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原作未読で映画を観に行ったけど思いっきりドハマりした『映画大好きポンポさん』レビュー

映画を撮るか、死ぬか どっちかしかないんだ

観終わると、この惹句がまた染みますね......。

※今回の記事は本作の結末やネタバレにも踏み込むのでご注意くださいませ。

『映画大好きポンポさん』がすごく良かった

公開初日の6月4日(金)。
雨の日は超・外へ出たくない人間なのですが、この日は全国的に雨。
外出には生憎の天気だったのですが、大阪は緊急事態宣言で土日に映画館が開かないという事で2日間も我慢できないので、無理して『映画大好きポンポさん』を観に行きましたよ。

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映画大好きポンポさん
製作年:2021年 / 製作国:日本
監督:平尾隆之

いやぁー......観に行って正解でしたね。

すごく良かった!!

見惚れてしまいましたよ。
今年観た映画の中でも、かなり上に来るトキメキが詰まっていました。

公式サイトで公開されているあらすじはこんな感じ。

映画大好きポンポさんのSTORY
敏腕映画プロデューサー・ポンポさんのもとで製作アシスタントをしているジーン。映画に心を奪われた彼は、観た映画をすべて記憶している映画通だ。映画を撮ることにも憧れていたが、自分には無理だと卑屈になる毎日。だが、ポンポさんに15秒CMの制作を任され、映画づくりに没頭する楽しさを知るのだった。 ある日、ジーンはポンポさんから次に制作する映画『MEISTER』の脚本を渡される。伝説の俳優の復帰作にして、頭がしびれるほど興奮する内容。大ヒットを確信するが……なんと、監督に指名されたのはCMが評価されたジーンだった! ポンポさんの目利きにかなった新人女優をヒロインに迎え、波瀾万丈の撮影が始まろうとしていた。
引用:https://pompo-the-cinephile.com/#story

私は今でこそ、アート活動のようなことをあまりしていないのですが、かつては大学時代にデザイン学科に所属していたので、作中で物作りをしていく工程には、自分の中にもよみがえるものがあり、気持ちがいつも以上にこもってしまうものがありました。

はたから見たらとんでもない暗黒ぶりのクリエイターの“没頭”や“こだわり”のようなものを、これでもかと鮮やかで綺麗な世界で疑似体験させてくれています。クリエイター系映画でも、なかなかない領域にまで踏み込んでいる大傑作ですよこれは。

ただの天才を描いた映画にならないところ

本作の主人公は、初監督を任された青年・ジーンくんなんですが、絶妙なバランスだと思ったのが、ジーンくんが天才的な才能を持っているのを披露してハッピーエンドするだけの映画ではないところ。

うまくやらないと、ジーンくんが人並みはずれたセンスで、成功していくのを「どやっ」と見せるだけになりかねなかったバランスなのですが、しっかりジーンくんの周囲の人間のフォローあって成立していくという群像劇になっているところにグッと来ました。

中でも好きなキャラクターが、アランくん

ジーンくんの同級生で、いわゆる陰キャなジーンくんに対して、陽キャだったアランくんは、イケイケの学生時代の頃とは違い会社員となり、辛い日々を送っている.....というキャラクターです。

学生時代にジーンくんに対して引いていたアランくんが、監督として活躍するジーンくんの姿を見て、かつての認識を反省。ジーンくんに元気を貰ったアランくんが、今度はジーンくんのために、銀行マンとして融資に努めていくという展開は、熱いものがこみ上げてくるのを感じました。

流石に社内の会議の様子を全国配信するのはやばすぎるんですけど、ジーンくんがあれだけ狂うので、アランくんもあれぐらい狂わせた方がバランス取れてるかもですね。

こうして無事融資に成功して、映画は完成し大ヒットとなります。
この後に涙した瞬間がありまして、それがエンドロール。後日談エンドロールになっていて、その中で一緒に写真を撮るジーンくんとアランくんの姿が出てくるのですが、ここで「陰キャと陽キャの融和だ!」とブワッと涙が溢れてしまいました。同じ感じの同志が居たらコメント希望。

