見出し画像

【4万字】「若手リーダー」のための社内起業の教科書

割引あり

訪問頂きありがとうございます。Nekoaceと申します。
 
普段はブログとnote、それとX(旧ツイッター)で主にキャリア論に関する情報発信してますが、今回思うところあって有料note、いわゆる情報商材に手を出してみました。ここに至った経緯について最初に書いておきますね。
 
最近流行りの情報商材、前々から興味はあってちょくちょくほかの方のやつ読んだりしてました。モノによっては中身が薄かったり過剰広告だったりしてまれに炎上してますが、それでも書籍などでは扱えないようなニッチ目の話題に対して貴重な情報源だったりするのでピンポイントで役立つこともあるよね、という印象です。
 
そのあたりに触発されて、これまで一つだけまともな有料noteを書いています。Nekoaceは以前、フルタイムで働きながら社会人博士とMOTを同時履修するということをしておりまして、おそらくこれやる人は同年代では日本中でほぼいないくらいには貴重なものと思われます。
 
06. 【有料記事】社会人ダブルスクール(博士&MOT)で使ったお得で過酷な制度について|nekoace (note.com)
 
この時の経験と実際に使用した母校独自の制度に関して公開したかったのですが、それまで学歴未公開にしていたので不特定多数に公開できないけれど、有料で読者限定すればまあいいかというところで公開したものです。こちらが意外と部数出ていまして、やはりニッチな話題は興味ある方もいるのだなあと実感した次第です。
 
 
それが、今回、書いた新作に繋がるのですが・・・

Nekoaceは現在、日系大企業二社目の技術系サラリーマンですが、経歴の多くを新規事業開発に捧げてきました。特に前職では、20代の頃から新規事業開発リーダーをやってました。日系大企業って平均年齢も高くて若手が事業提案みたいなゴツイお仕事するのって結構大変なんですが、ここを色々工夫してなんとか乗り切ってきました。

基本的には日々手探りでやってたのですが、何か先人の事例というか、教科書的なものがあればなあと当時思っていて、ここで自分のこれまでの経験を残しておくと有効に使って頂ける方もいるのではないかと思っています。
 
経験者は実感してると思いますが、社内起業は社内政治とセットです。ベテランの方はこれが肌で分かっているのですが、若手だとここが実感湧いていないと思います。
大企業は、ロジックだけでは動きません。正しい戦略を立てて、正しく事業運営すればいいと思っていたら、それだけでは社内起業は絶対に成功できません。
 
正しい戦略と正しい事業運営に加えて正しく政治で社内を動かしていくことが必須なのです。
 
本noteでは、
社内政治の解説→社内起業の解説→社内政治の攻略法→社内起業の攻略法
と論旨を展開しています。
中でも、Nekoaceの実体験のところが重要と思っているので、一般論含めた解説内容のほかに

引用部分には、Nekoaceの実体験を書くことにします。

このように色分けして、見やすく、分かり易くなるように心がけました。
 「一般論は教科書で勉強できるから大丈夫!NekoaceのN=1の体験談が知りたいよ!という方は引用部分だけ抜き出して読んでいただけると良いかもしれません。
 
 
ということで、Nekoaceの経歴と本noteの想定読者についてまとめておきましょう。

<Nekoaceの経歴>
・年次:社会人十何年目
・業種:製造業(電機→素材)
・職種:設計3年→新規事業研究職3年→新規事業研究職リーダー4年→転職→新記事業開発職から現在に至る
・学歴:修士(理学) → 新卒入社 → 博士(工学)* → 修士(技術経営)*  *はいずれも社会人
・事業化経験:新規事業担当として従事後、特定技術の社内コンサルチームを立ち上げ10を超えるプロジェクトに関わる。同時に事業開発リーダーとして事業推進、外部発表まで到達。現在は大手製造業二社目で大型新規事業の開発担当として奮闘中。
・転職後、副業としてブログ運営、カードゲーム企画販売など個人として活動し、一年目から売上計上

こんな感じでしょうか。Nekoaceはハードウエア系技術者なので、10年間頑張って色んなプロジェクトを手伝い続けて、何とか関わった事業の数で12-3件。そのうち外部発表までいったのが3件です。この3件もその後事業撤退したものもあるし、現在も続いているものもあります。

社会人大学院については、業務の一環で必要と感じ、社会人博士課程に進学して、その後さらに必要を感じて技術経営MOT(MBAに近い学位です)にも手を出して、本業に活かしていたという感じです。
 
