見出し画像

お腹の中のお小さい方関連の備忘録 3

 これは第3弾であり、続きものの話である。もしよければ最初から目を通していただければありがたい。
お腹の中のお小さい方関連の備忘録 1
お腹の中のお小さい方関連の備忘録 2

1.荒ぶる身辺と迫り出す腹(~21週)


 出生前診断はスクリーニング陰性ということで一段落着いたのだが、この時、それを報告し、今後の動きについて話し合いをしようとしたことで実は旦那さんの実家でそこそこ大きな喧嘩が発生したりなどした
 この辺はちょっと思い出すのもしんどいし私もいい気分にはならないので省略するが、まあ、なんというか、兄弟仲が悪いと大変だなと思うし、私はどうしたって配偶者の味方にならなきゃならんのでどうしようもないし、巻き込まれたくなくても当事者にならなきゃいけないので、家族だから言わなくてもわかるだろうとかいうディスコミュニケーションによるトラブルは本当に勘弁してほしいなって感じだった。今は落ち着いたけど。

 落ち着いたところで戌の日のお参りにも行ってきた。以前厄除けをした神社と同じところだ。このあたりはあまり戌の日のお参りが盛んではないらしいが、やってもらえたので良かった。
 職場同僚にはスクリーニングの結果が陰性だとわかってから全面的に妊娠を報告した。みんな喜んでくれてこちらまで嬉しくなった。一部の人は私が一度流産したことを知っているので、良かったねえと何度も言ってくれた。

 なおこの時期、様々なマイナートラブルが私の心身の安定を見計らったかのように一気にやってきている。
 17週ごろから右側だけ手のむくみに悩まされていたが、21週になると完全に両手共にむくみと日中にも齎されるしびれに振り回されるようになってしまった。20週ごろからはこむら返りのようなもの起き始め、食後は動悸、ちょっと動けば息切れで非常に体も疲れやすくなってきている。あとついでに頻尿丸なのも地味にきつい。ちょっとくらいよかろうとインスタント麺を食えばダイレクトに血圧に出る。だんだん妊婦の体になってきているというのか、仕事にも支障が出てきているので妊婦バッジを申請した。

 ただ嬉しいこともある。18週の終わりごろから、なんだか突然腹の一部にかゆみが出ることが増えた。何だろうと思っていたが、そのうちにふと理解した。

 胎動である。

 もじょもじょもしゃもしゃと寝転がったり食後だったりした時、所かまわず動き出す中の人。ある日など寝ているときにちょっと寝返りを打ったところ、勝手に姿勢を変えるんじゃねえぞとばかりに激しく腹をもじょもじょして自己主張された。くすぐったい。
 21週の検診で腹の上部に走るくすぐったさの正体が足によるものだとわかったときはあれ蹴ってたんか!と衝撃だった。
 日を追うごとにもしゃもしゃ感が増していくので日々健やかにお過ごしなのだろう、いいことである。

 なんだか今になってやっと幸せな気持ちになってきたような、そんな気がしている。これからも毎日もぞもぞしてほしい。
 ちなみにとくせい:あついしぼうのせいで性別はまだわからない。次回に期待である。みんないつ頃性別が分かったんだろうか。


2.急転直下の長期入院(22週〜)


 それは普通に仕事をしていた日のことだった。一人欠員が出ているのに仕事がいつもより格段に忙しいそんな日、私は一息ついた瞬間に声をかけてトイレに行き、そして気付いた。 

 出血しとるやんけ。

 幸せを感じるとかそんなことを書くほど余裕のあったはずの私だが、こういうことは起こるときには起こるものだ。
 妊娠中期の出血がヤバいことはさすがの私も存じ上げている。努めて冷静に私は上司にその旨を告げ、大慌てでロッカーに駆け込むとかかりつけに電話をかけた。
 冷静には努めたが、まぁそれはそれは内心大パニックである。床にへたり込み、指もちょっと震えていた、と思う。

(このあたりからコピペミスで以前書いた内容が飛んでおり、若干うろ覚えとなっている)

 なぜかかりつけに電話したかというと、この病院は24時間助産師さんが常駐しているため、時間外でもいざというときは電話で相談ができるというありがたいシステムがあるのだ。
 で、そんな助産師さんも週数と症状を確認するやいなや、家に帰ることなくそのままなんとしてでも病院に来いとおっしゃる。いよいよ大事になってきた。
 旦那さん、義父、義母全員が仕事中という大ピンチの中、同僚たちがここから最も近いタクシー会社を教えてくれ、混乱の中呼ぶ。なお、その間に義父母と旦那さんにはなんとか話が通じ、仕事を早退して義母が付き添ってくれることとなった。ありがたい。

