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グループホームの風景~ホーム大喜利#7~

TVでよさこいソーランを観ていて、いつも傾眠がちな入居者も食い入るように観ていました。

みなさんどうも!よしぱらです。
人は好きな趣味や集中出来る物事の一つや二つあるでしょう。
ホームでは入居者一人一人の好きなものは何か?
これまでの経験や過去の趣味など本人に訊いたり、ご家族に聞いたりしながら探ります。

そんな趣味から発展する今回の大喜利
それではどうぞ!

PS:この記事はよしぱらクラブで2023年6月にUPしたものを再編していますのであしからず😁

前回まではこちらから


~今の気分を吟じてみて~

昼食後の一時の様子
何やら大きな独り言が繰り返し聞こえてきます。


よしぱら

よしぱら:「Fさん今の気持ちを吟じてみて!!」


いつも愉快なFさん

Fさん:「腹がああ~減った~メシをぉぉ~食わせろ~」

よしぱら:「おおー素晴らしい!!まさにお腹が減っているのねー」

Fさん:「ごはんはいつじゃ?」

よしぱら:「今食べたばかりじゃー🎵!!」

Fさん:「そっかい…!?(ちょっと間を置いて)
腹がああ~減った~メシをぉぉ~食わせろ~」

このやり取りがエンドレスに続くのでした…😅

Fさんの趣味は詩吟です。
十八(おはこ)は【海南行(かいなんこう)】
ホームで行う祝いの席、レクリエーションのクールダウン時などご本人に頼んでは披露して頂いてます。
またFさんは歌好きで、懐メロ・童謡などをよく職員と歌っています。


最近は認知機能の低下により空腹の訴えが頻回になり気が付けばいつも
「腹減ったー!!」
が口癖になってしまいました。
そんなFさんに
「今の気持ちを吟じてみて!!」
と伝えると訴えが一時的に収まるので、最近のFさんに対する対応の一つとなっています。

解説

短期記憶低下が著しくなったFさん。
ホームに入所後、この数年入退院を繰り返しいつしか上記の言動が多く現れるようになりました。
認知症を患っている高齢者が入退院を繰り返し、生活環境や体調面が劇的に変化し悪くなると認知機能の低下が更に進行します。

ただ不思議なのは、直近の出来事はきれいさっぱり忘れますが、過去の鮮明な記憶は保持されているケースは多いです。
このケースも【認知症あるある】で何故か分かりませんが興味深い状況だと思います。

<ポイント>
短期記憶とは
比較的短い期間頭に保持される記憶。※1
短期記憶は感覚記憶※2よりは長い時間保存される記憶。
短期記憶の分かりやすい例として
勉強で教科書などを読んだりしてその場で人名を覚えたり、TV等を観て気になる店名や商品名などをその場で覚えることなどです。

※1:記憶には以下のプロセスがあります

①記銘:見たり聞いたり嗅いだりなど感覚器官より入力された情報を覚える機能
保持:記銘によって覚えたことを忘れずに維持し続ける機能
想起:保持した情報を思い出す機能

※2:視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚といった感覚器官ごとに存在する
【0.1~0.5秒程度】の非常に保持時間の短い記憶のこと。

対応

①その都度忘れている物事を教えたり伝える
②他の話題に変えて、繰り返し言動については聞き流す
③②に似ているが別な活動など勧めたり、一人になれる環境に連れ出したりしてクールダウンしてもらう

空腹に関しての訴えでもあるので、もし糖尿病や水分制限のある病気(透析など)でなければ、訴え時に少量のお茶やお菓子などを提供するのもありですが、Fさんは糖尿病のためこの対応は出来ません。
(Fさん残念です😓)

今回の様な認知症の周辺症状について様々な書籍や動画があります。
毎回私の【ホーム大喜利】の中では、様々な認知症から発する言動をありのままに書いております。
認知症のリアルを知りたい方へその手助けになれば幸いです。

おわりに

今回は趣味や特技を上手く用いて、短期記憶障害の空腹訴えが頻繁な方の対応についてでした。
【度忘れ】って誰しもあります。ただ認知症は記憶そのものが抜けてしまう病です。
更に糖尿病などの基礎疾患があると、前述の様な対応が難しいです。
高齢になると持病の一つや二つはありますので、病と上手く付き合いながら日々の生活を過ごします。
病気から日常生活の制限が多くなると、ストレスでこころが病んでしまい負のスパイラルに陥ります。

Fさんは自分の気持ちを詩吟風に吟じられます。認知症は考えて表現する作業が困難な病ですが、Fさんはそれを難なく出来る方です。これは残存能力の有効活用でもあります。
これからもご自身が感じる世界を吟じて貰いたいですね。

それにしてもFさんの満腹中枢はどうなっているのでしょうか?😰
職員間でFさんのことを
食のブラックホール】と呼んでいます。

おあとがよろしいようで…。


今回はここまで

最後まで読んで頂きありがとうございます
次の記事で会いましょう。






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