ここで、注意しておきたいのは、世間で良くある新規事業で売上何十億円達成しました!みたいな華々しい成果を上げたわけではないということです。
むしろ色んなことを考えて実践して来たけど、まだ望む成功はできていない。そして成功を諦めきれずに現在進行形でもがき続けている人、と認識してほしい。
もし読者の中に、成功体験を聞きたいのであれば、このnoteは適さないかもしれません。この辺り、本当にこのnoteを購入すべきなのか、は、NekoaceのXとか見て各自判断してください。
 
ではNekoaceがなぜこれを書いているか。上で書いたように、自分が新規事業リーダーやってるときに先人の事例が欲しかった、というところがベースにあります。
 
社内起業に関しては、書籍とか含めて結構事例があるのですが、いつも思っているのが

若手に刺さる内容ではない! 

ということです。

社内政治に関していえば、例えば、「課長から始める社内政治の教科書」なんかは役には立ちますが、若手が使うにはちょっと早いかな。

あとは、ちょっと前にはやったビジネス書の「ダークサイドスキル」とかの方が役立つかもしれません。これはこれでいいのですがもう少し若手特化できると思いました。

他にはまさしく「社内政治力」という本もありますが、若手はちょっと戦い方が違います。

要するに、大企業の中で、20代から始める新規事業についての資料(体験談)が欲しいのです!
事業化というものに対する熱意に年齢は関係ありません。むしろ怖いものの無い若手の方がパワフルに物事を進めることが出来るかもしれない、いや出来る!というのが持論です。
 
若手リーダーが社内にも社外にも前例が見当たらない中で暗中模索で事業開発していくのは効率が悪すぎる・・・
この点に関しては、私の経験が活きるのではないかと思っているのです。
 
ということで、本稿の想定読者層をまとめておきます。

・20代、30代で、周囲よりもいち早く、事業提案して事業化経験を積みたい
・中途入社で入社し、社内人脈が無い状態から事業化したい
・今まさしく新規事業開発を実践中で、何か先行事例が欲しい
・Nekoaceがこれまでどんな風に働いてきたのか知りたい!

大体こんなところかと。主なフォーカスは若手リーダーの方。
また若手リーダーになりたいと思っている方。
そして、まさしく今社内政治で困っている方。
あとは、Nekoace本人に興味がある方。

などなどを想定しています。

この記事を公開する前に何名か事前にコメントを頂いています。いずれも企業内で新規事業推進している方です。以下紹介しますね。

一人目。食品メーカーで研究職として活躍されているとうやさん(@NzXyZQDOCMpLgz5)。社会人博士も取られています。

二人目。最近脱アカされてJTC入社されたKTYDさん(@KTYDRCB)。noterでもあります。

以下引用いただいたコメントです。


さて、本稿、総計4万字越えの大作になってしまいましたが、全5章構成中2章までは無料公開にしています。まずはそこまでご覧になってみてください。

ここで一旦目次を貼っておきましょう、こんな感じです。


こちら簡単にするために図示してみました。
社内政治と社内起業に対してそれぞれ解説編(~を理解する)と実践編(~の攻略法)とし、最後5章で若手リーダーの方に向けたメッセージとしています。
全体観を踏まえながら出来るだけ具体的にイメージがわくように実例多めで構成しています。

全体構成:目次の図解

それでは始めていきましょう。


第1章:社内政治を理解する

まずは第一章として社内政治について簡単に解説しておきます。

本稿の主題は社内起業であって、社内政治は直接関係ないよ!と思うかもしれませんが、若手リーダーが事業化で苦しむ要因の多数は社内政治を甘く見ているからだと思っています。まずはここを解説します。

1.1 なぜ、社内政治が必要なのか

それなりに想いをもって働き始めた方にとっては社内政治というものは大きな障害になり得ます。

日系大手企業では社内の平均年齢が例えば40歳、30代まではまだまだ若手の扱いですね。この場合、必ず上司が上にいるので、個人で決裁できる範囲は決して多くありません。
社内におけるリーダー的な職種、例えば課長/部長やプロダクトマネージャーに至るまでほぼ40台のベテラン社員が務めることが多いでしょう。これは、業務内容について専門性を考えて妥当である場合ももちろんあるのですが、新規事業に関しては必ずしもそうとも言えない。なぜなら新規事業は社内のベテラン社員もノウハウを持っていない場合が多く、むしろ若手社員の方がずっとノウハウを持っていたりもするからです。
しかし同時に若手社員には会社を動かすノウハウがない。これが社内政治。だから、むしろ若手にとっては社内政治の能力が大事なんです。