 病院につくとそこから車椅子。あれよあれよという間に診察室へ。迎えてくれたのは前回の妊婦健診で診てくれた若い女医先生であった。
 ところが診察の際、その先生ちょっと黙り込んだあと複数の先生を呼びにかかる。最終的にカーテンの向こうでは3人の先生が集まってエコーを見ていたようだ。ところどころ漏れ聞こえる異口同音の「危険ですね」という響きが若干の不安を煽る。
 最終的に画像見せられつつ受けた説明によれば、子宮頸管に出血による血溜まりができていて大部分がちゃんと閉じておらず、まともに機能している頸管の長さ(子宮頸管長)が11ミリであること、よっていつ生まれてもおかしくないということであった。あとポリープもあるらしい。

 というわけで即時入院を告げられた私、ここまでで全く気持ちが追いついていない。なんだか現実感がなく、ふわふわした気持ちのままでそれを聞いている。
 しかしそれが今にして思えば、いかに危険な状態だったかがよくわかる。胎児の生存率や入院目安日数(なんと夢の3桁!保険の営業も「最近はすぐ退院させたがるから若い人は60日でなんとかなりますよ!」と言っていたのに!)、治療に使う薬剤と緊急帝王切開のあれやこれや。
 読めと突きつけられたものの、膨大な資料の数々に目が滑る。
 時刻は21時、夕食も食べずにここまで来た私、次第に意識が朦朧としてきた。字は追えてサインはできても内容が理解できない。限界である。

 結果、看護師さんがバタバタと入院準備に走り、義母が各方面に連絡をするため席を外したとき、私は5分〜10分程度気絶していた、と思われる。
 車椅子に座ったまま耳鳴りと呼吸困難が起き、次第に意識も遠くなって声も出ずそのまま意識消失。次に気づいたときはギュッと握りしめていたはずのカバンが思ったより遠い所に落ち、中身が散らかっているのを発見したときだった。
 結構怖かった。看護師さんも戻ってきたときビビっていた。多分意識消失の現場を見られていたらコードブルー患者扱いされていたのではないか。人生でも気絶したのは三度目なのだが、やはり気分のいいものではない。

 なお夜間のため部屋が開けられず、しかもそれなりに緊急を要する扱いだったため、当日は陣痛室で一夜を過ごすことになった。
 そんな境遇であったにもかかわらず、私は夕食食べてないんですよと義母に遠慮がちに訴え、菓子パンを買ってきてもらいマイペースにムシャムシャやるなどしていた。
 今にして思えば本当に、心底、びっくりするほど緊張感がない。パニックになるよりはよいかもしれないが、その時はあまりにも何もわかっていなかったのだ。
 その後は入院に必要なものを明日以降持ってきてもらう感じで解散。お願いします、ありがとうございます、って感じ。いや本当に。義母も急なことで大変だっただろう。

 その後助産師さんが張り止めの点滴を入れにやって来る。有名なリトドリンと言うやつである。切迫早産の妊婦は基本的に退院までこれが入れられっぱなしになるので、人によっては何ヶ月もの付き合いになる天敵、いや点滴だ。
 血管が細く奥まったところにあることで定評のある私、当然ながらここで一つ躓く。
 ベテラン助産師さんがルートを取れないのである。一人がギブして呼ばれた応援も入れられず、刺し傷は4を超えてなお入らず。凄まじい気まずさが満ちる部屋の中で颯爽と現れたのは、あまりにもバタついてる病室の様子を見に来た女医先生だった。

 謝罪しまくる助産師さんの話を静かに聞き、ほわほわした雰囲気のまま苦笑いをした先生、「じゃあ私がやりましょうー」とのんびり宣言。助産師さんが非常に恐縮しまくる中、あっさりとルートを取り、ついでに採血しちゃいますかと手際よく作業していく姿、本当に輝いていた。医者すごい。      点滴に関してはいくらでも語ることがあるので、またこれは別のところで述べたいものである。
 で、そんなこんなでひと悶着を終え、無事私は就寝した。案の定、緊張感のきの字もない私は、これ以上無い疲労感の中で呆れるほどぐっすりと眠りについた。


 ここからすごく長くなりそうなので一旦切り良いところで区切る。


 切迫早産は過度に恐れることでもないが、全く知識がないのもまずい症状だ。
 個人的には、入院中の同室の職種などから察するに、初産婦の場合立ち仕事をしている人の発症率が高いように見受けられる。初産婦は張りというものもわからないし、仕事をしていれば自分の状態には無頓着になりがちなものだ。特に接客であれば仕事をセーブしていることで同僚から不満を持たれたり、お客様から余計なクレームを受けることもある。自由にトイレが行けない環境だって良くない。立ち仕事を助けてくれる骨盤ベルトも、ずれれば下腹部を締め付けることになり、逆効果だ。
 自分だけはならない、ということはない。この数ヶ月が中の人の人生の80年間を決めてしまうのだということ、それを覚えておいたほうがいい。
 ちなみに旦那さんは入院直前、私の腹が最近硬くなっているのでは?ちょっとおかしいのでは?という疑惑を抱いていたらしい。全く私は気づいていなかったので、それを聞いたときは正直驚いた。
 案外パートナーの声というのにも、きちんと耳を貸したほうがいいかもしれない。近くにいる人は意外と自分を見てくれていることもある。


→4に続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?