発生します。

それぞれに視点や知見があり議論が生じますが、この時に正義中毒にかかってしまうと相手をやりこめたくなってしまうのです。

議論に答えはなくてもいいのではないでしょうか。
一見堂々巡りに見える問答の中にこそ正義中毒の本当の答えがあるように思えます。

禅が流行って長らくたちますが、それは今の時代に合っているからこそなのかもしれません。
個人の知識や言葉や善悪の観念やそういったことに結論を出そうとしても無理があり意味もない。
皆が並列でそれを感じて包み込むことにこそ意味があります。

最後に

この本は

人間は不完全なものであり、結局永遠に完成しないという意識が人間を正義中毒から解放するのではないでしょうか。

という文章で締められています。

脳科学者である中野信子さんが言う結論がこれ。というか、結論がない。

そういうものなのだろうなと思います。

唯一の正義なんてない。
唯一の正解なんてない。

人に誹謗中傷の言葉を浴びせてもそこに正義があるわけではないのです。

お互いの正義感や価値観を「あなたはそう考えるんだね」と受け止められる人間でいたいですし、そういった社会になってほしいなと思います。

その方が誰もが幸せで自由に生きていくことができるから。
多様性のある社会に身を置きたいですね。





















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