1.2 社内政治の定義

社内政治がなぜ生まれるのかについて考えてみます。
社内政治とは、読んで字のごとく、社内での派閥争い、俗にいう、CND(調整/根回し/相談)がそれに当たります。似たような背景の人間が数千人、数万人も集まる大きな会社では性格的な馬の合う/合わないは勿論ですが、出身大学、出身部署と言った要因によって派閥が生まれます。そしてその派閥内で強調して仕事し始めてしまいます。
社員数が少なかったり社外接点が多い場合、例えばコンサルタントに近い仕事だったり社員数が少なく個人の裁量が大きければこうした派閥的なものは生まれづらいです。
 
つまり、

社内政治 = 社内コミュニケーションが多すぎる状態で発生する

と定義してよいと思われます。
 
本来企業にとって社内でのコミュニケーションは少なければ少ないほど良いはずです。企業の本分としては社外とのコミュニケーション(販売だったり連携開発だったり)に力を注ぐ方が事業としては効率的なはず。しかし、日系企業では往々にして社内コミュニケーションの方が多くなってしまいます。これはなぜでしょうか。多くの企業の経験者に話を聞いていくと社内コミュニケーションの多い企業には傾向があるようです。
 

1.3 社内政治が強い会社/弱い会社

どのような時に社内コミュニケーションが多くなってくるのでしょうか。Nekoaceの観測範囲で良くある事例としていくつか並べてみます。

  • 業績が長く安定している会社

  • 平均年齢が高い会社

  • グローバル展開できていない会社

  • 技術的なすり合わせが強い業界

などなどが挙げられます。
以下それぞれ特徴を書いていきますね!

1.3.1 業績が長く安定している会社

大事なのは業績が良いことでも悪いことでもありません。
長く、安定している会社です!

いいですか。
長く、安定している会社です!

大事なことなので二回言いました。政治をするには、環境が変わると都合が悪いのです。いつまでも変わらない人間関係と事業環境があるからこそ政治が活きてくるのです。
大企業でも10年間売上高が変わらない会社だったり、同程度の規模を保ち続けている事業部の中はどろどろの社内政治が繰り広げられていることが予想されます・・・Nekoaceはメーカー民ですが、保険やインフラなどいわゆる安定企業と言われるところも似た傾向があるでしょう。

1.3.2 平均年齢が高い会社

社員の年齢が高いということはそれだけ政治が生まれやすい環境です。

そしてもっと大事なのは、前項の業績が安定していてかつ年齢が高いこと。この条件が揃うのはとてもよくない。
なぜか、それは、定年が近づいた社員は逃げ切りモードに入るからですね。
例えば任期が残り3年で切れる相手に、5年後の事業計画を訴えても響きません。長期の計画ほどベテラン社員には響きにくく、ましてリスクを取った決断がしづらいものなのです・・・

1.3.3 グローバル競争にさらされていない会社

”しがらみ”って言葉、日本特有なんですって。
海外にもなくは無いけど話題に上るほどでもない。グローバル展開なんぞは今時どの会社もやってるんですが、「当たり前のようにグローバルになってるか」が結構大事です。例えば取締役に外国人が入っている会社だと比較的グローバル感ありますね。そういうところだと自然に自浄作用が働いて政治が弱まる方向に行くはずです。(そもそも、グローバルで本気でビジネスしてたら政治やってる暇はないはず…)

1.3.4 すり合わせ技術が強い業界

メーカーにおいてはこれが非常に重要と思っています。

良く日本企業の強みに「すり合わせ技術」が挙がりますね。例えばAという技術とBという技術を単純に組み合わせるのでなく、それぞれチューニングしてA‘とB’にして最適化することで最終的な性能Cを最大化する一連の技術の呼称です。AとBを違う会社が手掛けていると、すり合わせて最適解を出していくのが結構大変です。でも同じ会社の中にそれぞれ持っていれば最適解を出す作業がしやすくなる。これが自社で様々な技術ストックを抱えている日本企業にとっては確かに強みとなり得ます。
いわゆる日系の総合電機メーカーなんかはまさしくこの総合力を推して大きくなっていきましたが、いつの頃からか、低利益構造になると同時にすたれていきました(コングロマリットディスカウント)。

すり合わせが強い業界だと、会話の相手が社内の人間に集中します。製品のキーパーツを自社で作るようになるとまさしくで、さほど性能が変わらない二つの方式、どちらを使うか、となれば社内政治が強い方で決定ですから。

