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産学連携をはじめるときに読むnote

こんにちは、Nekoaceです。

今回は産学連携(いわゆる企業とアカデミアの共同研究とかそういうやつ)を始めようと考えている読者の方々が立場ごとに気にすべき事柄について書いていきます。
Nekoaceはいつもブログの方で産学連携に関しても色々書いてきていますが、個人の経験によるものが大きいので、一旦世間様の状況と合わせてまとめておこうかなと思いました。
なので、Nekoace自身で書いた記事と市販の書籍と紹介しながらまとめていけたらと思います。


本記事作成に至った動機

NekoaceはいつもブログとかXの方で社会人大学院に進む方や主に新規事業界隈で苦しんでいる諸君に対して有益な発信を心掛けているのですが、その中で産学連携が結構個人の想いとして強いのです。

産学連携、つまり企業が大学とか研究機関と共同研究とかするやつのことをざっくり指しますが、これ自体は会社の方も大学の方も経験ある人結構いるのでないかと思います。では、産学連携から始めて実際にビジネスに繋がったりしたケースの経験ある方ってどれくらいいるのかしらね…?といつも思っています。

最近特になんですけど、会社の中で技術起点のイノベーションやろうぜ!って掛け声でオラオラ工数かけて研究しても実際革新的な研究成果ってなかなか出なかったりしますよね?

じゃあ、技術シーズは大学のやつ使って企業は開発から製造まで頑張っちゃうぞ!って掛け声でオラオラ工数かけて開発とか製造やっても、企業側の認識不足だったりシーズ持ってるところとコミュニケーション上手く取れなくて結局開発遅くなっちゃうとかもあるあるですよね…?

それか、これも最近増えてますけど、包括連携とかいって結構大きな額かけて会社の研究リソース大学に振り向けてオラオラ成果出そうとしてもそれはそれで思ったよりも成果出なくって結局偉い人の政争の道具になるのが関の山とか(以下略)

まあそういった諸々の事情があって、本来みんなが目指すであろう、
「企業と大学がそれぞれの強みを活かしながら手を取り合って技術開発して、革新的な製品を世の中に出して世の中良くしよう!ついでにお金いっぱい稼ごう!」
の図式ってほとんど見たことないレベルなわけですね…

じゃあ、なんでそうなっちゃってんの???
って時に、結局、お互いがお互いのことを良く分かってなかったりするのが大体原因だと思います。

Nekoaceは会社員生活の中でそのあたりそこそこノウハウあるつもりです。経験はこんな感じね ↓ 。

新卒入社した電機メーカーでアカデミアとの共同研究を主導したこと二回。
1回目)某国立大学と5年ほど共同研究。うち3年は社会人博士として研究推進と学生指導を担当。PIの指示から外れ研究計画立案から基本自分でやる。ついでに予算は会社から自分で取る。
2回目)某研究所と共同研究。会社として大型テーマ。欲しい技術の知見で国内トップのところを探し出して提案から研究実施まで。

上記経験から「産学連携に強い人」認定を受けたからか、部署の産学連携案件のアドバイザーに。包括連携契約(年間数千万円規模)と複数の共同研究案件のサポート。特に包括連携は博士時代の指導教員が推進されているのを隣で見てまして、横目で見ながらフムフムやってました。

ちなみに、理学修士、技術経営修士、工学博士です。(←希少種)

これまでもブログとかで何度か産学連携関連の記事を書いてきたのですが、どうしても散発的になっちゃうので、何とかまとめて
「ここを見れば自分が次に何すればいいか分かる!」
みたいな決定版的なやつを作りたかった、というのが本記事執筆の理由になります。

なので本記事では、これまでのブログ記事とか一般書とかを紹介しながら解説していく感じになりますので、お付き合いくださいね!


産学連携って、何?

