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写真集「光の国へ」

りぼん舎から昨年の夏に出版されていた松田洋子の写真集「光の国へ」
南仏といえば、20世紀初頭に印象派の画家が魅了され、柔らかく美しい光が描かれた多くの作品が残されている。彼らはを魅了した南仏、そこに溢れている光はどんなものなのだろう。光、写真家が興味を持つのは当然。写真家の松田が興味を抱き、その地を訪れるのは当然である。

写真集のページをめくっていくと美しい光に溢れていたことがわかる。南国の光のような、全てのものを圧倒するように降り注ぐ白い光ではなく、光は強いがどこか柔らかい包み込むような光に見える。
沖縄の夏の日差しではなく、ちょうど春から夏に移ろいゆく時期。うりずんと呼ばれる季節の日差しに似ている気がする。

写真集は、柔らかい光に包まれた情景から、影のコントラストが印象的な強い光、そして暗い教会の中へ。光に隠れた影の世界、そこにも柔らかい光が差し込んでいる。そこから、ドアを抜けて夜の人工の光、そして朝の目覚めるような透明な光と、南仏の1日の光が写真集には溢れている。

写真集の中央部分を占める、教会の写真。暗い中での美しい光は、マリア像をはじめとする、教会のたたずまいに荘厳さを見出すことができる。光の中に浮かび上がる教会の内部は、人の救いとなる宗教の光、希望の光を連想させる。
引き締まった黒だからこそ、荘厳な気分になる。ここは、本人もこだわった部分の一つと聞いている。

前半は写り込みの写真が多くある。この写り込みの写真が秀逸。南仏の光の美しさと生活の様子を見せつつ、どこか一枚挟んだ向こうから見た感覚、旅の途中で立ち寄った旅人のような、ちょっと不思議な感覚を覚える。
コントラストの強い影の写真から、夜に続くのかと思ったが、教会の中へと導かれたのは、ちょっと意外であった。

南仏には行ったことはない。多くの絵から光豊かな土地なのはなんとなく知っていたが、この写真集に溢れる光を見ていると、実際に行ってみたいと思えた。画家のフィルターで変換した光ではなく、より現実に近い光を感じることができるのは写真の特徴である。
この光の中でシャッターを切るとどんな画が撮れるのか想像した。



一度、行ってみたいな。

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