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『へそで、嗅ぐ』と、その諸々②

先日無事、『へそで、嗅ぐ』が終演いたしました。近大稀に見るパンデミックの中、劇場にお越しくださいました皆様には深く御礼申し上げます。また、このコロナ禍のなか、キャスト・スタッフ、劇場の皆様には最後まで前向きに寄り添っていただき、感謝してもしきれません。本当にありがとうございました。そして東京まで共に来てくれた家族にも、改めて感謝しています。

感染者が爆増し、周囲で演劇公演が次々と中止になる中、なんとか上演にこぎつけたのはラッキーとしか言いようがありません。何か一つ違っていたら中止でしたし、それらは全く、運によるものでした。


笹塚からアゴラへ


若い頃に東京に住みたいと思ったことがあって、いまだにその夢は叶ったことがないのですが、これまで森下スタジオなどで滞在制作をさせてもらったこともあり、その度に「やっぱり東京っていいなあ」と思うことが多かったので、今回も劇場と自分の宿泊するところをどうやって移動するか(できれば電車ではない方法で移動したい)と思っておりました。

やっぱり、新宿とか渋谷とかは疲れる。でも、下町、住宅街は東京でもすごく楽しい。電車に乗るとどうしても人の多さを感じざるを得ないのですが、そうでなければどこか地方に来たみたいでもあって。

いろんな事情が重なり、結局、劇場と宿泊所間を自転車で移動できたのは1回だけだったのですが、その1回の自転車がすごく楽しかったです。特にアゴラの周囲は東京大学と閑静な高級住宅街で人が本当にいないのです、なのでそこに立ち並んでいる高級住宅を観察しながら運転ができます(家を見るのが趣味)。そこを走りながら「いつかわたしもこうやってこんな場所を自転車でぶらぶらしたりしてみたい、違う、今、それしてる!」という謎の思考で運転していました。

1回だったのが悔やまれますが、徒歩でも2度移動しました。歩くのもとても楽しかったです。ただ暑い時期だったので、ちょっと辛かったのも正直なところ。やっぱり自転車が最適で、LUUPは本当に救世主でした。余談ですが京都に戻ってLUUPの様子を見てみたら、ほとんどが借りられていてぜんぜん空きがないんですね。市域が狭いので絶対数がまず少ないということもありますが、京都って電車が発達してないので、自転車が重要で、観光の方にとってはよくわからないバスに乗るよりずっとストレスフリーなんだと思います。

さて稽古場に泊まり込んで創作したい、と思う人が世の中にいるのはなんとなく知っています。毎日稽古場と眠る場所を最短距離で移動して・・・という、あれがわたしは実は、あまり得意ではありません。お金と時間にふんだんに余裕があるなら、例えばご飯は美味しいレストランのものを配達してもらったり、宿泊環境を良くしたり、あるいは滞在期間を長くしてお休みをしっかり取るなどができると思うのでアリかもしれないのですが、大体小劇場っていうのはお金がないものです。その中で劇場と宿泊所を限りなく近くしてロスを省こうという状況になると、ご飯も貧しくなるし布団も薄っぺらくなるし、つまり、生活の質を落とさないと実現し得ないことが、ちょっと、耐えがたいというか・・・。(その点森下スタジオは最高)

いや超貧乏に生まれ育っているのでそんなの平気だろうと思うのですが、実際耐えることができたからこの年まで小劇場でやってこれたというのもあるのですが、例え生活については百歩譲って貧しくなったとしても、稽古以外のことを考える時間がないのが、やっぱり今の年齢のわたしにはどうも無理なんだと思います。無数の無駄がないと、核心に辿り着けないという感触。特に演劇などというものは無数の人々が関わるので、感覚も人それぞれで。そんな色とりどりであるはずの人たちと一定期間密に集うと、そりゃもうそうでない時間も欲しくなる。

そういうわけで、笹塚から目黒の東京大学前に移動する、あの時間がわたしには至福の時間でした。

劇場付近の閑散とした通りもわたしは大好きでした。最後の日は、2歳と一緒に隣のパン屋さんで朝ごはんを食べました。

カドヤさん

駅の方の高級住宅街に近いパン屋は1つ500円もするのですが、こちらのパンは昭和金額で、1つ100円のものが多く、店内も昭和そのもので、とても居心地が良かったです。タクシーの運転手さんによると、線路を挟んで向こうとこっちとでは昔から景色がぜんぜん違うのだそうです。

500mlの牛乳を買うと言ってきかなかった2歳

今回の旅公演では、我が家族にも実はイレギュラーなことが多発して、ぜんぜんゆっくりはできなかったのですが、最後にカドヤさんに入ることができて、幸せでした。いやー気がついたらもう、日曜ではないですか!(8/28)。1週間前は東京で公演してたなんて、嘘みたいです!

こまばアゴラ劇場で演劇を上演させてもらうのは、実はこれで5回目だったのですが、これまでの中で一番自分の思うように作品を作れたということも相まって、これまでで一番、街を楽しめた回でした。

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