ということを考えるにあたり、Nekoaceが参考にしている書籍の紹介から入りますね。

これ以前紹介したやつですが、
「搾取される研究者たち」
この本、一個人の経験談に近いんですが、それだけにめちゃくちゃリアルで納得感ある感じです。産学連携って結構人間関係的にウェットな感じになりがちなので参考になると思います。新書で安いのでお手に取ってみてください。


二つ目、「大学の常識は世間の非常識」
Nekoaceは主に企業の人なので大学の中の話はそれこそ交流あるアカデミアの方からお話しお聞きすることとかが大きかったりするので、大学内のこと勉強するために読みました。著者の方も元民間で銀行員やられてた方で、内容もなるほどの連続です。やはり産学いずれも経験あると俯瞰して語るやつに説得力が出てきます。
Nekoaceもこんな風になりたいなといつも思っています。


最後、三つ目ね。「中村修二物語」
これはもう産学連携というより青色LED事件にフォーカス当たってますが、現実こんなこともあったのよねということで先人から学びましょう。これだけ有名な事件なので界隈の話をすると必ず話題に上るのである意味「必読です。


そんな産学連携、要するに企業と大学の共同研究と思っていいと上で書きましたが、この辺りビズクリエイトさんがいい記事を出してるので引用しておきます。

企業と大学の共同研究
産学連携の形態として、企業と大学が共同研究を行う連携方法があります。
企業と大学が同じテーマを共同で研究し、新製品に利用できる技術や社会課題の解決などに活かします。この場合、研究費は企業側が負担することが一般的です。

大学の研究者などによる技術指導や学術指導
大学の研究者などによる企業向けの技術指導や学術指導も、産学連携における連携方法のひとつです。
大学の研究者が持つ技術やノウハウをもとに、企業に対して技術指導や学術指導、コンサルティングなどを行います。日本の多くの大学では、このような学術指導制度を設けており、企業は指導料を大学に支払います。

TLO(技術移転機関)による技術移転
産学連携における連携方法のひとつに、TLO(Technology Licensing Organization:技術移転機関)による技術移転も挙げられます。
TLOとは、大学の研究成果や技術などを権利化し、その権利を企業に提供する機関です。TLOを通じて企業は、研究成果や技術などを取り入れることができ、その際に得られる収益は大学に研究資金として還元されます。

大学発ベンチャーとの連携
大学発ベンチャーとの連携も、産学連携における連携方法のひとつといえるでしょう。大学発ベンチャーとは、大学の研究成果や技術を事業化するためのベンチャー企業です。株式会社野村総合研究所の「研究開発型ベンチャー企業と事業会社の連携加速及び大学発ベンチャーの実態等に関する調査」によると、大学発ベンチャーの数は、1990年度には55社でしたが、2020年度には2,901社にまで増えています。
大学発ベンチャーと一般企業が連携することで、大学の研究成果などを企業の新たな事業創出や課題解決に活用することができます。

産学連携とは?企業と大学の連携方法とメリットについて解説|お役立ち情報|Biz-Create(ビズクリエイト) (biz-create-service.jp)

ステークホルダー(関係する人たち)は企業側の担当者と大学側の研究を担当する教員、それと双方の法務とか契約関連仕切るところ(!)です。
契約ごとなので契約書交わしますし、特許も絡むので権利関係結構大変です。

産学連携の実態

権利とかの話が出てくると一気にめんどくさそうな雰囲気が出てきますが、ここで一つ有益なデータを。

経産省から出ているデータですが、産学連携の中でも共同研究の実施件数(棒グラフ:右軸)ってここ20年ほど右肩上がりなんですよね……

https://www.meti.go.jp/policy/economy/gijutsu_kakushin/tech_research/shiryou.pdf

この伸び方結構すごくないですか?おおよそ毎年+10%くらいで伸びています。

特に企業の方に対してですが、
共同研究の運営ってちょっと特殊なスキルだったりします。それでいて上記の通りに成長している、つまり産学連携って成長産業なんです。
皆さんの会社がどれだけ景気いいかは分かりませんが、成長産業で積む経験ほど今後のキャリアに有益なものもないのでは???と思います。