1.4 社内政治が強い会社/弱い会社の図解

それでは社内政治の強弱を業界ごとに見てみましょう。ここまで書いた「業績が長く安定しているか」「平均年齢」「グローバル」「すり合わせ」の4つを元にまとめています。「すり合わせ」だけは純粋に技術の話なのでこれを独立して横軸、残りを均して横軸にしています。
*あくまでNekoace所感なのであまり突っ込まないでくださいね・・・それでもご意見あったら連絡ください。

業界別社内政治の強弱

ざっくり4象限に分かれているので解説していきましょう。
 
まずは最も社内政治が弱い左下の象限
なんとなく分かると思いますが、IT専業の会社は全般政治少ない印象です。要因は共通言語がプログラム言語ではっきりしているのでグローバル人材の獲得が容易だったりすること、平均年齢が若いことから妥当かと思います。エンジニアリング、いわゆるプラントエンジですが、製品サイズが大きい影響からプロダクトマネジメント(プロマネ)が非常に強いです。プロマネは本質的に無駄を省くので政治の余地が入りにくいと思っています。製薬と半導体は少し右側に寄せてます。いずれもグローバル競争にかなりさらされていて、政治でちんたらやってる暇はないはずです。むしと半導体なんかは政治で崩壊した先の姿が今かと思うので、少なくとも“今は“そんなに強くないはず。
 
次、左上の象限
ここはローカル気味ですが、そこまですり合わせが強くないところです。B2Cなかなか調子よいところ見当たりませんが、基本的に内製化は全般厳しい印象ですので政治云々はそこまでではないです。インフラは投資すると規模感が大きいのでGo/NoGoどちらかというか、あまり個別で意思決定する余地が少ない印象のためここ。
 
右下の象限
電子部品と、素材/電機の新規系。この辺り日本の会社もまだ強いところありますがその原因はすり合わせが強いから。なので、一見政治強めかなと思いつつ、グローバル競争の圧力が強くて、ある意味数字に誠実なので政治は出づらい印象です。上記書いてませんが、製品サイズが小さい(1製品売り上げ規模数億円とか)ので政治の影響が出づらい要因かもしれません。
 
最後右上の象限
ここが地獄の社内政治ゾーンですね。まずは自動車と自動車部品。この辺りはすり合わせで最も良く言われるところです。興味深いのは下請け構造がはっきりしていて、一社で技術囲い込みが無いのに政治が出るところ。自社で囲い込む代わりにケイレツ意識があるからですね。なかなかどぎつい世界です。

次は精密。カメラとかプリンターとか作ってる会社のあたりですね。これらは日系企業のシェアがとっても高いところで利益がきちんと出ているんですが同時に暗い未来も確約されているから外資が参入してこないという意味で業績が長く安定している点が大きい。またすり合わせも強いので間違いなく政治強い会社です。

素材と電機の中でも事業部門で新規ものやってるケース。分かり易くは石油化学とか家電もそうかも。あと製紙とかもかな。こういう技術的にも飽和しているところは政治で物事決まりやすいです。

最後、大事です。国策合併した会社。ここ最も大事なのはお上の号令で決まった合併だとたすき掛け人事になるところですね。会社のナンバー1と3がA社、ナンバー2と4がB社出身者で構成されると。これは政治が起きないはずがない。この辺は昔の書籍でいっぱい出てるので見ると面白いです。本質的には今も変わりません。さらにそもそも国策合併するところは日本で長く事業継続して来たからこそ合併/延命するわけですから、ただでさえ政治が生まれやすいところに合併するのでそれはもう凄いもんです。

さて、Nekoaceが経験しているところとしては、この図の中の右上の象限にいた時期が長いのですが、、、政治の深さは良く身に沁みました。詳しくは別途ブログの方に色々書いていますけれども、
役員の個人的な趣味から始まる見るからに競争力の無い事業提案を押し付けられる、
隣の部署に対抗して、似たような事業提案をより多量のリソースを投下して開始する、
そして、都合の悪いデータが消えて尖ったところがなくなりながら進む一大プロジェクト。

こうした経験のおかげで私はこのnoteを書けているので個人的には良いのですが。。。(ちなみに現職はこの点かなりまともなので今はハッピーですが。)

1.5 社内政治が強い会社での生きる道

さて、多かれ少なかれ存在する社内政治を乗り越えて、あなたは何をしたいのか。それとも何もしないのか???これが実は大きな問題です。

政治が強い会社ということはある意味で政治に長けていれば波風立てずに長期間働き続けることが可能です。長いものに巻かれることに抵抗が無いのであればその方が幸せかもしれませんし、表面上上手く泳ぎながらも水面下では独学に励んでいる猛者もいます。
 
