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高知の八彩帖(ヤイロチョウ)36・「お酒」

 かつてとある会社のサイトに連載していたショートエッセイです。高知のあれこれを書いています。

 今回のテーマは「お酒」。酒豪国土佐に生まれた私ですが、お酒は一滴も飲めない悲しい体質です。飲み会では仕方なく雰囲気で酔っています。そんなお酒についてのお話を。

 土佐は酒の国だ。昼間から、いや朝から呑んでいても誰も驚かない(あたしゃ嫌だけど)。かの土佐日記にも子どもまで酒を呑んでいた、とかいう記述があるくらいだから、その歴史は長い。

 山内のお殿様だか、土佐のお殿様が家臣達に『一升飲める者は前へ出よ』と言った時には誰も出なかったが、『では二升飲める者は』と聞いたら全員前へ進んだ、なんて話もあるようだ。土佐の自然が育んだ美味しい水に美味しいお米が、旨い酒を作るんでしょうね。

 かくいう私は全くお酒が呑めない。酒瓶の前を通っただけで酔うくらいだ。親戚中見渡しても、私だけが下戸である。母方の叔父2人はBARを経営しており、父方の祖父も父もお酒が大好きで毎日晩酌をかかさない。

 残念ながら(?)呑めない遺伝子がまとめて私に来てしまったようだ。歯がゆいことこの上ない。仕方なく宴席では宴会芸係として、どうでもいい小ネタやら一発芸やらを駆使して盛り上げる羽目になる。

 …周りは酔ってるからうげてくれるが、シラフでやったら場が凍りつくクオリティなのが泣ける(悲)。

 ところで母方の先祖に、阿波の海部にあるお城のお殿様に仕えている人がいた。そのご先祖は三度の飯よりお酒が好きで、とうとうお殿様のお酒にまで手を出してしまった。

 結局盗み呑みしている所が発覚し、自刃した。その因縁で、子孫代々酒にまつわる人生を送ることになり、一度は腹を切る、…なんて話を今は亡き祖母から聞いたことがある。

 実際叔父はお酒を生業にしているし、祖母共々腹部を手術している。あながち与太話とも思えないのが怖い所。これには後日談があり、ある時父方の家系図を眺めていたところ、なんと阿波の海部でお殿様だった先祖がいるのを発見した。

 もしそのお殿様に仕えていたのが、例の母方のご先祖だとしたら…。この因縁に気づいた瞬間、背筋に薄ら寒いものが走ったのを覚えている。うーむ、酒のウラミは恐ろしい!
 

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