序盤のシーンで、ポンポさんがジーンくんを見出した理由を問われて、ジーンくんが学生時代を満たされてこなかったことをあげたりと、いわゆる陰キャと陽キャの線引きみたいなことがされるのですが、この映画ではしっかりそこの境界線で分けられた人々の共存に着地しているところに感動しました。

一方のサイド“だけ”の映画になっていないところが素敵です。

原作漫画との違い

そんなアランくんは映画オリジナルキャラクターだったと知って、「原作はどんな感じなんだろう」と、早速今回映画化されているという範囲の原作漫画1巻を購入しました。

読んでみてまたビックリですよ。

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画像引用:https://amzn.to/3vWKkkO

アランくんがオリジナルキャラクターなので、銀行のくだりは映画オリジナルだということは予想できたのですが、まさか映画におけるクライマックスである、“編集が長引いてしまい公開が危ぶまれるくだり”が丸々映画オリジナルだとは思わなかったので驚きでした

原作漫画はそのくだりは存在せず、スイスの撮影シーンで神がかったシーンの撮影に成功するシーンが山場となる構成になっています。

実はこのスイスのシーンでも、映画で付け加えたシーンがあります。それが演者やスタッフのアドバイスで映画を作り上げていくシーン。このアレンジからも映画は“チーム戦”としての味を狙って付け足していることがわかります。

漫画だとポンポさんやジーンくんといったキャラクターに対して「天才的な才能を持った人」という印象が強くて、すごく他人事な印象を受けたので、やはり今回の映画のアレンジって、そのあたりをもっと共感できるようにしてるのでしょう。

ポンポさんの予言も映画で感触を変えいく

共感といえば、ポンポさんの感触の違いも、原作を読んでみて強く感じました。

原作漫画では、ポンポさんが

この映画......間違いなくニャカデミー賞取っちゃうぜ

というセリフの直後に、すぐにニャカデミー賞受賞のラストへと移っていってしまいます。ポンポさんの先見の明みたいなとこが顕になるカッコいいシーンなのですが、映画では、このシーンは登場しながらも、そのあとに追加撮影が必要となり資金難に陥り、ポンポさん自身も苦しむ展開になります。

漫画でのポンポさんの天才的な印象こそ弱まっているのですが、おかげで人並みはずれた存在に思える漫画のポンポさんに比べると、映画のポンポさんの方が親近感が湧きます。

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画像引用:©︎杉谷庄吾【人間プラモ】映画大好きポンポさん1巻

漫画でこそ、予言となっていたこのセリフも、映画では“予感”みたいなものへと印象が変わって、“鼻につかない”ものになっているのも、見事なバランス感。

ポンポさんをより身近な人に感じられたからこそ、どこか「自分にも近づけるのかも」と思えるのですよ。映画のポンポさんを観ているから、今後挫けそうになった時に、ジーンくんやポンポさんを思い出して、自分の中の「でもやるんだよ」精神を燃え上がらせられそうです。

原作未読の人にこそオススメしたい

そんなわけで、結果論なのですが個人的には、『映画大好きポンポさん』は原作未読でいった方が実は楽しめるんじゃないでしょうか。

はっきりとココから後は映画オリジナル.....みたいな分け方ができる映画なので、原作を読んでいると映画を分割して観ることになりそうです。できれば変に分けずに観た方が面白いはずなので、原作漫画は予習じゃなくて、復習でおさえておくのがオススメです。

まずは映画。その後漫画。

この順番を、ネジムラ89からはオススメしておきます。
どっちが上とかでなくて、原作漫画は原作漫画限定で、映画好きは特に楽しめるギミックも盛り込まれているので、こちらもオススメですよ。

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