そんな環境下であえて社内起業といった茨の道を歩むことがすべてではありません。社内といえど起業ですから大変な困難を伴います。個人的には通常の企業に加えて社内調整のタスクが降りかかるので、起業に輪をかけて難しいとすら思っています。そんな困難をあえて被るほどの思いを持っているのか?ここは良く自問した方がいいと思います。
 
良く感じますが、大企業で生きる道は極端な話「スキルか、ゴルフか」の二択です。
スキルを鍛えて、どの会社でも生き延びられる自分になる。もしくは上司のゴルフに積極的にご一緒して会社の中で有意なポジションを築く。自分の責任で好きな道を選びましょう。
その点、社内起業は自分で意思決定して市総合的に事業を作っていく、貴重な経験が出来ますのスキルを積むと考えればピカイチです。

Nekoaceは、博士取得する程度には研究も好きですが、会社員として働いて、研究員として研究して、プロジェクトリーダーとして市場分析とかプロマネする中で、どうしても自分が知見を持つ領域で事業化をしたかった。そのためには、周囲と比べて多少出世が遅くなっても構わない。というくらいの信念は持ちました。何かあなたにとっての「どうしても」がある方は社内起業、向いているかもしれません。

1.6 社内起業に必要な社内政治とは?

社内起業家には膨大なタスクが降りかかります。それはステークホルダが多岐にわたることを意味します。社内起業家は役員や同僚他部署の人間といった社内の人間と関係性を持たなければいけません。そして同時に顧客は勿論サプライヤーや競合調査、メディア対応も仕事の範疇です。
これだけの膨大な人間と関わりを持たなければいけない。社内起業とはそれだけ大変な仕事なのです。

本章の最後に、社内起業家が持つべきフォーカスの範囲を図示しておきます。以下の起業家的ステークホルダーとプロマネ的ステークホルダーいずれも考慮に入れなければいけないのが社内起業家。すべての仕事をまともに取り合っていたらとても完遂できません。これが社内起業が難しい理由の一つです。

起業家/プロマネ/社内起業家のステークホルダ(関わる方々の属性)の違い

このNoteではこの辺りの違いを踏まえて、どのフェイズでどこに力を入れてどこの力を抜くべきなのか、個人の経験を元に解説していくことを目標とします。

第2章:社内起業を理解する

前章では社内政治が生まれやすい組織について考えました。第2章では、社内政治を乗り越えて実現したい「社内起業」について考えてみます。

2.1 社内起業の心構え:揺らがぬ意思を持っているか

第一に必要なのは必ずここです。揺らがぬ意思「信念」を持っているか。何度でも書きますが、社内起業は通常の起業家としてのタスクに加え社内調整が加わります。そして、会社の中の理不尽な意思決定にも何度も遭遇するでしょう。その壁を乗り越えて成功をつかむには、何をしてでも成功させるという強い信念が必要です。そして、もし、会社でやる理由が見当たらないなら、個人で起業する、ないし、できる会社に転職してでも提案することも選択肢に入れるべきです。

常に重要なのはその事業を社会に届けることですから。

2.1.1 社内起業のメリット

社内起業は個人としては必ず成長できます。大企業で言われた仕事をこなしているだけではできない経験が社内起業ではできます。それは自分で決定して自分でプロジェクトを回すこと。企業内というある種守られた環境ではありますが、そこでの経験は学びの宝庫です。

こうした自分で提案して実現していくプロセス自体、自分の社会人としての人材価値を高めることに繋がります。Nekoaceが尊敬している経営者の一人である麻生要一さんがご著書の中で社内起業の経験を強く進めていますので、まだ読んでない方はぜひ一読ください。

Nekoaceの実体験としても、この事業化リーダーをやったこと、そしてその実践過程で大学に出入りしたりステークホルダー跨いで活動したところがかなり評価されて転職活動でうまく行ったりした話も書いているので参考にしてください。


2.1.2 社内起業のデメリット

では社内起業をすることでどんなデメリットがあるのでしょうか。

一つは、労多くして報酬は少ないかもしれない…点ですね。第1章で「スキルか、ゴルフか」と書きました。社内起業のスキルをいくら鍛えても、うまくいく保証などないものですからもしかしたらゴルフ派、積極的にゴマすりに行く方に出世競争で負けるかもしれません。これはデメリットです。
 