会社のためとか、社会のためとか、理由があってもいいですが、何よりご自分のために、良い経験になると思いますのでぜひ産学連携に前向きに取り組んでほしいなと思います。

ステークホルダーごとのメリ/デメ

産学連携のステークホルダというと、ざっくり企業とアカデミアなわけですが。
それぞれ個別にみると、担当者当人とその上司(もしくは組織)、それにアカデミアだと担当する学生さんとかも含まれます。
何事も双方Win-Winな形を作ることが成功の前提ですから、各ステークホルダのメリ/デメまとめときましょうかね。

下図です。

企業側として産学連携で得たいものは、技術の知見と、最終的にはそれによる収益化ですが、意外と重要なのが社員教育だったりします。事情は場合によりけりですが、Nekoaceの場合のように、社会人博士課程に進む社員の進学含めて研究会するケースも結構ありますし、会社の研究所で、所員の能力向上の観点は多分にありますね。
企業側のデメリットはまず研究費。そこそこの額を支払うと相応のアウトプットを求められます。それと大事なのが機密管理ですね。有名な研究室だと複数の会社と共同研究してたりしますし、競合複数社とやってるケースもあります。こういう時どうするかというと、PI(アカデミア責任者)だけ全貌は知りつつも研究間で情報のやりとりはせずに、担当者で分けてそれぞれ研究に当たらせたりします。会社側もその辺は理解しないといけません。

アカデミアからするメリットはまず研究費。それから社会貢献を目指している方にとっては企業で事業化するチャンスでもありますし、組織から求められていたりもしますのでその辺がメリット。
アカデミアのデメリットとして大きいのは守秘の観点から、共同で研究した内容を外部公開するときに企業と整合するのが大変だったりします。個人的には、共同研究する内容は最悪日の目を見ないと思って実施するのが吉かと思っております。

さらに、これを個人ベースに落とします。
企業の側は、担当者上司で分かれます。担当者にとっては、こうした場でマネジメント経験を積むことが出来るのが大きいと思います。特に若手社員の場合、Nekoaceも20代の頃に共同研究ハンドルさせてもらったのですが、若い時に複数のステークホルダ間をつないで仕事する経験ってすごく貴重でこの後にもすっごく活きた経験でした。上司にとっては、情報管理が大事ですかね。アカデミアのことも考えて外部発表できる領域と出来ない領域を分けておくことが大事と思います。

アカデミアは、担当者上司、それに学生が入ってきます。
ここでは特に学生さんに。
まず修士課程の学生さんにとって、共同研究案件は学ぶところが非常に大きいと思いますので積極的に参加することをお勧めします。技術系修士だとおまだに多くの方が技術系志望して就職されると思いますので、間近で社会人の働き方を見ることが出来るのは素晴らしく学びがあるやつだと思います。お仕事だけじゃなくぜひ積極的に雑談してマル秘情報まで聞きだしちゃうのがお勧めです。考えようによっちゃインターンのディープ版と考えると有益かもしれませんね。
では博士課程の学生さんにとってはどうでしょう?これも学びという意味では修士と同じなんですが、、、考えなければいけないのは対外発表のリスクです。企業の場合、共同研究案件で対外発表、つまり論文化や学会発表が難しいことがあります。企業の方が対外発表するときって、社内の承認プロセスが結構めんどくさかったりするので単純に時間がかかるんですね。なので、博士学生が共同研究案件参加してしまって、自分の博士論文に乗せたい成果とか入ってると卒業に支障が出る可能性があります。。。
と言いつつも、博士は特に企業で働けるだけの適応力があることを示すことも大事なので、卒業に支障が無いのであれば積極的に絡んで協力するのをお勧めします。そして、もしご自分が入社したい会社なのであれば、やはり多少の優遇もあり得ますので、頑張って絡みましょう!



