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高知の八彩帖(ヤイロチョウ)58・「東京」

 かつてとある会社のサイトに連載していたショートエッセイです。高知のあれこれを書いています。

 今回のテーマは「東京」。高知住まいの自分にとって、東京はアメリカ並みに遠い場所でした。あまりにも遠すぎて、イメージすらわかないのです。今回はそんなお話を。

 生粋の田舎生まれ田舎育ちのこのワタシ。当然のことながら、都会は大の苦手である。何が嫌かって、人の多さから独特の喧騒まで全てが恐ろしくてたまらない。そうなのだ。「都会=怖いところ」というイメージが染み付いていて取れないのだ。

 初めて東京に行ったのは、高校の修学旅行だった。観光バスの中から見た東京のコギャル(死語)の姿は忘れられない。

 テレビで見たのと同じ姿の茶髪&ミニスカ&ルーズソックスで歩いている!彼女らはこちらを見て笑顔で手を振ってくれた。見かけと違って(?)実にいい人達ではないか。…ただ単に田舎者丸出しのウチらが珍しい見せ物に見えただけかもしれんが。

 その夜は新宿のビジネスホテルで一泊。あの新宿ですよ新宿。しかも初めてのビジネスホテル。さらに運良く1人部屋。ユニットバスの使い方を予習しておいて良かった♡

 東京のど真ん中にあるホテルにひとりでいる自分…!高校生当時の私にとっては人生最大級の出来事である。親戚一同皆にこの経験を吹聴しまくりたくなったものだ。

 翌日はいよいよ修学旅行最大のイベントであるディズニーランドへ。行く前に「ミッキーさんの毛をお土産にむしってくる」と豪語していた私。

 残念ながらミッキーさんには会えずじまいだったが、見るもの聞くもの全てが珍しく、夢の国を堪能したのを今でもはっきりと覚えている。

 修学旅行から帰った後は、東京へ行って来たというだけでものすごい自分が都会人になったような気がした(単純か!?)。

 あれから25年。その後東京へは何度も訪れた。ある時は飛行機、ある時は夜行バス。…もっとも夜行バスは一回きりで懲りたけど。

 今となってはだだっ広い羽田空港の動く歩道をずかずか歩いていようが、歌舞伎町脇の雑多な界隈をすり抜けて行こうが何とも思わない。

 高校生の時感激した新宿のビル街にあるカフェでひとりモーニングしても、高知の日常と変わらない感覚だ。これが大人になったということだろうか?あの瑞々しかった感性、今いずこ…。
 

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