また、本気で社内起業を目指していると、自然と似たような経験をしている方が周りに集まってきて、その中にはとてつもなくすごい人がいたりします。その時には大きな絶望感に襲われるでしょう。やはり社内起業なんて大それたものをするにはこんな化け物じみた天才で無ければいけないのか、とも思うでしょう。それもいい経験ですが。
 
それとすごく単純な話ですが、単純にタスク過多で疲労します。これを乗り越えるにはやはり基礎体力と情熱、想いですね。

2.1.3 向いてるのはこういう人

社内起業に向いている人はどんな人でしょうか。

やはり、その会社の中でやるべきプロジェクトがあって、変化を恐れずチャレンジできる人かなあと思います。変化を恐れないというのは凄く重要で、毎日違うことを学んで実践し続けられる人がやはり強いです。

後の章でも書きますが、せっかく起業のリスクを背負うならば成功させたいはずです。そして企業内で行うメリットは企業の資産を使えること。ここを外すと、むしろほかの会社でやった方がいい、とか、自分で起業した方が良いとなりがちで。これだとあまりいい結果生みませんので、なぜ今の会社でそれが出来るのか/したいのかは繰り返し自問自答する必要があると思います。

また、良く起業は旅に似ていると言います。自分で事業開発していると毎日いろんなことが起こって都度対応が求められなかなか心が落ち着く暇がありません。だからこそ、トラブル続きの旅行(できればバックパッカーみたいなハード目の)に慣れてると、うまくいく確率が上がる、ということと思っていて、これは個人的にも納得感ありです。

2.1.4 自分の意思を保つために

強固な意志を持つためには、自分一人では難しいこともあります。そんな時は仲間に頼りましょう。会社の中にも想いをもって事業推進されている方は必ずいるはずですし、社外の異業種交流会でもいいです。

どんなスーパーマンでも人間である限り弱る時があるので、周囲に数人でも自分と志を同じくする方がいるだけで大分違います。だからこそ、忙しい中にも新しい方と出会うチャンスは大事にして人脈を広げることが大事です。

Nekoaceは、主に社会人大学院(MOT)で知り合ったスタートアップの方々や大企業で事業開発されている方から日々刺激を受けながら開発を進めていました。そこでの知り合いはとても貴重で卒業後の今もSNSでつながって定期的に動向把握したり連絡取ったりしています。こういう繋がりは本当に一生ものなのでこの辺もぜひ検討してみてください。

2.1.5 時には会社を変えることもあり

もし、自分のしたい事業が今の会社でやるべきでないかもしれない、という結論になった場合、おそらく、今のプランで事業提案するのは辞めた方がいいのでしょう。始める時点でぶれていると、後々必ず詰まります。事業を進めていく過程で加速要因よりは間違いなく減速要因の方が多いので、開始時点では致命的な問題が顕在化していないことが大前提です。

そして、そんなとき、どうしてもその事業がしたいのなら出来る会社に移ることも考えるべきです。

もし、今の会社に愛着があるのならなんとか今の会社でやり切れるプランに切り替えましょう。これが出来ないようでは後々成功はあり得ません。

2.2 社内起業のToDo一覧

それでは、そんなしんどい社内起業で日々クリアしていくべきToDoを洗い出してみましょう。とてもたくさんありますよ 笑

2.2.1技術系タスク

順を追って説明します。まずは研究。社内起業というとこれがイメージ湧くかもしれませんが、必要なければこのセグメントは考えなくても良いです。 そもそも研究と開発の違いがごっちゃになってる方多い印象ですが、研究というと本当に0→1、何もないところから技術成果を生み出すところにあります。いざビジネスを興そうという時にこの段階から進めていてはいつまでたっても製品が出来ませんので、プロジェクト推進する上での技術レベルは次に書く開発から、ということになる場合が多いです。どうしても研究が必要な場合には、社内起業の限られたリソースで行うのはほとんどの場合難しいと思われますので、共同研究など上手く大学や研究機関を使うことが望まれます。
 
次は開発。技術系で新規事業起こそうと思ったらここに割く工数が多いはずです。もしあなたが技術屋出身で本気で時間かけるなら開発。すでにある研究内容を実際に販売できるレベルに発展させてパッケージ化しなければいけません。研究というと大抵歩留まりとかしっかり考えていない場合多いので、一般ユーザーが使用したときにきちんと再現して仕様満足できるかきっちりチェックしなければいけません。ここは正直製品化の基準が業種にかなり寄るので、もし製品販売した経験少ないのであれば経験者にきちんとレビューしてもらうこと必須です。
 