ここからはそれぞれの立場ごとに産学連携始めるときの立ち居振る舞いについてつらつら書きます。

もしもあなたがPIなら

もしあなたがPI(アカデミア側の研究責任者)である場合重要なのは、いきなり大型研究を結ばないことです。研究締結に至るプロセスにはもちろんよるのですが、やはり、企業/研究機関がそれぞれ産学連携にどれほど慣れているか(また慣れた人がアサインされているか)は死ぬほど大事です。
アカデミアと企業だと目的達成の基準が違ったりするので(目に見えない基準というものもある)、無理やり案件進めると必ずどこかでひずみが出ます。始める間口は広くて良いですが始めるときは少額が良いかと思われます。会社と付き合いが長いのであれば話は違ってきますけれども。

次に大事なのでは、会社側の技術レベルがどの程度か。会社側の担当にその分野に詳しい人間がアサインされているか、会社全体で知見多い分野か。例えば、コンデンサの研究したいの事業はまだ始めいない(新規事業として取り組んでいる)とすると、アカデミア側がかなりレベルを下げて話をしなければいけません。一方ですでに事業開始しておりかなり詳しい人間がアサインされている場合もある。この辺りの技術レベルの判断は大事です。

上記内容を鑑みて、本気で手伝いたい内容であれば、だれをこのプロジェクトにアサインするか。本気になればなるほど、自分でやるか、博士学生をアサインしたくなりますね。本人のモチベーションも見ながら誰に任すか決めましょう。

もしもあなたが企業研究者なら

企業の特に担当者の場合、余力があるなら担当すべきと思います。しかし、いくつか注意点。このプロジェクトが社内で実用化される可能性です。会社の中には技術だけでなく政治にかかわるところ(○○役員の肝入り、みたいなやつ)で推進されているプロジェクトもあります。純粋に事業化目指せるならばぜひに、そうでないなら、うまいことかわすのが良いと思われます。社内政治に関しては別でたくさん書いていますのでよろしければ。

もう一つ。
技術守秘の範囲は明確にしておきましょう。「自社のノウハウを含む部分は発表不可」と書いているだけでは不明確。○○の技術を含む部分は一切公開不可とかまで事前に決めておく。産学連携の結果を社外発表するときには高い確率であなたの名前が載るでしょう。そして、名前の載った公開情報はあなた自身の成果に他なりません。転職、昇格いかなる時にも使える武器になります。これは絶対。

もしもあなたが学生なら

基本的には上で書いた通り、修士の学生なら積極的に参加する。博士学生なら、自分の卒業に支障が無ければ参加する。に尽きます。是非、社会人の方から多くを学んでご自分の今後のためになるように活動してください。

それと、チャンスがあれば会社訪問の機会を作ることをお勧めします。最近は皆さんインターンシップ参加されますが、1dayとかだと会社に興味がわいてきたところで時間切れ、なんてことも。会社は基本的には大学よりもお金があるので、先端的な機械もたくさんありますし、工場見学や実際に働いている風景を横で見るとご自分が就職してからのイメージもつくのでないかと思います。

産学連携に興味湧いてきた学生さんは、研究室を選択する際にそうしたラボを選ぶのもいいかも。例えば、研究室のメンバーリストに社会人博士が入っているとか、最近の論文いくつか調べて(GoogleScholarで適当に叩くと見れます)会社の人が著者に入っているか見ること、そして、研究室見学の時に、PIに質問すること。これはぜひぜひお勧めです。

最後に

さて、長々と書きましたがどうでしょうか。改めて冒頭見返してみると、
「ここを見れば自分が次に何すればいいか分かる!」
に対する回答が出来ていない気がしているのですが・・・そのあたりは今後適当な時期に追記していくと思います。
この記事はある種自分がやってきたことのまとめとして作っているので定期更新すると思います。またよろしくです。

最後に、その他NekoaceのSNSと自作しているカードゲーム宣伝です↓。
いずれでも主に若手学生/社会人に向けてキャリアとか資格について発信しているのでよろしくです!

X → @nekoace55

Blog → nekoace.hatenablog.com

自作カードゲーム → つくるば - BOOTH

それでは、また!

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