開発した次には量産化、製造です。が、ここまで行ければ上出来です。開発成功の時点で会社として外部にプレスリリース出すでしょうし、そもそもここまで行くこと自体少ないので、もしプレスまで出したら会社が勝手に動いて環境整えてくれるはずです。あまり気にしないでいいでしょう。
 
もう一つ。研究/開発/製造とは毛色が変わってきますが知財も技術絡む大事なところです。作った製品の権利を守るための特許化必須です。Nekoaceの前職は特許意識結構高いところだったので自分で特許明細まで書く会社でしたが、正直ここまでやるべきかどうかは微妙です。やっぱり結構時間とられるんで、本当に自分の技術の根幹のところ基本特許は自分で目を通した方がいいですけれども後は知財部門お任せでいいかもしれません。それよりも重要なのは特許調査。従来型の特許調査は特許データベースから自分で特許の文言(請求項)知らべて一つ一つ見ていくこともありましたが、最近は包括的なリサーチ、例えばIPランドスケープとかが流行ってきてる感じです。これ使ってみると既存の知財情報がビジュアル化されて結構いい感じな印象あるんですが、しょせん特許情報って過去のモノには過ぎないので頼り切りも良くないよねと。ここも大事なのは、時間のかかる分析は専門の方に任せるのが良いです。この辺はまた3章以降で書きます。

2.2.2 非技術系タスク

ここからは非技術関係で時間をかけるタスクの一覧。
 
まずは人事。社内起業する人の腕の見せ所です。きっと社内起業を志すならばあなたは会社の中でそれなりにしっかり働いてきているはずです(人からの評価はいったん気にしないでいいです。大事なのは自分に自信を持っているか)。であれば自分で出来ることの限界も知っているでしょう。そうですね、一人でできることに限りがあります。スタートアップが事業立ち上げ時に2-3人でやるように社内起業もそれくらいの人数が良いと思います。そのためには自分が一緒に働きたいと思う人間を口説き落としましょう。同僚でもいいし、ベテランの方でもいいと思います。開発スタートできるだけの人員をなんとしても集めてください。人事施策に関するノウハウは後ろでまた書きますが、まずは初期メンバーを気合で集めます。もしまだ集まってないなら今すぐ探して飲み屋にGOです。
 
マーケティング。ここでいうマーケは市場調査の算定から事業規模の算定、ポジショニングの確立。いわゆるSTPMM(知らなかったらググって)。技術屋さんであれば馴染みないかもしれませんが、これは事業の競争力算定の一丁目一番地です。もう頑張って勉強してください。僕自身は教科書読むよりもいろんな会社のマーケ資料読みまくるスタイルで実地で勉強しました。
 
社内営業。社内にも営業が必要です。ここまで読まれた方なら分かると思います。つまり社内政治のことですね。役員さんにはこの事業のアピールを、部署長なら部署ミッションと重なっていることを理解してもらいます。直属の上司ならこの仕事の有意義さをそれぞれのプレゼン相手が得をするようなストーリーに仕立て上げて説得します。これはリーダーのあなたが絶対やらなきゃダメなやつ。
 
最後です。社外営業。顧客候補へのアプローチ、展示会等で潜在顧客へのアピール、サプライヤーとの折衝、やることは沢山あります。個人的には、こういう社外とのやり取りって貫禄?みたいなのが大事だと思ってる派なので、リーダーさんがやってもいいかもですけど、信頼置けるベテランさんいるなら任せてもいいと思っていますね。会社ごとに顧客訪問の時のルールとかもあるはずなので。

2.2.3 個人系タスク

技術系/非技術系それぞれタスク並べました。ここにもう一個追加しときます。

あなたのブランディングです。若手リーダーが事業化提案するって結構目立つやつです。おそらく社内の同僚からすると、尊敬してくれる人もいますけど、嫉妬の対象になることもあるはずです。評価がどうなるかは別として、円滑に目立っていくためには、あなたが他の人間と違うというところを見せなければいけません
 

Nekoaceがブランディング関係で心掛けていたことを、以下にいくつか並べてみます。実体験です。

1)情熱を表に表現すること。リーダーたるもの類まれなる情熱を周囲に見せなければいけません。私は何をしたくて、どうやって実現するのか。そのために今何をしてこれから何をしようとしているのか。フェイス2フェイスで人と会う機会があるならその場で、場合によっては定期発振のメーリングリストを作って檄文を流すのもいいかもしれません。とにかく想いを発信しなければ伝わりません。

2)誰よりも働いている姿を見せること。誰しも自分よりも時間をかけて働いている人に文句は言えません。圧倒的に働きましょう。意外と聞くのがあえて夜中にメールを出すこと。ハラスメントにならないように気を付けたうえで、アピールの材料にはなります。逆にアピールする必要がないほど分かりあっているならばここは必要ないですよ。

3)雲の上の管理職とのコネクション。これぜひ実践してほしいのですが、役員と仲のいい人とかには文句言いづらいんですよね。で、役員と仲良くなるにはどうすればいいかというと接点見つけてDMもしくは飛び込み営業です。役員になるような方と話をしていて思うのが、度胸のある若手を求めているということですね。アポ取って自分の事業プレゼン話し始めるようなやつって偉い人から見たら大事にしたいんですよ。他の人の手前、飛び込んだその場では怒られるかもしれませんが、後で個別にメール来て呼び出されたりします。そういうの大事。

こういうことを実践して、自分が他の社員と違うんだということを見せていく必要があります。

でも同時に必要なのが、その上で偉ぶらないことです。
自分を高く見せるけれども、素行はとても低姿勢。でもきっちり決めるところは決める。そんな人にならついてきてくれるんじゃないですかね
 

2.2.4 逆に不要なものは

社内起業は大変なことばかりなのかと言うともちろんそうではありません。社内起業家がする必要のない事柄も合わせて書いておきます。

まず、総務/経理といったコーポレート機能は既存のモノが使えますので不要です。これは大きいですね。

あと、技術立脚の事業提案であれば、特有の各種アセット、特に製造ラインを流用出来れば大きいです。既存事業で使っている製造/検査装置とそのオペレーターといった目に見える資源の他にも長年培ったノウハウや、営業部が持っている顧客リストとかも使えると強いです。逆にこの辺使えないなら企業の中でやる意味ないと思います。自分で起業するがよろしい。

2.3 自分の会社での社内起業のやり方を学ぶ

社内起業に関する全体観をここまで書きましたが、最後に自分の会社の例に落としましょう。やはり会社にはそれぞれ文化があります。トップダウンの会社、ボトムアップの会社、提案しやすい会社や、定期的なタイミングで提案募集している会社、また部署や上司の癖に至るまで会社によってバラバラです。

ここではそんな会社の癖を知るための方法について。

2.3.1 前例を知る。キーマン全員と知り合う

基本的なところは本noteにあるところのように共通していますが、結局はその会社での新規事業成功者に聞くのが一番です。社内でアンテナ貼っていると話を聞いてみたい方がきっと出てきますよね。そんな方は大抵想像を絶する苦労を超えて今の立場に立っています。なので、志を同じくする仲間が欲しいものです。

もしそうした方を見つけたら、なんとか接点を見つけて絡んでいきましょう。人づてに会いに行くとか、いきなりDM送って「会いたいです!」でもいいかもしれません。大抵答えてくれるはずです。

2.3.2 レポートラインを把握する。ティッピングポイントは?

会社にはレポートラインというものがあります。上申事項がどんなルートで上に到達するか。大体は係長→課長→部長、、、みたいな感じのはずですが、それぞれの決裁者がどんな方なのかは入念に把握しなければいけません

上で紹介した書籍「ダークサイドスキル」ではティッピングポイントと書かれています。その決裁者が何に魅力を感じるのか、どんなストーリー/提案なら通るのか。良く思考回路を把握してください。


さて、ここまで社内政治、社内起業について概略書いてきましたが、ここからより具体的な攻略法に入っていきます。議論の性質上、実体験を豊富に含む形での記述になっていきますので、ここから先は有料公開とさせて頂きます。

ただ、具体的にどんなことを書いているのか、ある程度イメージできた方が購入検討もしやすいと思います(気軽に手を出せる金額ではないと思います・・・)ので、3章、4章に関しては図解目次を用意しているのでそちらだけ貼っておきます。

第3章では、社内の組織構成の中から、どのポジションとどういう関係を築いていくべきなのか記述しています。結構ディープな話が多めです。

第4章では、前述のToDo一覧から例えば開発段階、例えばマーケの段階で何を考えどうふるまうべきなのか記述しています。

第3章、4章いずれにも、章末におまけとしてXで投稿してバズった実体験の連投ツイートを入れていますので、こちらもお楽しみいただければと思います。

最後、第5章ではこれらの内容を元に、なぜ、若手リーダーが社内起業を起こすべきなのかメッセージを込めています。

全体として4万字、命を削って書きました。

もしよろしれば購入いただき最後までご覧ください。

ここから先は

24,522字 / 4画像

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?